日産は“どん底”から復活できるのか? 「売れる車がない」「93%減益」状況を打破へ! カギを握る新型EVとミニバンの正体とは
「どん底」日産が掲げる復活計画
2024年の日産自動車は、極めて厳しい状況に直面していた。2024年4~9月期の連結決算では、純利益が前年比93.5%減と大幅に悪化。主力の北米市場でも赤字に転落し、経営危機が表面化した。
【画像】「えぇぇぇ?」 これが日産自動車の「平均年収」です! 画像で見る(計10枚)
巻き返しを図るため、ホンダとの経営統合を模索したが交渉は決裂。依然として危機の渦中にある。こうしたなか、業績低迷の責任を取り内田誠CEOが辞任。後任としてイヴァン・エスピノーサ氏が最高経営責任者(CEO)に就任し、その動向が注目されている。
エスピノーサ氏の就任にあわせ、日産は3月26日に中期の商品・技術戦略を発表。今後の改革姿勢を明確にした。主なポイントは次のとおりだ(同社ウェブサイトより抜粋)。
・新型車とマイナーチェンジ車でセグメントのカバー範囲を拡大し、ラインアップを活性化
・e-POWERを含む次世代技術で商品競争力を向上
・市場毎にお客さまニーズに合わせた最適な市場戦略を導入
内田体制では、新車投入の停滞により、国内外で商品ラインアップが硬直化。販売現場からも「売れる車がない」との声が上がっていた。業績不振の背景には、インセンティブの増加による営業利益の圧迫や市場環境の変化などがあるが、根本的な要因は新型車の開発・投入の遅れにある。
エスピノーサ氏は、これまで商品企画部門を統括しており、現場を熟知する人物だ。CEO就任により、商品戦略を自らの手で主導できる立場となった。停滞が続いた日産の商品戦略が、彼の下でどこまで加速するか。再建への第一歩として、その手腕に期待がかかる。
新型リーフが8年ぶりに登場

新型日産リーフ(画像:日産自動車)
今回の新型車投入計画は2025~2026年度を対象とする短期的なものだが、注目すべき車種が数多く含まれている。なかでも国内市場における目玉は、日産が世界に先駆けて量産した電気自動車「リーフ」の3代目モデルだ。
リーフは、日本の自動車メーカーとして唯一、15年近くフル電気自動車(EV)モデルを継続してきた車種である。現行型は2017年に登場し、世界的にも一定の販売実績を上げている。ただし、発売から年数が経っており、航続距離や機能面で競合モデルに見劣りする部分も目立っていた。
3代目モデルは2025年度にまず米国とカナダで販売が始まる予定だ。日産にとって久々の明るい話題となる可能性が高い。
現時点で判明している情報として、最大の特徴は車体形状の変更だ。これまでのハッチバックからクロスオーバーSUV(スポーツタイプ多目的車)に転換し、世界的なSUV需要に応えるかたちとなる。動力ユニットには、モーターやインバーターなどを一体化した「3-in-1」パッケージを採用。走行性能と航続距離の両面で進化が見込まれる。
さらに、米テスラが主導する急速充電規格にも対応予定で、海外市場での利便性が大きく向上すると見られる。
2024年はBEV市場が一時的に減速し、ハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)へのシフトが進んだ年でもあった。しかし、環境性能に優れるバッテリー式電気自動車(BEV)の戦略的価値は依然として高い。
日産はリーフに加え、欧州市場向けに「マイクラEV」の投入も控えており、BEVラインナップの拡充を本格化させる構えだ。
小型車だけでなく大型車種もテコ入れへ

イヴァン・エスピノーサ氏(画像:日産自動車)
国内市場におけるもうひとつの注目車種が日本市場向け大型ミニバンだ。日産が公式に車名を明かしていないものの、実質的にはエルグランドの後継モデルとみて間違いないだろう。
エルグランドは日産の最上級ミニバンとして、高級志向の象徴的な存在だった。かつては国内の大型ミニバン市場をリードしていた車種である。しかし、現行モデルは2010(平成22)年に発売されたもので、基本設計があまりにも古い。すでにモデル末期を大きく超えており、トヨタのアルファードやヴェルファイアに販売面で大差をつけられている。
トヨタは2023年に両モデルをフルモデルチェンジし、販売は好調だ。それに対し、エルグランドは長らく改良がなく、競争力を失っていた。
大型ミニバンは、小型車や中型車からの乗り換え先として重要なポジションにある。しかし、古さが目立つエルグランドには買い替えが進まず、日産車のユーザーでさえ他社へ流れるケースが続出していた。そうしたなか、新型エルグランドは日産ファン待望の一台といえる。
現時点で詳細情報は限られているが、発表内容からは日産独自のハイブリッドシステム「e-POWER」を搭載する見込みである。加速性能、静粛性、燃費性能のいずれにおいても、他社にはない個性を打ち出す可能性がある。
さらに、e-POWERは今回の発表で第3世代への進化が示された。従来型の課題を改善し、より高効率で滑らかな走行が期待できる。
日産にはスカイラインやGT-Rなど、看板モデルでありながら長らくモデルチェンジされていない車種がいくつも残されている。クルマ好きとして知られるエスピノーサCEOは、説明会の中で
「スポーツカーを復活させる」
と明言しており、今後の再開発にも期待がかかる。
海外市場で苦戦するe-powerは弱点の克服へ

米国日産の新型ラインアップ。ティーザーイメージ(画像:日産自動車)
日産独自のハイブリッドシステム「e-POWER」は、これまで国内向けに幅広く展開されてきた。一方で、米国市場には投入されてこなかった。
その理由は、e-POWERが中低速主体の日本市場では高い燃費性能を発揮する一方で、高速巡航が多い欧州や米国では効率が悪く、競争力を欠いていたためだ。e-POWERはモーターで走行し、エンジンで発電する方式を採用している。出足の加速力や静粛性は強みだったが、高速域での燃費が伸びず、特に北米では他社HVに対して分が悪かった。
こうした背景から、日産は世界最大の自動車市場である米国においてHVの販売が振るわず、業績低迷の要因のひとつとなっていた。
しかし、次期型の第3世代e-POWERでは、こうした課題の多くが改善される見通しだ。新型システムは高速走行時の燃費を最大15%向上させると発表されている。これにより、欧州や米国への展開が現実的になった。
また、BEVとの部品共用によってコストダウンも図られる。HVとしての実用性と収益性の両立を目指す。第3世代e-POWERは2025年度後半に欧州向け「キャシュカイ」へ、2026年度には北米向け「ローグ」、そして日本向け大型ミニバンにも搭載予定である。
商品競争力の強化は、日産復活のカギを握る。現在、エスピノーサCEOのもとで役員や人員の削減も進行中だが、それ以上に売れる車の投入が求められている。
ゴーン体制以降、迷走が続いた日産だが、水面下で進めてきた車両開発がようやく形になり始めた。この2年が、日産にとって再生の正念場となる。