SUMCO【3436】AIで半導体は好調なはずも株価なぜ弱い?14年ぶり最終赤字回復シナリオとは

SUMCO【3436】AIで半導体は好調なはずも株価なぜ弱い? 14年ぶり最終赤字回復シナリオとは
日本株ショックから立ち上がれない株価
SUMCOの株価が冴えません。2024年8月の日本株式の急落で大きく値を下げたあと、反発が弱い状態が続いています。翌25年4月のトランプ関税ショックからは回復しているものの、従来の水準は大きく下回ります。
株価は足元で1570円の取引です(26年1月29日終値)。24年4月の高値2684円や、21年4月の高値2954円には大きな距離があります。直近1年間の株価騰落率はプラス33.4%と上昇していますが、3年間ではマイナス18.8%と中長期で下落している状況です。PBR(株価純資産倍率)も、目安となる1倍を割り込んでいます。
【SUMCOの株価チャート(過去5年間)】
・株価:1570円(26年1月29日終値)

出所:TradingView
【SUMCOのPBR(26年1月29日終値)】
・1株あたり純資産(自己株式除く):1693.17円
・PBR:0.93倍
・(参考)東証プライムPBR:1.6倍(2025年12月)
※純資産および株式数は24年末
※東証プライムPBRは加重平均
出所:SUMCO 決算短信、日本取引所グループ その他統計資料
SUMCOは半導体シリコンウエハで世界的なメーカーです。半導体の需要はAI向けに伸びており、多くの半導体関連株は株式市場で買いを集めています。SUMCOの軟調は、一見すると対照的に思えるかもしれません。
なぜSUMCOは半導体ブームに乗れていないのでしょうか。
25年は14年ぶり赤字予想 レガシー領域でウエハ低調、米中対立も逆風
SUMCOの株価不振は業績の悪化が一因です。同社は22年12月期にかけて利益を増やしたものの、以降は2期連続で減益となりました。そして、25年12月期は赤字の予想となっています。予想どおり最終赤字となれば、12年1月期以来で14年ぶりです。

出所:SUMCO 決算短信より著者作成
【SUMCOの業績予想(25年12月期)】
・売上高:4044億円(+2.0%)
・営業利益:-42億円(前期は369億円の黒字)
・純利益:-169億円(前期は199億円の黒字)
※()は前期比
※同第3四半期時点における同社の予想
出所:SUMCO 決算短信
業績悪化は成熟品の低迷と減価償却費が背景にあります。
柱の300ミリメートルウエハはAI需要から先端品が好調な一方、成熟品は低調です。顧客在庫も高水準で、メモリー向けは消化が比較的進んでいるものの、ロジック(GPU、CPUなど)向けを中心に全体的には余剰感が強い状況です。
また米中の対立も逆風でした。中国で自前主義が強まり、中国向けの長期契約が反故になるトラブルも発生しています。その他の顧客にも中国の自前主義が波及し、ウエハの需要が減少しました。
SUMCOの苦戦は、この厳しい事業環境のなか減価償却費が利益を圧迫している構図です。同社はウエハの生産能力を増強してきましたが、これに伴う大型の設備投資は減価償却費の増加を招いています。
SUMCOの設備投資額は500億~700億円前後で推移していました。しかし、22年に1300億円まで急増し、23年には3100億円を突破します。21年には公募増資も活用し、設備投資の財源に使っています。減価償却費は23年12月期に700億円台に乗り、直近の25年12月期は1168億円まで拡大する見通しです。
減価償却費が増加しても、それだけ収益力が改善すれば利益は減少しません。しかし、SUMCOは先述の理由などから販売が思わしくなく、EBITDA(利払い前、税引前、減価償却前利益)も直近の推移は低調です。25年12月期は、EBITDAは減価償却費を下回る見通しとなっています。

出所:SUMCO 有価証券報告書および決算説明会資料より著者作成
SUMCOの大型の設備投資は先端ウエハの強化を目的に行ったものです。市場全体が先端品に取り組むなか、SUMCOとしても需要にこたえる形でしたが、足元は結果的に設備が過大になってしまった格好です。
今期も苦戦の見通し 償却費は高水準を維持、頼みのAIも増産の前段階
次に今期(26年12月期)の見通しに移りましょう。SUMCOは2月10日に25年12月期の本決算を公表する予定です。本決算では翌期の業績予想もあわせて開示されることが多く、投資家はそれを材料に今後の成長性を判断することができます。
しかし、SUMCOは業績予想の開示は翌四半期までにとどめ、通期の見通しは公表しない方針です。投資家にとって、SUMCOの今期を予想することは難しいかもしれません。
もっともこれまでの公表情報から、SUMCOは今期も厳しくなる可能性が高いことがわかります。理由の1つが減価償却費です。減価償却費は25年12月期に1168億円を見込み最終赤字予想の主因となっていますが、今期はさらに数百億円程度の増加を見込みます。
好調なAI関連の需要も、本格的な発現は今期に間に合わない見通しです。先端半導体デバイスは増産の方向ながら、増産体制の構築には時間を要する状況で、全体的な立ち上がりは27年以降を見込みます。販売に占める成熟品の比率は一定程度残ることとなり、採算の改善は期待しづらい状況です。
つまり、25年12月期までにSUMCOを苦戦させた要因は、今期も継続することが見込まれます。本決算では今期第1四半期の予想が公表される見通しですが、強い数字は出てこない可能性が高いでしょう。
好転は27年? 償却費は減少へ 大型投資は報われるか
これまでSUMCOの厳しい状況を解説してきました。では中長期的な見通しはどうでしょうか。実は、SUMCOは来期(27年12月期)以降は回復することが見込まれています。
来期以降の回復が期待される理由は減価償却費のピークアウトです。足元で苦戦の主因となっている減価償却費ですが、計上額は今期がピークで、以降は減少する予想となっています。SUMCOの減価償却の方式は建物・構築物を除き5年定率であり、減価償却費は原則として毎年4割ずつ減少していく計算です。設備投資は23年12月期に先んじてピークアウトしており、今後は減価償却費が減少していくことが予想されます。
また、先述のとおりAI向け半導体デバイスは27年以降に本格的な増産が始まると見込まれています。SUMCOが強みとする先端ロジック向けの需要も伸びると考えられ、採算は改善に向かいやすいでしょう。
さらに、先端品はメモリ向けの拡販も期待されます。SUMCOは従来、メモリは韓国サムスンと近い関係にありましたが、近年はHBM(広帯域メモリ)関連で同じく韓国のSKハイニックス向けの出荷も増加しています。24年には、SKハイニックスからベストパートナー賞を初めて受賞しました。HBMはAIサーバー向けに需要が増加しており、SUMCOにも収益機会となっています。
メモリ向けはAIで期待される市場の1つです。米オープンAIは25年10月、サムスンとSKハイニックスとの提携を発表し、月間90万枚の生産を目指すと発表しました。これは世界のHBM生産量の約2倍に相当するといわれています。また、グーグルやマイクロソフトといったメガテックも、米マイクロンにメモリ発注を増やしたと伝わっています(出所:ジェトロ)。
SUMCOの大型投資は市場に先行した部分がありましたが、現在はAI要因から市場側も追いつきつつあります。今期まで収益悪化は避けづらい状況ですが、将来的には生産能力と需要がバランスすることが期待されます。
SUMCOは、長年同社を率いてきた橋本眞幸(はしもと・まゆき)氏が3月に相談役へ就くことを明かしました。新しい経営体制の下で収益を回復できるのか、市場の期待が寄せられています。
若山 卓也/金融ライター
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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