そりゃ勝負所で強いワケだ…大谷翔平が誤審でも絶対キレない理由

大谷翔平選手 Photo:SANKEI

試合の勝敗を決する場面で、明らかな誤審が下される。不満をあらわにする選手は少なくないが、大谷翔平が抗議する姿を目にすることはほとんどない。その背景には、花巻東高校時代から貫いてきた哲学がある。大谷が礼節正しく行動する真意を、本人の言葉から読み解く。※本稿は、作家の西沢泰生『大谷翔平はなぜ、壁を越えられるのか?仕事にも人生にも効く大谷イズム・クエスチョン57』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。

大谷翔平を形作った

花巻東高校時代の教え

 インタビューで「座右の銘」を聞かれた大谷翔平は、「とくにないけれど、好きな言葉はたくさんある」と答え、「先入観は可能を不可能にする」を挙げました。さて、ここでクエスチョン!

Q 大谷が「先入観は可能を不可能にする」以外で好きな言葉として挙げたのは、次の内どれでしょう?

(1)自由と責任

(2)権利と義務

(3)罪と罰

 答え (2)権利と義務

 なんだか、いきなり社会科の授業で出てくるような、小難しい言葉のように聞こえます。実はこの言葉は、花巻東高校時代に佐々木洋監督から聞いた言葉でした。

 そのココロは、「試合に出ている選手は、すべての部員を代表して試合に出るという『権利』を得ている。だから、どんなときであっても全力でプレーをする『義務』がある」ということ。

 この考え方から、たとえ凡打したとしても、花巻東の選手は一塁まで全力疾走をすることが徹底されているのです。だって、100人を超える部員がいるなか、ほとんどの試合に出られない選手は、打席に立つ権利も、一塁まで全力疾走する権利も与えられていないのですから……。

 そしてこの考え方は、ずっと大谷の行動基準のひとつになっています。

 監督が試合で使ってくれるということは、試合でプレーをする権利を与えてもらえたということ。だから、全力でプレーする義務がある!というわけです。

 これは、仕事も一緒です。私が知る、あるビジネスコンサルタントは、新人のビジネスパーソンを対象にした「モチベーションアップ」のためのセミナーで、受講者にこんなことを言っています。

「就職活動で希望の会社に入ることができなかった友人たちのことを思い出してみてください。それに比べ、あなたたちは今、こうして就職して、活躍の場を会社から与えてもらっている。仕事で悩む権利を与えてもらっている。それだけでラッキーだと思いませんか?」

 モチベーションが落ちたときは、「自分は悩む権利を与えてもらっている」と考えてみてはいかがでしょうか。

自分の信じる正しさを

貫いた先に結果が待っている

 さて、同じインタビューで大谷が「好きな言葉」として挙げた、高校時代に佐々木監督から授かった言葉をもうひとつ紹介しましょう。

 それは、こんな言葉です。

「『楽しい』より『正しい』で行動する」

 この言葉もまた、大谷の行動基準のひとつになっています。

 キツイ練習メニューを「やりたくない」と思ったとき、「でも、成長するためにはやるのが正しいよな」と思えるかどうか……そこが大切ということ。大谷は言います。

「何が正しいのかを考えて行動できる人が大人だと思います」

 そういえば、こんなエピソードがあります。

 クリスマスの日に練習をしていた大谷は、「あっ、これっていいかもしれないな」と投球に関するひらめきがありました。そして、こう思ったのです。「クリスマスだからって練習を休んでいたら、このひらめきには出会えなかった」。クリスマスでも練習するという「自分にとって正しいこと」を貫いていて良かった……というわけです。

 だから私たちも、大谷を真似して休日返上で働こう……という話ではありません。

「自分にとって何が正しいのか?」「この行動は、楽しさに流されているのではないか?」と、そんなことを意識してはいかがでしょうか、ということです。

最後に勝敗を分けるのは

「運」や「人間性」

 大谷が高校1年生のときに、「ドラフト1位指名8球団」という目標を達成するための「目標達成シート(曼荼羅チャート)」(下の図参照)を作成した話は有名ですね。

 中心の目標を達成するための要素として、「体づくり」「スピード160キロ」「人間性」「メンタル」など8つを挙げ、それぞれについて、それを達成するために必要な行動などを8つ挙げています。さて、ここでクエスチョン!

Q 大谷が作成したマンダラチャートの「運(を高める)」の項目に書き込まれた8つの行動は、「あいさつ」「部屋そうじ」「審判さんへの態度」「本を読む」「応援される人間になる」「プラス思考」「道具を大切に使う」と、あとひとつは何だったでしょう?

ヒント この大谷の行動は、アメリカでも絶賛されました

 答え ゴミ拾い

同書より転載

 大谷は、こんなことを言っています。

「勝つか負けるかの微妙なラインは、『人間性』や『運』などの微妙なところで左右されると思う」

 つまり、実力や、勝とうと思う気持ちの強さが同じなら、最後はその人の持っている人間力とか運の強さが勝負を分けると……。

「運の大切さ」を知っているからこそ、大谷は、「運を高める行動」を、「当然のように」実践しているのです。

 大谷が作成したマンダラチャートを見ると、野球に関する体力や技術に関する要素のほかに、「人間性」「メンタル」、そして「運」という3要素が含まれていて、いかにも大谷らしいと感じます。

他人を思いやる態度は

結果的に自分のためになる

 そのなかの「運」を高める行動のひとつが「ゴミ拾い」です。

「なぜ、グラウンドに落ちているゴミを拾うのか?」と聞かれたとき、大谷は、こう答えています。

「他人が落とした『運』を拾っているんです」

 中国には、「陰徳あれば必ず陽報あり(人知れず善行をする者には、必ず良い報いがある)」という言葉があります。

 誰も見ていなくても、ゴミが落ちていたら拾ってゴミ箱へ。人は見ていなくても、神様はちゃんと見ていて、そういうことをやる人間を「えこひいき」してくれるということです。

『 大谷翔平はなぜ、壁を越えられるのか?仕事にも人生にも効く大谷イズム・クエスチョン57 』(西沢泰生、光文社)

「運」の要素のなかに、「審判さんへの態度」が含まれているところも大谷らしいですね。

 大谷が審判のジャッジに対して、目の色を変えて猛抗議する……と、そんな場面を見たことがある人はいないはず。たとえ明らかなミスジャッジに対しても、軽く笑みを浮かべながら、「えっ、今のがですか?まいったな~」という表情をするのが大谷ですよね。抗議をして、運を落とすくらいなら、「審判さんも人間だから、ミスジャッジのひとつくらい仕方ない」という思いなのかもしれません。

 これを私たちに当てはめれば、「上司や周りの人たちへの態度」でしょうか。あなたは、周りの人に、「あからさまな不満顔」を見せたりしていませんよね。

 この、大谷流、「運」の引き寄せ方。真似できるところはどんどん真似して、自分の運気を高めましょう(蛇足ですが、私も「ひそかなゴミ拾い」を真似しています)。