INPEX【1605】株価18年ぶり高値も決算で13%安、今期2桁減益も前提は保守的 上振れの可能性は?

本決算で売り集中, 2期連続の減益予想は「腰だめ」 期中で利益の積み上げを示唆, 現金収支は7年ぶりマイナス計画 大型投資の狙いは?, 株主還元の強化は一巡 累進配当は継続

INPEX【1605】株価18年ぶり高値も決算で13%安、今期2ケタ減益も前提は保守的 上振れの可能性は?

本決算で売り集中

INPEXの株価は25年に大きく上昇しました。年間騰落率はプラス58.7%と、日経平均株価(同プラス26.2%)を大幅に上回ります。上昇は26年も続いており、2月には一時4002円の高値を付け、08年5月の上場来高値(3600円)を18年ぶりに更新しました。

しかし、上昇ムードは決算で揺らぎます。前期の25年12月期の本決算を公表すると、翌営業日は一転して13.1%安と急落しました。配当利回りは3.05%(26年2月16日終値)と、INPEXとしてはやや低いの水準にとどまることも懸念されます。

【INPEXの株価チャート(過去5年間)】

・株価:3543円(26年2月16日終値)

本決算で売り集中, 2期連続の減益予想は「腰だめ」 期中で利益の積み上げを示唆, 現金収支は7年ぶりマイナス計画 大型投資の狙いは?, 株主還元の強化は一巡 累進配当は継続

出所:TradingView

【INPEXの予想配当利回り(26年12月期)】

・予想配当金:108円

・予想配当利回り:3.05%

出所:INPEX 決算短信

投資家はなぜ決算で売りに動いたのでしょうか。内容を掘り下げてみましょう。

2期連続の減益予想は「腰だめ」 期中で利益の積み上げを示唆

まずは気になる業績の見通しから確認します。INPEXは今期(26年12月期)を減収減益と予想しました。予想どおりとなれば、減収減益は2期連続です。

【INPEXの業績予想(26年12月期)】

・売上高:1兆8930億円(-5.9%)

・営業利益:9570億円(-15.7%)

・純利益:3300億円(-16.2%)

※()は前期比

※25年12月期時点における同社の予想

出所:INPEX 決算短信

本決算で売り集中, 2期連続の減益予想は「腰だめ」 期中で利益の積み上げを示唆, 現金収支は7年ぶりマイナス計画 大型投資の狙いは?, 株主還元の強化は一巡 累進配当は継続

出所:INPEX 決算短信より著者作成

減益の主因は市況の保守的な見通しです。25年12月期に平均68.19ドルだった油価を63ドルと予想しました。純利益は前期比638億円減の予想ですが、うち523億円を油価影響が占めます。油価は後半にかけて下落する想定で、上期は63.5ドル、下期は62.5ドルと見込みます。

もっとも、指標のブレント原油先物は足元で67ドル近傍です。この水準が維持されれば利益は上振れが期待されます。INPEXによると、油価は1ドル高い水準が期首から期末にかけて続いた場合、純利益を55億円押し上げます。

別の視点からも上振れを示唆します。25年12月期から織り込みを開始した「プロフィットブースター500」(※)やバランスシートからの利益は、期首時点では予想が難しく、期中に収益化していくとの想定です。上述の今期予想は「腰だめの数字」と説明し、利益の積み上げに自信をにじませました。

※プロフィットブースター500…イクシス事業の回収フェーズ入りに伴う有償減資、および欧州・中東事業における投資インセンティブ効果。25年12月期から年間500億円、10年で5000億円の利益貢献を見込む

また、今回の決算で注目点の1つが「基礎収益」です。INPEXが初めて開示する利益指標で、純利益から油価と為替影響、さらに一過性影響を除いて算出されます。

基礎収益は実力ベースでの収益を測る指標ですが、同指標では今期も前期並みを見込みます。前期25年12月期の3123億円に対し、今期は3152億円と微増の予想です。外部要因は読みづらい面がありますが、基本的な収益力は堅調なようです。

現金収支は7年ぶりマイナス計画 大型投資の狙いは?

もう1つ、決算で気になる点がキャッシュフローです。今期(26年12月期)のフリーキャッシュフローは探鉱投資前で200億円のマイナスを予想しています。前期は同1380億円のプラスであり、差し引き1580億円の悪化となる想定です。フリーキャッシュフローのマイナスは19年3月期以来で、負債での資金調達を計画しています。

キャッシュフローの赤字予想は成長投資が主因です。今期は8500億円と、前期の3869億円から大幅な増加を見込みます。INPEXは翌27年12月期までの3年間で1兆9000億円の投資枠を設定しており、今期で65%まで進捗する計画です。

投資の積極化は当面の収益構築が狙いです。次期の柱となるアバディ事業※は生産開始が30年代初頭の見込みであり、それまでの収益が課題となっています。INPEXは20年代後半~30年代前半の収益の獲得を目指し、足元で投資を強めています。

※アバディ事業…INPEXがオペレーターとして参画するインドネシアの大規模液化天然ガス開発事業

8500億円の投資のうち、2820億円はアブダビでの増産対応といった既存案件の増強に振り向けます。また、権益の取得やM&Aといった新規取得にも1060億円を投じる計画です。新規取得は即効性の高い案件もあり、今期または27年12月期での収益貢献も想定します。

大型の投資は収益力の向上が期待される一方、財務への影響も気になるところです。もっとも、INPEXは自己資本が4兆円台後半と厚く、影響は限定的と説明します。ネットDEレシオ(※)は今期に0.04ポイント上昇する計画ですが、着地は0.39倍と目安の0.3倍~0.5倍にとどまる想定です。

※ネットDEレシオ…(有利子負債+リース負債-現金および現金同等物)÷自己資本。イクシス下流事業会社を含む

本決算で売り集中, 2期連続の減益予想は「腰だめ」 期中で利益の積み上げを示唆, 現金収支は7年ぶりマイナス計画 大型投資の狙いは?, 株主還元の強化は一巡 累進配当は継続

出所:INPEX 決算短信より著者作成

株主還元の強化は一巡 累進配当は継続

最後に注目の株主還元を押さえておきましょう。INPEXは27年12月期までの3年間は累進配当(※)を計画しています。また自社株買いも実施し、総還元性向50%以上を目指し還元する方針です。この方針のとおり、INPEXは株主還元に大きな資金を振り向けてきました。

※累進配当…1株あたり配当金の前期比での維持または増配

本決算で売り集中, 2期連続の減益予想は「腰だめ」 期中で利益の積み上げを示唆, 現金収支は7年ぶりマイナス計画 大型投資の狙いは?, 株主還元の強化は一巡 累進配当は継続

出所:INPEX 決算説明会資料より著者作成

ただし、当面は追加的な株主還元には期待しづらい状況です。INPEXはアバディ事業で借入金での調達を想定しており、信用力を維持するため自己資本は厚くしておきたい意向があります。株主還元は自己資本を減少させるため、さらなる強化はこの方針に逆行します。

なお、累進配当は続ける方針です。INPEXは個人株主が増加している状況から配当金を重視する姿勢を見せており、少なくとも27年12月期までは累進配当を実施すると説明します。大型の投資を控える中でも配当金を積み、株式価値の向上に努めます。

若山 卓也/金融ライター

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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