日経平均5万4000円台でも東京ディズニー株は低迷 それでも「売上高1兆円戦略」に綻びが見えない理由

Photo:Tomohiro Ohsumi/gettyimages

日経平均株価は初の5万4000円台を付けたというのに、東京ディズニーランド・シーを運営するオリエンタルランド(OLC)の株価が低迷しています。インバウンド関連銘柄であり、中国による日本渡航自粛の影響が指摘される一方で、OLCの実力が過小評価されていないか、経営戦略を分析します。(明治大学経営学部兼任講師 中島 恵)

ディズニーランドのOLC株投資で

初めての配当金!でも1株たった7円…

 2025年8月、オリエンタルランド(OLC)の株を100株購入しました。その後、12月に初めての配当金と株主優待チケット(東京ディズニーリゾート1日チケット)を手に入れ、株主になった実感を得ています。

 ところがこの1日チケットは、通常の株主優待チケットと違って使用期限が8月末までです。これだと夏休みで非常に混雑し、かつ猛暑が予想される時期を避けるためには、7月中旬までに行かなければいけません。

 初めて振り込まれた配当金は、1株あたり7円。100株保有なので700円で、約20%の税金を引かれます。源泉徴収の国税107円、地方税35円を引かれ、558円が振り込まれました。

 働いて貯めたおカネから約35万円を投じたのに、たった558円……「配当金でウハウハ生活」「個人投資家でFIRE」といったネット記事が多数ありますが、私のような株初心者には、遠すぎる話だと思い知りました。

中国が日本への渡航自粛を要請

インバウンド銘柄急落の大誤算

 約35万円で買った株が現在、約7万円の含み損を抱え、配当金はたった558円という現実。正直、誤算でした。購入時から約20%も株価が下がっています。

 OLC株が急落した理由の一つに、「訪日外国人(インバウンド)関連銘柄」だからとの指摘があります。昨年11月、高市首相の発言を巡って中国が自国民に日本への渡航自粛を促したことで、インバウンド銘柄の株価が下落しました。

 訪日外国人数は25年に4000万人を超える見通しで、その消費額は総額8兆円強(24年)と、インバウンド市場は大きく成長しています。これも、私がOLC株を買ったきっかけです。日本のテーマパークは世界的にも優秀な経営と、勤勉でホスピタリティあふれる従業員で知られます。

 しかしながら「好きな会社を応援するために株を買う」という投資は、実際にやってみると厳しいことがよく分かりました。株価は低迷、配当金はスズメの涙で、株主優待を使うにも色々と条件がある……。

 それでも、OLCの株価を見るに、過小評価されていると思うのです。今回はテーマパーク研究者として、OLCの経営戦略を徹底分析します。

次ページでは以下のポイントを解説します

・ディズニーパークで値上げし客単価1万8196円と過去最高

・財務で見るべき2つの数字

・売上高1兆円への野望をかなえるクルーズ事業への参入

・40歳上の中高年リピーターが増加でパークは高齢化

・ウォルトも驚くであろう富裕層向けシフト

「客単価を上げる」戦略にシフト

1万8196円と過去最高に

 コロナ禍で大打撃を受けたOLCは、客数を増やすことよりも「客単価を上げる」戦略にシフトしました。その成果は着実に出ています。

 まず、年間パスポートを廃止し、1日入場券を価格変動制にして値上げしました。さらに飲食、グッズ販売、有料ファストパス(ディズニープレミアアクセス:DPA)、ホテル宿泊などの全項目で客単価を上げることに成功しています。

 その結果、2025年4~9月期の売上高は前年同期比6.4%増の3161億円と、中間期として過去最高を記録しました。客単価は前年比5.2%増の1万8196円と、こちらも過去最高に。特に、DPAやホテル客室単価の上昇が大きく影響しています。

営業キャッシュフローを原資に

再投資サイクルが確立されている

 財務を見ると、25年3月期のROE(自己資本当期純利益率)は12.9%と高い水準です。日本ではROEは8%以上で推奨、8~10%で安定した収益力、10%以上は優良企業とみなされています。

 OLCはパークを運営して得た利益、つまり営業活動によるキャッシュフローを原資に、新規エリアやアトラクションを導入するなど再投資サイクルが確立されているので、短期的な景気変動には耐えられます。

 また、OLCの自己資本比率は67.9%(25年3月期)。業種によりますが、自己資本比率は一般的に20%未満が危険水域、30%以上が良好、50%以上が財務的に安定とされています。OLCは借入金が少なく、自己資本で追加投資をしているのも特徴です。

東京ディズニーシーの新エリア「ファンタジースプリングス」で映画「アナと雪の女王」のキャラクターのキャスト Photo:JIJI

オリエンタルランドが始めるディズニー・クルーズ船のイメージ(7月9日会見にて) Photo:SANKEI

2035年に1兆円を目指す

注目はクルーズ参入

 長期の経営戦略も確認しましょう。OLCは2035年度に売上高1兆円以上を掲げており、今後10年で3000億円以上、売上高を増やす戦略です。

 2000年代の売上高は3000億円台で推移し、14年3月期に4735億円、コロナ禍前の19年3月期に5256億円と初めて5000億円を超えました。この事実からも、コロナ禍に年パスを廃止し、チケット値上げと有料ファストパス導入で客単価を上げる施策に転じてから急速に売上高を増やしていることが分かるでしょう。

 1兆円戦略の内容は、テーマパーク事業、ホテル事業、新規参入するクルーズ(豪華客船)事業に分けられます。テーマパーク事業では、東京ディズニーランドとシーに継続的な追加投資を行い集客します。

 ホテル事業では、富裕層向けの高価格帯ホテルを拡充していきます。インバウンド需要の伸びや円安が続けば、もっと高付加価値な客室づくりは十分可能でしょう。世界的に見れば、日本のホテルはまだ高くありません。海外のラグジュアリーホテル市場では1泊50万~200万円の部屋こそ人気があるのです。

 そして何より目玉が、28年度就航予定のクルーズ事業です。米ウォルト・ディズニー社ではクルーズ事業に力を入れており、2031年までに13隻に拡充する計画です。船内はミッキーやミニーなど人気キャラクターが描かれ、グリーティングやステージショーが行われます。プールやレストランもいくつもあります。

ファンが40歳以上に中高年シフト

富裕層の増加も追い風

 日本発着のディズニークルーズが始まれば、日本の往年のディズニーファンがこぞって体験することでしょう。というのもパーク来園者の年代別比率を見ると、高齢化が進んでいることが分かります。40歳以上の中高年の比率が上昇し、18歳~38歳の比率が低下しているのです。

 東京ディズニーランドが開業したのは1983年。それから40年が過ぎ、“ディズニー世代”は中高年になりました。パークの人気を支えてきたのがリピーターです。パークと同様に、中高年はクルーズに乗って気に入ったらリピーターになると、筆者は予測しています。

 パークと違って各アトラクションに長時間並ぶ必要はありません。レストラン、マッサージ、ショー鑑賞など事前予約ができて、船内に宿泊できる。快適なレジャーの選択肢として普及すると予想します。

 もう一つ、日米をはじめ多くの国で富裕層が増加し、中間層が減少しています。ウォルト・ディズニーは生前、いかに「大衆(mass)」の人気を集めるかを考えていました。しかし、世界的な富裕層増加と中間層減少の傾向から、今のディズニーは大衆向けよりも富裕層向けのサービスを意識していると推察されます。

 もちろんOLCにも経営リスクがあります。ざっと、(1)人口減少によるレジャー需要の縮小(2)異常気象で猛暑かつ春と秋がなくなる二季化で入場者数が減る(3)建設コストや人件費など、さまざまな費用の上昇(4)USJなどライバルの台頭(5)主にネットコンテンツの台頭と拡充によるディズニーファンの分散や減少、が挙げられます。

 私は以上のように分析し、OLCは株価を見るに過小評価されていると考え、今のうちに買っておこうと思っているのです。買い増しプランについては、別記事『東京ディズニーの株は高市新首相の「ご祝儀相場」でもなぜ上がらないのか?株初心者の一喜一憂リポート』で詳しく書いています。

※本稿は特定の商品の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。