大同特殊鋼【5471】レアアースで株価急騰、年初来3割高も実力は?18年ぶり高値の裏に潜む減益予想と今後の成長シナリオ

レアアース物色で18年ぶり高値, 利益は減少傾向、需要の低迷で収益悪化 今期も減益の見込み, 苦戦は自動車の不振が影響 生産・販売の停滞が波及, 本格成長は28年度か、大型投資の回収が期待

大同特殊鋼【5471】レアアースで株価急騰、年初来3割高も実力は? 18年ぶり高値の裏に潜む減益予想と今後の成長シナリオ

レアアース物色で18年ぶり高値

大同特殊鋼は短期的に株価が急騰しています。足元では2165円での取引で、25年末からの上昇率は35.4%にも達します(26年2月12日終値)。

きっかけはレアアースを巡る動きです。26年1月に中国が対日輸出規制の強化を発表すると、株価は翌営業日に一時8.4%高となる1804円まで急騰しました。規制にはレアアースが含まれるとの思惑から、重希土類を全く使わない磁石を供給する大同特殊鋼には買いが集まったと考えられます。

【大同特殊鋼の株価チャート(過去5年間)】

・株価:2165円(26年2月12日終値)

レアアース物色で18年ぶり高値, 利益は減少傾向、需要の低迷で収益悪化 今期も減益の見込み, 苦戦は自動車の不振が影響 生産・販売の停滞が波及, 本格成長は28年度か、大型投資の回収が期待

出所:TradingView

株価の急騰を受け、PBR(株価純資産倍率)も目安の1倍に達しました。大同特殊鋼は、長期的にはPBRが低い状況が続いており、1倍の到達は目標の1つでした。この目標は、思わぬ材料から達成された格好です。

【大同特殊鋼のPBR(26年2月12日終値)】

・1株あたり親会社所有者帰属持分(自己株式除く):2085.61円

・PBR:1.04倍

・(参考)東証プライムPBR:1.7倍(26年1月)

※親会社所有者帰属持分および株式数は25年3月末

※東証プライムPBRは加重平均

出所:大同特殊鋼 決算短信、日本取引所グループ その他統計資料

株価はレアアースの物色で急騰していますが、それまでは停滞が続いていました。2000円台の回復は07年9月以来で実に18年ぶりです。

大同特殊鋼は株価を維持できるのでしょうか。実力に迫ります。

利益は減少傾向、需要の低迷で収益悪化 今期も減益の見込み

先述のとおり、大同特殊鋼の株価は中長期的には停滞の傾向にあります。背景には業績の不振があるとみられます。

大同特殊鋼は足元では苦戦しています。売り上げは相対的に堅調ながら、利益は25年3月期までに2期連続で減少しました。実力ベースの損益を示す調整後営業利益は増加したものの、反発は限定的です。

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出所:大同特殊鋼 決算短信より著者作成

減益の主因は機能材料・磁性材料です。ステンレス鋼やチタンといった機能性材料を手掛ける事業ですが、利益は24年3月期に大きく落ち込みました。需要の低迷で売上数量が減少したほか、原料のニッケル市況下落に伴う評価替えといった一時的要因も重荷でした。翌25年3月期も利益は同水準にとどまっています。

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出所:大同特殊鋼 決算短信より著者作成

【セグメント情報(25年3月期)】

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出所:大同特殊鋼 決算短信

今期(26年3月期)も厳しい状況です。第3四半期までで売上収益は前年同期比0.9%減、営業利益は同8.5%減となりました。数量の減少や売値の下落が継続したほか、生産アロケーションの変更に伴う一時費用も生じ、利益が減少します。

通期では売上収益は前期並み、営業利益は前期比8.6%減となる見込みです。25年10月の公表分からは上振れる予想ながら、減益が続く計画となっています。なお、大同特殊鋼は26年2月に日本高周波鋼業を完全子会社化していますが、今期予想には含まれていません。

【大同特殊鋼の業績予想(26年3月期)】

・売上収益:5750億円(+0.0%)

・営業利益:360億円(-8.6%)

・調整後営業利益:369億円(-16.0%)

・純利益:255億円(-9.9%)

※()は前期比

※調整後営業利益…営業利益から特別損益に該当する項目、為替差損益、在庫評価損益、環境費用引当、固定資産税(平準化)、有給休暇引当を調整し算出

※同第3四半期時点における同社の予想

出所:大同特殊鋼 決算短信

苦戦は自動車の不振が影響 生産・販売の停滞が波及

大同特殊鋼の苦戦を掘り下げてみましょう。減速の理由の1つには自動車の不振があります。

自動車業界は大同特殊鋼の主要な需要先です。大同特殊鋼は売り上げの約3分の2を自動車関連が占めています。そして、売り上げの7割は国内であることから、業績は国内の自動車メーカーの影響を強く受ける傾向です。

しかし、国内の自動車生産は頭打ち感があります。主要3社(トヨタ自動車、本田技研工業、日産自動車)は23年に大きく生産を増やしましたが、以降は停滞している状況です。海外も同様で、23年以降は生産が減少しています。

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出所:各社の販売・生産・輸出データより著者作成

自動車販売に目を向けても、足元は勢いがありません。トヨタ自動車と日産自動車は今期(26年3月期)の販売見通しを期首予想から5万台減らしたほか、本田技研工業は同28万台減と下方修正しました。前期比では、主要3社のうち増加を見込むのはトヨタ自動車のみです。

【主な自動車メーカーの予想グローバル販売台数(26年3月期)】

・トヨタ自動車:975.0万台(前期比+4.1%)

・本田技研工業:334.0万台(同-10.1%)

・日産自動車:320.0万台(同-4.4%)

・スズキ:331.4万台(同+2.3%)

・マツダ:128.0万台(同-1.8%)

・SUBARU:92.0万台(同-1.7%)

・三菱自動車:83.0万台(同-1.4%)

※本田技研工業とスズキは四輪

※いずれも第3四半期時点の予想

出所:各社の決算説明会資料

自動車の不振は多くの素材メーカーに影を落としており、大同特殊鋼はその1社です。環境の悪化を受け、大同特殊鋼は25年10月、来期(27年3月期)の営業利益目標を600億円以上から400億円以上に下方修正しました。当面は成長の鈍化が懸念される状況です。

本格成長は28年度か、大型投資の回収が期待

では、大同特殊鋼の成長はいつ本格化するのでしょうか。投資計画から見ると、利益は29年3月期以降に上向くことが期待されます。

大同特殊鋼は生産能力の増強に向け、25年3月期から累計680億円の投資を進行中です。投資効果は営業利益ベースで31年3月期に260億円の発現を見込みますが、主な投資は28年3月期に完了する計画であり、29年3月期には投資効果が投資額を上回る計画となっています。

レアアース物色で18年ぶり高値, 利益は減少傾向、需要の低迷で収益悪化 今期も減益の見込み, 苦戦は自動車の不振が影響 生産・販売の停滞が波及, 本格成長は28年度か、大型投資の回収が期待

出所:大同特殊鋼 中期経営計画資料より著者作成

特に注目の投資が「高合金プロセス改革プロジェクト」です。高合金は添加元素の比率を高めた機能材で、成長市場に位置付ける航空機やオイル・ガス掘削、半導体製造装置で需要が期待されます。23年から始動する大型の計画で、累計360億円規模を振り向ける方針です。

高合金プロセス改革プロジェクトは、マザー工場である渋川工場に大型設備を導入し、航空機エンジン部品向けに製造可能寸法の大型化を図ります。同時にその他の工場との連携を強め、高合金の製造能力を拡大します。

大同特殊鋼は、自動車といった外部環境の悪化を主因に苦戦している状況です。しかし、苦しいなかでも投資を実行しており、今後は設備投資の効果が立ち上がってくることが期待されます。需要が回復してくれば、成長は想定より早まるかもしれません。

若山 卓也/金融ライター

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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