私たちは約30万円を支払い、43時間をかけて北米大陸を「アムトラック」で横断した。まるでタイムスリップしたかのような気分だった

43時間の列車旅の間、私は寝台車と共有の展望車で仕事をした。
- 感謝祭前の空港の混雑を避けるため、私は43時間かけてアムトラック(Amtrak:米国の長距離鉄道)に乗った。
- ロサンゼルス発シカゴ行きの列車、「サウスウェスト・チーフ(Southwest Chief)」号は美しい景色とコミュニティの雰囲気が魅力だった。
- 飛行機より費用も時間もかかるが、アムトラックの長距離旅行をもっと楽しみたい。
現代の疫病といえば、スクリーン中毒、反社会的行動、即時の満足感への欲求だろう。それらは常に、手の内のスーパーコンピューターによって駆動されている。アムトラック(Amtrak:米国の長距離鉄道)は、その良い解毒剤となるかもしれない。
ロサンゼルスからシカゴまで、アムトラックの「サウスウェスト・チーフ(Southwest Chief)」号で43時間、2265マイル(約3645キロ)を横断する旅の間、私は窓の外に広がる深紅のメサ(周囲を崖で囲まれたテーブル状の地形)と中西部の農地を眺めた。見知らぬ人々と食事を共にした。そして、夫とチェスをしていると、周囲の乗客がそれを眺め、やがて自分たちでゲームを始めたりもした。
電車で行くことにしたのは、2つの理由がある。1つ目は、感謝祭時期の空港の混乱を避けるためだ(飛行機が最も混雑する時期であり、政府閉鎖が継続する可能性もあった)。2つ目は、冒険をするためだ。
寝台車の広い部屋に2人で1963ドル(約30万円)を支払った。飛行機よりもずっと高く、時間もかかったが、アメリカ西部を横断する冒険という約束は、果たしてくれた。そして、この旅の後では、アムトラックが9月終了の会計年度で3450万人の利用客数を記録し、過去最高の乗客数と収益を達成したのも当然だと感じた。

アムトラックのファミリールームには、下段ベッド2台と、折りたたみ式の上段ベッド2台が備わっていた。

私たちは共有していたベッドを1つ引き出し、反対側のベンチは折りたたんだままにした。
飛行機での移動は、ますます非人間的でストレスの多い体験となり、単なる高級化した通勤バスに感じられることが多い。その一方で、アムトラックは少し時代に取り残されたような感覚があるが、それは良い意味であり、より遅く、より共同的で、より緩やかなのだ。
2人で泊まるのに十分な広さの、居心地の良い部屋
現地時間午後5時過ぎ、感謝祭前の月曜日にロサンゼルス・ユニオン駅を出発した。そこからサウスウェスト・チーフ号はアリゾナ州、ニューメキシコ州、コロラド州、カンザス州、ミズーリ州、アイオワ州の一部、そしてイリノイ州を巡る。沿線には歴史ある駅舎、ゴーストタウン、そして息をのむような美しい地形が広がっているのだろう。

ベッドとして使う前のベンチ。
私たちは、大人2人と子供2人まで宿泊できる「ファミリールーム」を予約した。客室は車両の幅いっぱいに広がり、ツインより少し広いベッドになるベンチが1つあった。向かい合わせのベンチもあり、子供用ベッドにもなる。さらに、天井から下ろせる折り畳み式の上段ベッドが2つあった。
部屋は2人で泊まるには広々としており、日中はそれぞれがゆったりとノートパソコンで作業ができた。部屋の両側には窓と折りたたみ式のテーブルがあり、そこで作業することができた。

展望車は全面が窓になっていた。
寝台車では、複数の共同トイレとシャワーを利用できた。トイレは清潔で手入れが行き届いており、飛行機のトイレより少し広かった。シャワー室は驚くほど広く、水圧もしっかりしていた。
寝台車の係員は毎朝、全員にコーヒーを淹れてくれた。また、毎日、朝と夕方に、ベッドメイキングやベッド収納を希望する際に記入する用紙を用意していた。
列車旅行において共有スペースは欠かせない要素だ
私たちのチケットには朝食、昼食、夕食が含まれていたため、食事の時間になると食堂車へ向かった。

アムトラックの伝統的な食堂車は相席形式を採用している。
アムトラックは、シェアダイニング(shared dining:相席形式)とも呼ばれる伝統的な食堂サービスを提供している。つまり、4人グループでない限り、見知らぬ人と隣り合わせになる。一般的に相席形式の食事は賛否両論あるトレンドだが、アムトラックを利用する魅力の重要な要素だった。

寝台車には、毎回の食堂車での食事が付いてきた。
最初の夕食では、毎年6週間の休暇を取り、カリフォルニアから2本の列車を乗り継いでフロリダのクルーズ旅行に行くというカップルと同席した。別の食事では、ニューヨーク州北部からラスベガスまで列車で向かう男性と同席した。彼は政府閉鎖によるフライトの遅延を心配し、また南西部を見てみたいと思ったそうだ。また、同席したある年配の女性は、鉄道会社に勤務していた父親の影響で、生涯を通じて列車を利用してきたと話していた。

景色を眺めながらの朝食とチョコレートケーキ。
食事も期待以上だった。ロサンゼルスやシカゴの高級レストランで出てくるようなものではなく、ステーキ、チキン、パスタなど、ごく普通の宴会料理だった。私はマカロニチーズ(子供用メニュー)とサーモン料理を注文したが、どちらも美味しかった。朝食のケサディーヤは本当に美味しかった。一番の驚きはチョコレートスプーンケーキで、これが絶品だった。
Wi-Fiはないが、携帯電話の電波は安定しており、多くの乗客が会話やゲームをしていた
食堂車の先には展望車があり、周囲の景色を一望できる窓が並ぶ共有スペースとなっていた。日中はここでテーブルに陣取り、ノートパソコンで作業した。流れていく景色から、無理やり目を離すことも多かった。

南西部の景色は素晴らしかった。
この列車を過去の遺物のように感じさせる驚くべき点は、Wi-Fiがないことだ。アムトラックは一部の列車や駅にWi-Fiを導入しているが、この列車にはなかった。そのため、私はスマートフォンのホットスポットに頼らざるを得なかった。
携帯電話の電波は概ね安定していた。時々途切れたり弱くなったりすることもあったが、それも数分で終わることがほとんどだった。ニューメキシコ州のどこかで一度だけ、インターネットが欲しかったが30分程使えなかったことがあった。

展望車でチェスとドリンクを楽しむ。
展望車もまた、おしゃべりやゲームに興じる人々でいっぱいだった。もちろん、スマホでコンテンツを見ている人もいたが、画面に釘付けになっている人は想像していたよりずっと少なかった。
夕食後の夜は、カフェ車両で飲み物(ウイスキーは9ドル)を買って、展望車でゲームをしながら過ごした。特に接戦だったチェスゲーム中、お互い知らない2人組が観戦を申し込んできて、やがてスマートフォンで対戦を始めた。

ゴールデンアワーの展望車。
景色と雰囲気を楽しむために列車に乗る
アムトラックには無法地帯のような雰囲気があり、まるでタイムスリップしたかのような感覚を味わえる。乗車時に身分証明書の確認は一切なかった。決まった手順はあるが、基本的には列車内を自由に歩き回れる。時間をつぶすためのものがたくさんある。
また、乗客が降りてタバコを吸える「新鮮な空気のための停車」や「喫煙休憩」も指定されている。車内放送でスタッフが頻繁に呼びかけるこの制度は、現代において喫煙者が積極的に配慮されている数少ない事例だ。

展望車で仕事中。
水曜日の現地時間午後4時20分頃、ようやくシカゴのユニオン駅に到着した。途中での遅延が重なり、予定より約1時間半遅れだった。だが、ほぼ2日間の列車旅の後では、90分の遅れなど何でもない。
最も安価でも最速でもない移動手段だ。大抵の場合、飛行機よりアムトラックを選ぶことはないだろう。しかし、すでにいくつかの路線をバケットリストに追加した。時間に余裕ができ、ゆっくりと目的地へ向かう過程を楽しむ余裕ができた時に利用するつもりだ。