米上場企業、CEO交代が記録的ペース 後任は若返り

(左から)ウォルマートのジョン・ファーナー氏、P&Gのシャイレッシュ・ジェジュリカー氏、ターゲットのマイケル・フィデルケ氏

米上場企業の最高経営責任者(CEO)が記録的なペースで交代しており、巨大企業のトップに就任する新任CEOは近年で最も多くなっている。新任CEOは以前より若く、経験も浅い。

新たな分析によると、上場企業大手1500社のうち、昨年は約9社に1社でCEOが交代した。これは少なくとも、米国が金融危機から脱却しつつあった2010年以降で最高の比率だ。

このペースが鈍化することはなさそうだ。今年の1月から2月前半には、小売りチェーン大手ウォルマートや日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)など数十社が新CEOを迎えた。2月初めのある1日だけで、娯楽・メディア大手ウォルト・ディズニー、電子決済サービス会社ペイパル、パソコン大手HPが新CEOを発表し、先週にはスーパーマーケット大手クローガーが元ウォルマート幹部をトップに指名した。

その結果、人工知能(AI)の急速な台頭、長年確立されてきた取引慣行の崩壊、不安定な経済と地政学的秩序に企業が取り組む中で、リーダーシップに関する壮大な実験が行われている。

この報告書を作成した企業幹部紹介会社スペンサースチュアートのグローバルCEOプラクティス責任者ジェームズ・シトリン氏は「われわれは新しい環境にいる。過去の戦略を繰り返す人物が必ずしも適任とは限らない」とし、「CEOが社内の業績面でも投資家との関係でも勢いをつけられなければ、取締役会は以前よりもしびれを切らすようになっている」と述べた。

Stacked bar chart showing CEO turnover within the S&P 1500 over 16 years A horizontal stacked bar chart titled

CEOたちが直面する問題の多くは、従来のビジネス上の課題とは異なる。小売りチェーン大手ターゲットのマイケル・フィデルケ氏は今月、11年間トップを務めたブライアン・コーネル氏からCEO職を引き継いだ。だがその数日前には、本社所在地であるミネソタ州ミネアポリスでの連邦政府の移民政策に関する動画メッセージを従業員宛てに投稿することになった。「これは私が最初に送ると想像していたメッセージではない」と同氏は述べた。

25年10-12月期だけで、通信大手ベライゾン・コミュニケーションズ、ピザハットなどの外食チェーンを傘下に持つファストフードチェーン運営大手ヤム・ブランズなど、時価総額合計1兆3000億ドル(約198兆円)の企業がトップを指名または失った。26年に入ってから新リーダーを迎えたり失ったりした企業の時価総額の合計は2兆2000億ドルで、そのうちウォルマートが約半分を占めている。企業情報提供会社マイログIQのデータに基づくウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の分析で明らかになった。

一部のCEO交代は長年準備されてきたものだ。ウォーレン・バフェット氏は1月1日、投資会社バークシャー・ハサウェイをグレッグ・アベル氏に引き継いだ。これはバフェット氏が21年に提起した後継計画だった。

他社のCEO交代はより突然だった。中古車販売大手カーマックスは販売低迷を受けて昨年11月にビル・ナッシュCEOを解任し、同氏の在任期間は9年で終わった。HPは、エンリケ・ロレスCEOが3月にペイパルのトップに就任するために退任した後、取締役のブルース・ブルサード氏を暫定CEOに選んだ。バイオテクノロジー企業のコデクシスは、3年間務めたCEOをアリソン・ムーア最高技術責任者(CTO)に突然交代させ、同時に従業員の24%を削減した。

生花などのオンラインギフトショップを運営する1-800フラワーズ・ドット・コムの創業者から昨年5月にCEO職を引き継いだアドルフォ・ビジャゴメス氏は、特に小売業では新型コロナウイルス禍以降に企業を揺さぶっている逆風が、異なるアプローチを要求していると述べた。

また「成長が追い風になっている場合と、多くの逆風があり会社を改革する必要がある場合とでは、必要とされるスキルの特性が大きく異なる」とし、「だから多くの変化が見られるのだ」と述べた。同氏は以前、住宅賃貸会社を経営し、ホームセンター大手ホーム・デポで幹部を務めた。

通常の幹部人事の域を超えたものであることを示す兆候がある。最近目を引いたCEO退任には、ウォルマートのダグ・マクミロン氏が10年超、バフェット氏が約60年務めた後の退任など、長年在任した幹部が含まれている。だが現職のCEOは一般的に以前よりも早く退任する。

新任のCEOは以前の新リーダー陣より若く経験が浅いことも、スペンサースチュアートの調査で明らかになった。新任CEOの平均年齢は54歳、昨年の新任者の平均は約56歳だった。

昨年の新任CEO168人のうち80%余りはCEO就任が初めてで、上場企業や他の主要な独立企業を経営した経験がなかった。そのうち3分の2は企業の取締役を務めたことがない。

レイモンド・ジェームズのポール・シュクリー氏のように、前任者がトップに就任した時よりも若い新任者もいる。同社は昨年2月、最高財務責任者(CFO)だったシュクリー氏(42)をCEOに昇格させた。前任者のポール・ライリー氏は10年にCEOに就任した時、55歳だった。

独立企業を経営したことのない幹部が必ずしも未熟というわけではない。ディズニーの幹部で3月にボブ・アイガー氏からCEO職を引き継ぐ予定のジョシュ・ダマロ氏(55)は、同社のテーマパーク・クルーズ部門を統括してきた。同部門は年間売上高360億ドルで、世界中に18万5000人の従業員を抱えている。

レストランチェーン大手ダーデン・レストランツなどの取締役で、業績改善担当幹部を長年務めてきたシンディ・ジャミソン氏は「世界の変化を踏まえると、若返りは理にかなっている」とし、「状況は非常に劇的かつ恒久的に変化しており、こうした決断を迫られる現場にいた経験のある人材を必要としている」と述べた。

企業がより年長で経験豊富なトップを迎えた場合、それはしばしば厳しい状況下で急を要することを示していた。スペンサースチュアートによると、昨年は取締役会メンバーを日常業務の責任者に選ぶ企業が増えた。これは通常、後継計画が予定通りに進まなかったことを示唆する一時的な措置だという。これにはテクノロジー、メディア、通信分野の新任CEOの15%が含まれる。

昨年は女性の新任CEOが少なくなった。新任者のうち女性は9%にとどまり、前年の15%から割合が縮小した。スペンサースチュアートによると、S&Pコンポジット1500指数構成企業全体ではCEOの約9%が女性で、S&P500種指数構成企業では46人が女性となっている。