未提出は重いペナルティ 「年収2000万円超、資産3億円以上」の富裕層が「確定申告書」と別に用意しなければならない〈2つの書類〉【税理士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)
「年収2000万円」は、サラリーマンにとって一つの分水嶺です。このラインを超えると、会社での年末調整が行われなくなり、すべての人が確定申告義務の対象となるからです。多忙なサラリーマンにとって確定申告は手間に感じるかもしれませんが、正しく申告すれば払いすぎた税金が還付されるチャンスでもあります。本記事では、西原憲一氏監修の書籍『いちからわかる!確定申告トクする書き方ガイド 令和8年3月16日締切分』(インプレス)より、高所得者ならではの申告ルールと、ペナルティを避けるための必須知識を解説します。
ダブルワークで20万円超稼いだら「確定申告」が必要
必要な書類リスト
□確定申告書
□すべての会社の給与所得の源泉徴収票
□控除を受けたいものがあればその支払いに係る証明書など
「年調未済」の源泉徴収票を持っていたら、忘れず申告を
近年は副業OKの会社が多くなり、ダブルワークをしている人が増えてきています。副業などによって2カ所以上の会社から給与をもらっている人は、確定申告が原則必要になります。これは、年末調整に必要な書類である「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」をメインの会社にしか提出することができず、サブの会社では年末調整を受けられないためです。
図表1の2つの源泉徴収票を見てみましょう。

[図表1]会社ごとの源泉徴収票の記載をチェック 出典:『いちからわかる!確定申告トクする書き方ガイド 令和8年3月16日締切分』(インプレス)より抜粋
「主たる給与」、つまりメインの勤務先の源泉徴収票では、給与所得控除や社会保険料控除などが反映されていますが、一方で、サブの「従たる給与」の勤務先の源泉徴収票では「年調未済」と記載されており、控除等を反映しないまま源泉徴収が行われています。
高い税額が課されている状況ですから、正しい納税額を申告するために、自分で確定申告を行う必要があるわけです。ただし、年末調整済みのメインの勤務先の給与を除いた所得の合計が年20万円以下であれば、確定申告は不要です。
例えば、サブの勤務先の給与収入14万円とアフィリエイト所得(雑所得)5万円で計年19万円の場合、確定申告は必要ありません。

[図表2]「主たる給与」と「従たる給与」の関係 出典:『いちからわかる!確定申告トクする書き方ガイド 令和8年3月16日締切分』(インプレス)より抜粋
確定申告書を記入する際は、複数ある源泉徴収票をすべて用意。ほとんどは、各項目の合計金額を転記するだけです。
ただし、第一表の「所得金額等」の「給与」欄(図表5の書き方手順3.)については自分で計算する必要があります(図表3参照)。また、「(25)基礎控除」欄についても、所得金額等」の「合計」欄をもとに自分で確認します。

[図表3]所得金額等の「給与」欄の計算方法 出典:『いちからわかる!確定申告トクする書き方ガイド 令和8年3月16日締切分』(インプレス)より抜粋
【記入例】ダブルワークで年収800万円・42歳会社員の場合
鈴木健一さん(42歳・会社員)
家族構成:妻(39歳・所得なし)、長女(9歳)、長男(5歳)
年収:800万円
(主たる勤務先600万円、従たる勤務先200万円)
源泉徴収税額:28万4700円
(主たる勤務先13万4300円、従たる勤務先15万400円)
給料から差し引かれた社会保険料:92万8150円
生命保険料の控除額:8万円
新生命保険料の控除額4万円〈保険料12万円〉、新個人年金保険料の控除額4万円〈保険料18万円〉
基礎控除額:63万円

[図表4]鈴木さんの確定申告書記入例(申告書 第二表) 出典:『いちからわかる!確定申告トクする書き方ガイド 令和8年3月16日締切分』(インプレス)より抜粋 [図表5]鈴木さんの確定申告書記入例(申告書 第一表) 出典:『いちからわかる!確定申告トクする書き方ガイド 令和8年3月16日締切分』(インプレス)より抜粋
年収2000万円超は年末調整されない…確定申告で還付を受けよう
必要な書類リスト
□確定申告書
□給与所得の源泉徴収票
□財産債務調書、財産債務調書合計表
年間の給与収入が2000万円を超えると、会社が年末調整を行うことができず、自分で確定申告を行う義務が生じます。申告を行うと、払い過ぎていた税金が還付されるケースがほとんどです。
図表6の源泉徴収票を見てみましょう。

[図表6]所得金額等の「給与」欄の計算方法 出典:『いちからわかる!確定申告トクする書き方ガイド 令和8年3月16日締切分』(インプレス)より抜粋
支払金額が2000万円を超えているため年末調整が行われておらず、「給与所得控除後の金額」欄と「所得控除の額の合計額」欄が空白になっています。このうち「給与所得控除後の金額」は、申告書に記入するために自分で計算する必要があります。
申告書を記入する際は、初めに源泉徴収票の「支払金額」欄の金額を第二表の「所得の内訳」内の「収入金額」欄(図表8の書き方手順1)に、「源泉徴収税額」欄の金額を「源泉徴収税額」欄(図表8の書き方手順2)に転記しましょう。
次に、給与所得控除額を計算します。年収850万円超の給与所得控除額は一律195万円なので、支払金額から差し引き、「所得金額等」の「給与」欄に記入します。
条件に当てはまる場合、さらに給与所得の一部が控除に
なお、令和2年分から「所得金額調整控除」という仕組みができました。2種類ありますが、現役世代に関係があるのは「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除」です。
条件に合致する場合、下の計算式のとおり給与所得から所得金額調整控除分も差し引き、その金額を記入しましょう(図表9申告書 第一表の書き方手順3)。
■所得金額調整控除の条件と計算式
その年の給与等の収入金額が850万円を超える給与所得者で、以下のいずれかに該当する人は控除の対象となります。
・本人が特別障害者
・年齢23歳未満の扶養親族がいる
・特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる
(給与収入-850万円)×10%=所得金額調整控除額
高収入ならではの「控除額の変化」に注意
基礎控除は2025年に改正しました。段階的に控除額が減るのは従来通りですが、所得金額の対象範囲が一部変更されています。よく確認して進めましょう。また、配偶者(特別)控除も所得1000万円を超えると適用されません。他にも高所得者は対象外の控除があるので注意しましょう。

[図表7]高収入だと控除の対象外になることも 出典:『いちからわかる!確定申告トクする書き方ガイド 令和8年3月16日締切分』(インプレス)より抜粋
3億円以上の資産を保有する場合には、「財産債務調書(合計表)」の提出が必要
次の1.と2.の両方に該当する場合。
1.その年分の退職所得を除く各種所得の金額の合計額が2000万円を超える人
2.その年の12月31日において、合計額が3億円以上の財産または1億円以上の国外転出特例財産(例:有価証券、未決済信用取引等及び未決済デリバティブ取引に係る権利)を保有する人
富裕層の適正な課税を確保するため、上記に該当する場合は確定申告書と別に「財産債務調書」と「合計表」を提出しなければなりません。提出しなかったり不備があると、過少申告加算税などのペナルティが課されます。
【記入例】年収2500万円・51歳会社員の場合
佐藤誠さん(51歳・会社員)
家族構成:妻(49歳・所得なし)、長男(19歳)、長女(16歳)
年収:2500万円
源泉徴収税額:541万961円
給料から差し引かれた社会保険料:181万4968円
生命保険料の控除額:8万円
新生命保険料の控除額4万円〈保険料18万円〉、新個人年金保険料の控除額4万円〈保険料12万円〉
基礎控除額:58万円

[図表8]佐藤さんの確定申告書記入例(申告書 第二表) 出典:『いちからわかる!確定申告トクする書き方ガイド 令和8年3月16日締切分』(インプレス)より抜粋 [図表9]佐藤さんの確定申告書記入例(申告書 第一表) 出典:『いちからわかる!確定申告トクする書き方ガイド 令和8年3月16日締切分』(インプレス)より抜粋
西原 憲一
西原会計事務所 代表
税理士
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