新幹線に復活する高級個室。そのネット接続を支える「特殊ガラス技術」をCES2026のAGCブースで見た

個室が導入される予定の東海道新幹線のN700S車両。

23年ぶりに復活することが話題の、東海道新幹線の「個室」。10月からお目見えする予定の個室キャビン内の窓には、ある特殊なガラスが採用されている。その実物を先週、海の向こう・ラスベガスで開催された「CES 2026」のAGCブースで見ることができた。

すでに各媒体で報じられているとおり、新幹線の個室は2003年に輸送量拡大などの状況を背景に、消滅していった経緯がある。

23年の間に、公共交通の役割も大きく変わった。訪日外国人旅行消費額は2024年に過去最高の約8.1兆円(観光庁発表)になるなど、観光立国としての日本の立ち位置は年々強まっている。

2026年の個室復活には、多様化する旅行者のニーズに答え、「グリーン車のさらに上級クラス」として個室を据える狙いがあると見られる。

新幹線の上級クラス席にあたる個室のCGイメージ。

今回個室の復活にあたっては、デッキの作業用スペースをキャビンに改装。報道によると、編成ごとに1人用・2人用の2室が用意される。東海道新幹線というドル箱事業において、新たな売上確保を模索する「新規の事業施策」ともいえる。

新幹線の個室は、プレミアム料金を支払う一定のビジネス客利用や、観光客利用が想定されるだけに、安定したインターネット接続も顧客サービスとして求められる。

新幹線では従来、安定的なインターネット接続が難しいという課題があった。スマホでもネットにつながらないことはないが、断続的に途切れてしまうのだ。

AGCが展示したこのガラスは、同社の持つガラス内部にアンテナの機能を持たせる技術を使って良好なインターネット接続を実現する。

具体的には、ガラス内部の左右4箇所にアンテナ構造を持たせ、配置を工夫し実証もしたうえで、5Gの良好なモバイル通信を確保しているという。利用客は、個室向けの専用Wi-Fiルーターに接続することで、良好なインターネット接続環境が利用できるようになる。

展示していたガラス。アンテナ構造は肉眼ではみえるものの、カメラでは判別しづらいほど微細なパターンになっていた。

上部のモニターの緑の部分がアンテナ位置。5Gアンテナの機能がある部分も含めて、従来の新幹線用のガラスとほぼ変わらない透過性を両立している。

アンテナが入っている位置は展示の上段にあるデモ映像のとおりだが、実物をみても一見してアンテナが入っているようには見えない。写真では映らないほど微細な模様のようなものガラス内部に見えるのだが、それがアンテナになっている。

AGCの説明員によると、5Gの電波を効率的に送受信できる配置を模索したところ、ガラス内部のこの位置の4箇所にアンテナ構造を設けるデザインが最適だったという。

技術的には自動車向けなどに使うラミネートガラスと同じ構造ではあるものの、東海道新幹線の要件に合わせて厚さが10mm近い分厚いガラスになっている。