新車は平均760万円、米国でなぜそんなに高いのか-与野党が非難合戦
(ブルームバーグ): 米国では11月の中間選挙を控え、有権者が「アフォーダビリティー(価格の手頃さ)」を強く意識している。与党の共和党が争点と見なしているのは、消費者を悩ます新車価格の上昇だ。
自動車購入情報サイトを運営するケリー・ブルーブックによると、新車の平均価格は昨年9月に初めて5万ドル(約760万円)を突破し、12月には5万326ドルに達した。調査会社エドマンズ・ドット・コムによると、平均価格は2010年以降で61%上昇している。

米国の新車価格、2010年以降に61%上昇
この期間に所得も増えてはいるが、そのペースは新車価格上昇に追い付いていない。2025年末時点で、米国の平均的な世帯で新車を購入するには36.2週間分の所得が必要だった。
これは新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)ピーク時からは低下したものの、パンデミック前の水準より数週間長い。その結果、新車市場から締め出されたり、市場にとどまるためにより多くのローンを抱えたりせざるを得なくなる米国人が増えている。

米国の平均世帯、新車購入に所得36週間分必要
トランプ大統領と共和党は、燃費などの多くの規制が消費者の苦境を招いている元凶だと主張する。一方、野党の民主党はトランプ氏が輸入車や自動車部品に課した関税が理由だと指摘している。
実際はもっと複雑だ。新車価格が急上昇している理由は幾つもある。車両の販売価格以外にも、自家用車を保有し続けるコストを押し上げている要因もある。
EV
昨年9月に平均価格が5万ドルの大台を突破した背景には、電気自動車(EV)の販売増が一部影響している。EVの平均販売価格は、全車種平均より約8000ドル高い。
米国のEV販売は昨年7-9月に過去最高を記録した。EV購入に対する7500ドルの連邦税額控除が9月末に失効するのを前に、消費者の駆け込み需要が膨らんだためだ。
コックス・オートモーティブによれば、同期間にEVは新車販売の10.6%を占め、前年同期の8.6%から上昇した。税制優遇がなくなった10-12月には5.8%に急落した。
関税
自動車メーカー各社は値札を見た買い手に衝撃を与えないよう、露骨な値上げをせずに関税コストを吸収する措置を講じてきた。
ただ、影響を受ける特定モデルが競争力を失うのを避けるため、車種全体に小幅な値上げを分散させているメーカーもある。
パンデミック
2020年より前の20年余りにわたり、米国の消費者は価格が劇的に変わったと感じることなく、より高性能で安全性が高く、かつ効率的な自動車を購入できていた。
コンサルティング会社アリックスパートナーズの世界自動車市場統括責任者マーク・ウェイクフィールド氏は、これは主にグローバル化と、常に人件費の最も低い国へと移動してきたサプライチェーンの形成によるものだと説明。トランプ政権が今、この流れを反転させようとしている。
パンデミックはサプライチェーンを寸断し、鉄鋼やアルミニウムなど原材料価格を押し上げ、半導体不足を引き起こして自動車メーカーが生産できる台数を減少させた。
労働コストと材料費が上昇し、需要が供給を上回り始めると、メーカー側は市場シェア獲得のためにできるだけ多く生産するのではなく、在庫を絞って高価格で販売する体制に移行した。
ウェイクフィールド氏によると、「メーカーは数量で競争せず、価格で稼ぐことができたため、この期間に異例の高収益を上げてきた」という。
自動車メーカーは需要を下支えするため、再び取引条件の改善や値引きを実施し始めている。
ただ、全体としては、こうした販売奨励策はパンデミック前より依然として低い水準にあると、コックスは分析。その一因は、メーカーが関税による追加コストへの対応を迫られているためだ。
装備充実の大型車
ただし、自動車価格の上昇傾向は、パンデミックや「トランプ関税」、高価なEVの販売増よりも前から始まっている。これは数十年にわたって続いており、主因の1つは米国人の大型車志向にある。
エドマンズのインサイト部門ディレクター、アイバン・ドゥルーリー氏は「ここに至った要因を挙げれば、それは真っ先に挙がる1つだ」と語る。
大型車人気は、米国の文化全体に見られる大きなものが好まれるという価値観の一部だ。家もテレビもステーキも大きい方がいいという考え方だ。
自動車メーカーはそれに応える形で、ますます大型化するスポーツタイプ多目的車(SUV)やピックアップトラックに、従来は乗用車にしかなかった装備を搭載し、荒々しい運搬車ではなく、滑らかな乗り心地のセダンのように走るよう設計してきた。
「SUVやピックアップにかつてあった欠点、つまり、乗り心地の悪さ、重量過多、装備の乏しさは、エンジニアリングの進歩で消えた」とドゥルーリー氏は言う。「今では、ほぼどんなサイズの車でも、セダン並みの走りをする」そうだ。

SUV、米自動車市場で大きな存在感 | 新車販売に占めるシェア
メーカー各社はまた、セダンに比べ、車高が高い大型車がはるかに安全だとして売り込んだ。「家族を守るには全輪駆動が要だ、といったメッセージが繰り返された」とドゥルーリー氏は話す。
さらに後押ししたのが、SUVやピックアップの燃費性能の大幅改善だ。これは、厳格な燃費規制によるところが大きい。最大級の車両にも燃費を節約するハイブリッド駆動が提供され始めている。

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フォード・モーターのピックアップ「F150」では、5台に1台がガソリン・電気のハイブリッドだ。「20年前は、ガソリンを大量に消費するSUVというイメージだった」が、「改良が進んだことで、かつては手の届かなかったものが手に入るようになった」とドゥルーリー氏は話す。
しかし、こうした改良には高いコストが伴う。メーカー側は「フォード・フォーカス」や「シボレー・クルーズ」といった量販コンパクト車の販売を打ち切り、利益率の高いSUVやピックアップに注力。こうした車は今や、市場で最も高い価格帯の一角を占める。

SUV、コスト高にもかかわらず米市場で乗用車を凌駕
エドマンズによれば、ゼネラル・モーターズ(GM)とフォード、ステランティスの米大手3社が製造する車両の平均価格は5万4380ドルと、業界平均を13%上回る。
規制を通じた改良
自動車価格は、技術的な改良によっても押し上げられてきた。その多くは安全基準や排ガス規制に起因する。後方視界カメラは、米規制当局が2018年から義務化したことで、全ての新車に標準装備となった。
自動車メーカーはまた、安全性向上と車重削減の両立のため、より高度な金属素材を採用している。後者は燃費規制への適合にも寄与する。
コックスのエグゼクティブアナリスト、エリン・キーティング氏によると、共和党が進める燃費規制の大幅緩和や、運輸省道路交通安全局(NHTSA)トップが「退化」したと指摘する規制、つまり安全目標の前進に寄与しなくなった時代遅れの要件を廃止する動きは、自動車産業がより手頃な価格の車を造りやすくする可能性がある。

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同時に、消費者は規制によってもたらされた車の改良を「非常に積極的に受け入れている」とロサンゼルス近郊の自動車製品・デザインコンサルティング会社カーラボのエリック・ノーブル社長は述べる。
「赤信号で後ろから追突されたとき、相手の車のフロントバンパーが前席の背もたれ付近まで食い込むのと、トランク部分で止まるのと、どちらがいいだろうか」。

米国の新車価格、全セグメントで上昇 | セグメント別平均販売価格の上昇率(2010年=100)
車線維持支援や死角検知といった、規制で義務付けられていない安全機能も、多くのドライバーに歓迎されている。
また、車はより豪華になった。大型のインフォテインメント画面やヒーター付きステアリングが標準装備となるモデルが増え、マッサージシートや高級オーディオシステムといった機能は有料オプションとして提供されている。
その他の要因
新車購入者の大多数は購入資金を借り入れで賄っており、金利が総所有コストに上乗せされる。米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ抑制のため政策金利を引き上げた結果、60カ月の自動車ローン平均金利は、2022年から2024年にかけて倍の8%に達し、その後、今年初めには約7%まで低下した。
キーティング氏は「家計所得に占める金融コストの割合は2倍以上になった」と説明。その結果、新車購入者の構成はより富裕層に偏り、年収7万5000ドル未満の層は市場から退出しているという。
資金コストに加え、新しいテクノロジーの導入で修理費や保険料も上昇している。コックスがまとめたデータによれば、ここ5年で自動車保険料(平均)は約65%上昇し、整備士不足を背景に修理費用は44%膨らんだ。
原題:Why New Cars Now Cost $50,000 on Average in the US: QuickTake (抜粋)
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