年間4万本を売る年も! フジの名物商品「おばあちゃん巻き」が20年間支持される理由
中四国を地盤に食品スーパーなどを展開するフジ(広島県)のロングセラー商品「十品目のおばあちゃん巻き」。同商品がくふうカンパニー(東京都)主催の投票企画「全国スーパーマーケットおいしいもの総選挙2025」で、最高グランプリを受賞した。新商品やインパクトの強い見た目のライバル商品をおさえ、発売から約20年が経過した太巻きがグランプリを獲得した理由とは――。

年間4万本を売る年も!フジの名物商品「おばあちゃん巻き」が20年間支持される理由
発売から20年間商品改良を続ける
「フジ」「フジグラン」「マックスバリュ」「マルナカ」で販売されている「十品目のおばあちゃん巻き」(税別685円:以下、おばあちゃん巻き)。旧フジが開発し、長年人気を誇ってきた商品である。
自社製の玉子焼き、かんぴょう、椎茸、ごぼう、人参、ほうれん草、かまぼこなど十品目の具材を海苔とご飯で巻いた、いわゆる太巻き寿司だ。玉子焼きにはあごだしを効かせた甘い味わいに仕立て、ふっくらと焼き上げる。そのほかの具材も一つひとつ別鍋で炊き上げ、素材ごとに味つけを行う。
コンセプトは、「昔懐かしい故郷の味」。フジの1号店がある愛媛県宇和島の「おばあちゃんが用意してくれている太巻き」の味わいをイメージした。

フジデリカ商品部マネージャーの濱田牧氏
デリカ商品部マネージャーの濱田牧氏は「昔懐かしく、なおかつ子どもから高齢者まで、誰が食べてもおいしい味をめざしている。そのため、かまぼこを除き、肉類や魚介類などの具材はあえて使っていない。クセの強い具材を避け、食べ飽きない味わいになるようにしている」と話す。
「誰が食べてもおいしい味」を実現するために、デリカ商品部では同商品の改良を積み重ねてきた。発売当初の具材は7品目だったが、満足感、彩り、食感のバランスを精査し、その中で最も完成度が高いと判断したのが10品目だった。「10品目にすることで、一口ごとに味わいに変化が出るという結論になった」(濱田氏)。
その後も毎年のように細かな改良を続けている。その年の原料事情やお客の嗜好を踏まえ、玉子焼きの味わいやだしの効かせ方、各具材の味わいのバランスなどを見直す。
たとえば、2025年の具材は価格が高騰したごぼうの使う部位や切り方を変え、味付けには八丁味噌を隠し味として加え、根菜の香りとコクを引き出した。
こうしたマイナーチェンジは、コンセプトである「昔懐かしい故郷の味」を崩さない範囲で行われる。大きく味を変えるのではなく、環境の変化に合わせて最適なバランスを探り続けることで、「変わらない味」を維持しているのだ。
節分では数ある太巻きのなかで売上1位に
製造工程においても工夫を凝らす。とくに力を入れているのは味の決め手となる玉子焼きだ。濱田氏は「もともとは手作業で焼いていたが、現在は自社プロセスセンターで一部自動化している。ただし、焼き加減のチェックや火から上げるタイミングなど、仕上がりの決め手になる工程は、今も人の目と手を介在させている」と説明する。さらに、かんぴょうや椎茸、ごぼうなどの具材も自社プロセスセンターで、別炊きで仕上げている。
一方で、巻き上げの工程はすべて店舗で手作業で行う。10品目の具材を均等に配置し、断面を崩さずに巻き上げる作業は機械を使うと、具材が偏ったり、海苔が破れたりしやすいためだ。そこでフジは、あえて手巻きにこだわる方針を取っている。

手巻きの品質を保つため、フジは社内で巻きのスピードや仕上がりの美しさについて基準を定めている。1本をおおむね60秒で巻き上げられること。カットした断面の具材が縦横に整列し、どの一切れを見ても同じようにきれいであること──。こうしたポイント満たした技術を持つ従業員が、約110店舗で製造を担当している。
おばあちゃん巻きの年間販売本数は80〜100万本で推移し、節分にピークを迎える。恵方巻き商戦では、エビフライ巻きや海鮮巻きなど新機軸の商品も多数売場に並ぶが、おばあちゃん巻きは依然売上トップを誇る。
節分当日には全店合計で4万本弱を販売する年もあり、具材を10品目に改良した後は「節分期の販売が約1.3倍に伸びた」(濱田氏)という。「お客さまは1年に一度の節分の日にも、『せっかくだから、いつものおばあちゃん巻きを家族で』と思ってくれているのではないか。それが数字に表れているのだと考えている」と濱田氏は力を込める。
では、なぜ発売から約20年が経過したロングセラー商品が、消費者投票型のコンテストで最優秀賞を獲得できたのか。フジは、その理由として「具材の多さ」「素朴でやさしい味わい」「価格を含めた総合的な満足度」の3点を挙げる。
味わいのバランスをとり続けてきたこと。誰にとっても食べやすい味わいに仕上げてきたこと。日常的に手に取りやすい価格を維持してきたこと——。派手な新商品ではなく、”いつもの太巻き”が全国一に選ばれた背景には、フジが日常の食卓に寄り添い続けてきた20年の努力がある。