【プレイバック’16】「爆買い終了」?…中国株バブル崩壊の影響を“春節爆買い中国人”に聞いた

ラオックスには多くのツアー客が訪れる。訪日2回目の中国人観光客は「ほとんど定価で販売しているので若干高い印象です」と語っていた(’16年2月26日号より)

上海株のバブルが崩壊

10年前、20年前、30年前に『FRIDAY』は何を報じていたのか。当時話題になったトピックを今ふたたびふり返る【プレイバック・フライデー】。今回は10年前の’16年2月26日号『売れ筋はセラミック包丁、魔法瓶、電気シェーバーなど日用品 春節爆買い団に聞いた「中国大不況のカゲ」』を取り上げる。

中国政府の日本への渡航自粛勧告によって今年は激減しているものの、毎年1~2月の春節のシーズンになると日本へ大挙して押し寄せていた中国人観光客。とくに’08年ごろから話題になり、’10年代前半にはすっかり見慣れた光景となったのが、「爆買い」だった。高級ブランド、家電製品から日用品までありとあらゆるモノを大量に買い込んでいた彼らだが、’16年は少し様子が違ったようだ(《》内の記述は過去記事より引用、年齢・肩書は当時のもの)。

《「事前にネットで調べた、マツモトキヨシやトモズに行きました。今日は魔法瓶や薬品、化粧品など2万円ほど買い物をしました」

今年も春節休暇を利用した中国人観光客が大挙して来日。「爆買い」旋風が各地で吹き荒れている。中国・天津市からツアーでやってきたRさん(45)もこの日、東京・銀座で買い物をしていた。

日本政府観光局によれば、昨年、訪日した中国人観光客は前年比2倍の約500万人で、1人あたりの買い物代は約16万円。とりわけ、春節の「爆買い」は日本企業にとってかき入れ時だ》

だが、この前年の’15年6月にバブルの様相を呈していた上海株が大暴落。さらに人民元の切り下げも影響して世界同時株安まで引き起こし、’15年の実質経済成長率は6.9%に。25年ぶりの低成長で中国経済の減速が懸念されていたのだ。

ブランド品や高級家電は買わない

果たして不況は「爆買い」にも影響するのか。当時、中国事情に詳しいジャーナリストに聞いた話によれば、人気なのは魔法瓶、セラミック包丁、電気シェーバーなど日用品とのことだった。冒頭のRさんも魔法瓶を紙袋にみっちりと詰め込んでいた。かつて人気だった高級家電やブランド品から、「爆買い」の対象は雑貨や化粧品などにシフトしているという。

《「ウチは保守的なので、株はやっていないんです。だから、(景気後退の)影響はそれほど感じません。予算は……数万円です」(北京市から来たCさん・30代女性)

「(影響は)業界によります。たしかに景気は悪くなったかもしれないけど、私個人はそれほどでもありません。実際、休暇も取れて日本に来られました」(前出・R氏)

と影響を否定するが、手には往年の「爆買い」中国人が持っていたような高級ブランドの紙袋などは見当たらない》

宿泊先についても節約志向だという。東京・上野の観光業界関係者はこう語っていた。

《「春節の期間中のホテルの稼働率は90%以上ですが、そのほとんどは安いビジネスホテルです。とくに上野は1万〜2万円の安いホテルが多いので、『爆買い』旅行者の需要に合っているんです」》

「爆買い」がみられなくなった要因の一つとして、中国で一番広く使われているデビットカード「銀聯カード」の国外での使用上限額を中国政府が規制したことも影響したとみられた。これまでの1日1万元(当時のレートで約17万円)から年間10万元(同・約170万円)に制限されたのだ。これは資本流出を阻止し、中国国内の内需を拡大することが狙いだと言われていた。

当時は人民元安も進んでおり、中国人観光客の財布の紐が固くなったとも。デフレが続いて万年不景気状態の日本に慈雨のようなバブルをもたらした「爆買い」は、これでなくなってしまったのだろうか。

その後も増え続けた中国人観光客

’16年の訪日外国人の旅行消費額は3兆7476億円で過去最高となった。一方で中国人観光客の1人あたり旅行支出(旅費や宿泊費も含む)は23万504円で前年から18.4%の大幅減となった。「爆買い」を当て込んで百貨店が新たにオープンした免税店の高級ブランドや時計売り場は、閑散としていたという。百貨店での免税品の売上高は前年割れが続き「爆買いバブルは終わった」と囁かれた。

観光庁は「爆買い」が減った理由として、①前年までは日本を初めて訪れる富裕層が多かったが、’16年はリピーターや中間層が増えた、②’16年4月から中国人が外国製品を持ち帰るときにかかる税が上がった、③対人民元で前年より円高になったこと、を挙げていた。また、リピーターが増えたことで、買い物中心の「モノ消費」から、自然や、日本ならでは体験を楽しむ「コト消費」へのシフトを指摘する声もあった。

中国の景気減速は急激に進むことはなかった。日本を訪れる中国人観光客の数も右肩上がりに増え続け、’19年には959万人となる。コロナ禍で一度は減ったものの’25年にはふたたび900万人を突破している。

‘25年の1人あたりの旅行消費額も24万6154円となっていた。欧米からの観光客が軒並み30万円を超えていることをみれば、けっして大きな額とはいえないが、人数が多いため訪日外国人消費額全体の21.2%を占める。

渡航自粛により、’26年1月の訪日外国人旅行者数は359万7500人と前年同月比で-4.9%となり、‘22年1月以来のマイナスとなった。中国人観光客が60.7%も減った影響だ。だが前述したとおり、現在の中国人旅行者1人あたりが使うお金は高額ではなくなっているため、以前ほどの影響力はないとみられている。

銀座8丁目の高架下には多数の観光バスが停まっていた。多いときには、歩道を中国人観光客が埋めつくした(’16年2月26日号より)

天津市から来たRさんは電気関係の会社に勤務し、家族で日本を訪れた。「妻と子どもはいまディズニーランドにいます」(’16年2月26日号より)

北京市から夫婦で来た、Cさん。ふだんは学校で事務員をしているという。「化粧品は免税だから、中国で買うより安いです」(’16年2月26日号より)