高市総理は物価高にあえぐ国民を「切り捨てた」のか…選挙の争点である食品消費税への姿勢に現れた本性

内閣の高支持率を背景に解散に踏み切った高市総理。自民党にまでその勢いをもたらすことができるのだろうか
「自民大勝」の予想が揺らぎ始めている?
2月8日投開票の総選挙の幕開けとなった。これほどまでに事前予測が立たない選挙は初ではなかろうか。予測が難しい選挙戦であるが、ひとつ言えそうなのは、「自民大勝」が揺らぎ始めたことだ。
『朝日新聞』が1月17日から18日に実施した「解散・総選挙」に関する全国世論調査(電話)では「賛成36%」に対し「反対50%」と上回った。連日テレビでも豪雪地帯で雪に埋もれたポスター掲示板や雪かきに励む自治体スタッフの姿が流され、受験シーズンと重なったこともあり、「なぜいま選挙なのか」と懐疑的に見ている声が紹介されている。
高市早苗総理(64)が頼りにしたのは高い内閣支持率だろう。3ヵ月前の組閣から現在まで、内閣支持率は60〜70%の異例の高水準を維持。昨年末や今年1月に自民党が取ったとされる世論調査で「260議席で大勝」との選挙結果が出たとまことしやかに流れていた。
「高市早苗が内閣総理大臣でよいのかどうか。今、主権者たる国民の皆様に決めていただく。それしかない。そのように考えたからでございます」(1月19日、官邸会見)
国会議員が内閣総理大臣を選ぶ議員内閣制にもかかわらず、「私か私以外か」と国民が選択できない選択肢を提示。ぶち上げたわりに勝敗ラインは「自民単独で過半数」ではなく、連立を組む日本維新の会とで「与党で過半数」と低め。それでも、1月26日、日本記者クラブ主催の討論会で「自民と維新で過半数を取れなかったら、即刻退陣することになりますので」と見栄を切った。
「もともと’26年度予算の成立を口にしながらそれを棚ざらしにし、『いまなら大勝できそうだ』で解散を決行。物価高にあえぐ国民生活を考えれば選挙後の特別国会でいち早く予算成立を目指すべきだが、敗れたら自民党は総裁選をまた行うということか。高市の高市による高市の衆院選ではない」(全国紙政治部記者)
想定外の解散であったが、選挙直前に新党・中道改革連合(以下、中道)が結党。立憲民主党と公明党の衆議院議員が離党し、新党へ。中道は「生活者ファースト」とし、公約の目玉として、政府系ファンドの運用益で食料品を対象とした消費税率ゼロを恒久的に行うと打ち出した。
「消費税はこの選挙のメインの焦点となる。消費税の減税を語る上で財源をセットに言えるかどうか。赤字国債のような借金でもなく増税でもなく、財源を明示しての消費減税を打ち出しているのは中道だけ。
一方の自民党は『食料品を対象とした2年間限定の消費税率ゼロ』を打ち出しているが、選挙前まで『レジが』と民間のレジシステムを口実にしていた。野党が減税を掲げると、公約で『検討を加速する』と霞が関・永田町構文であいまいに。その後、『年度内を目指す』と踏み込むも、実行する、と言い切れない」(ジャーナリストの鈴木哲夫氏)
公約を主導した政調会長を直撃
ただ、中道の公約実現に疑問符も付いている。ファンドの運用益で長期的にわたって減収分の5兆円を穴埋めできるのか。農林中央金庫が’24年度決算で運用に失敗し、1兆8078億円の大幅な赤字となったことは記憶に新しい。シティバンクやゴールドマン・サックス証券で勤務経験があり、同公約を主導した岡本三成共同政調会長(60)を直撃した。
ーーファンドの運用益で長期にわたって減収分の5兆円を穴埋めできますか?
「もともとの問題意識として、インフレの時代に何もせずに円だけで持っていると目減りしていくだけです。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のノウハウを活用することで安定的なリターンを生み出せます。
GPIFはリスク分散をものすごくしているのでどこかが下がっても他でカバーができる。GPIFを始める25年前も批判がありましたが、経済が発展していくので今日のように資産を増やす結果となっています。この100年は戦争も大震災もパンデミックも起こりましたが、戦争さえも飲み込んで経済は大きくなっていった」
ーー短期的な損失は出るかもしれない?
「GPIFは売り買いもほどんとしていないので配当がずっと入り続け、一時的に時価評価が下がってもキャッシュフローが支えとなっています。儲けてやろう、という気持ちがあるのではなく、インフレ下で何もしないはもったいない」
ーー5兆円の運用益を出すにはいくら必要ですか
「GPIFの25年間の平均利回りは4.2%くらいなんですね。仮に200兆円のファンドができれば8〜9兆円は運用利回りとなる。そのうち2%くらいは配当金でくるので、やはり分母をどうやっていくかという議論が必要です。
政治家が選挙戦でそんなことを決めるのではなく、こういう新しい財源を作りたいので、専門家も入れて議論をしていく。赤字国債や増税だけでない財政改革の議論をさせてください、というのを選挙で問うています。よしやれよ、と皆さんから背中を押していただきたい。
政策の違いを見つけて言い争うのではなく、重なるところを見つけて合意形成していくのが中道の政治です」
寒風が吹くなか、岡本氏は本誌記者に身振り手振りを交えて丁寧にわかりやすく語った。赤字国債や増税に頼らない新たな財源としてファンドは有効なものではないか。
時事通信社解説委員の山田惠資氏はこう指摘する。
「中道は22日に結党大会を開いたばかりで党名や党の理念が無党派層にまで浸透していない。解散から投票まで16日間の短期間で公約も浸透し切れるのか」
高市氏は安倍晋三元総理が何度も最終演説の地としたJR秋葉原駅前で第一声をあげた。緑のジャンバーを着た維新の会の両トップを伴うも、与党が掲げた食料品を対象する2年間限定の消費税率ゼロには触れなかった。濃紺のスーツ姿の高市氏が「過半数を取れなかったら首相を辞める」と演説をすると、支持者と反対派が声をあげた。有権者のジャッジはどう出るのだろうか。

雪で埋もれてしまった選挙ポスターの掲示板。どうやってポスターを貼るのだろうか(田名部匡代事務所提供)

高市氏のJR秋葉原駅前の街頭演説に訪れた選挙に反対する市民

東京8区で出馬した吉田はるみ氏の応援に駆けつけた岡本三成政調会長。ゴールドマンサックス執行役員でもあった
取材・文:岩崎 大輔