ウクライナがイギリス軍に「3Dプリンター製ドローン」を前線近くで数時間以内に製造する方法を伝授

ウクライナ兵はドローンの本体や部品、さらには爆弾までも3Dプリンターで製造しており、イギリスもそこに注目している。
- イギリス陸軍の精鋭部隊がウクライナのドローン戦略にインスパイアされ、3Dプリント技術を導入した。
- ウクライナはその技術を使い、対ロシア戦で使用するドローンやドローン部品、爆弾を、速く安く製造している。
- この部隊では3Dプリント技術の利用を推進しており、戦場に近い場所で運用できる体制の構築を目指している。
ウクライナが戦場で得た知見が、イギリス陸軍(British Army)部隊をある技術の導入へと突き動かしている。対ロシア戦で有望視されている「最も必要とされる場所の近くで、ドローン部品を3Dプリントする」という技術だ。
イギリスの精鋭歩兵連隊、アイルランド近衛連隊第1大隊(1st Battalion Irish Guards)の指揮官ベン・アーウィン=クラーク(Ben Irwin-Clark)中佐は、同大隊がドローン本体とドローン部品を3Dプリントすることを決めたのは「間違いなく、ウクライナから得た学びによるものだ」とBusiness Insiderに語った。
ドローン戦対策の鍵を握る「3Dプリント」
彼の大隊は、訓練ローテーション中にウクライナ軍部隊と連携して以来、ドローン戦への備えに力を入れている。その取り組みの鍵を握るのが3Dプリントだ。
ウクライナでの戦争は、軍隊がいかに迅速に適応し、実験を重ね、破損した装備を交換しなければならないかを示した。そのスピードは往々にして、従来のサプライチェーンが許容する範囲を超える。
アーウィン=クラーク中佐によると、ここ数カ月、ウクライナ軍と活動を共にしたことで、大隊は小型ドローンがいかに重要かを目の当たりにしたという。
すでに同大隊の隊員300人のうち78人が、ドローンのパイロットやインストラクターとしての訓練を完了した。彼らは「ドローンの訓練とはドローンを壊すこと」を意味するという点をすぐ学んだ。そして、メーカーや時間のかかる正規のルートからの調達を待つよりも、部隊内で修理と改良を行うほうがより速く、より安上がりだと判断したのだ。

イギリス陸軍のアイルランド近衛連隊第1大隊は、ドローン部品の3Dプリントも可能な「ドローン・ハブ」を立ち上げた。
3Dプリント技術は、調達にかかる時間を「数週間」から「数時間」へと劇的に短縮できる。このスピードは、訓練を実戦に即したものにし、コストを抑える上でも重要だが、戦場においても重要な意味を持つ。実戦では戦術や装備のニーズが数日で変化し、迅速な解決策が求められるからだ。
同部隊のプリンターは現在、小型爆弾やロシア製装備品のレプリカなどを製造している。これらは3Dプリンターを導入するまで、正規の調達ルートで迅速に入手することが難しかったものだ。
この取り組みは、同大隊が新設し拡張し続けている「ドローン・ハブ」——兵士がドローンの修理やドローン戦の訓練を行える、イギリス陸軍初の施設——の一環として進められている。
英軍もドローン本体のプリントに成功
この動きは加速している。同大隊は2026年1月、初のドローン本体のプリントに成功した。これはバッテリーパックやセンサー、モーターといった部品を搭載できるシェル(筐体)で、低コストかつ迅速に新品のドローンを組み立てられる手段となる。大隊は今後、この製造を標準的なプロセスにしていく計画だ。

アイルランド近衛連隊第1大隊が3Dプリントした初のドローン機体。
アーウィン=クラーク中佐は、長期的な計画は3Dプリンティングを大幅に拡大することだと述べた。現時点では、既存の技術を複製することに焦点を当てており、これは「初期段階にある」と彼は説明した。最終的には、兵士たちが独自のイノベーションを設計しプリントできるようにすべきだと述べた。
彼は、市販のドローンを改造して3Dプリントした取り付けパーツで弾薬を投下できるようにするなど、ウクライナの事例を、イギリス兵に模倣してほしいボトムアップ型イノベーションのモデルとして挙げた。
また、この能力を移動可能にし、3Dプリンターを車両に搭載してパーツを戦闘の近くで、数日ではなく数時間で生産できるようにすることも目標だと彼は付け加えた。
戦闘近くでのこのスピードは、ウクライナの戦いが示したように、極めて重要だ。
前線付近で数時間以内に製造するウクライナ
ウクライナ軍は前線近くでドローンの機体とコンポーネントを生産するために3Dプリンターを使用しており、交換品を数日待つのではなく、数時間以内に新しいドローンを製造し、損傷したものを復帰させることができている。

ウクライナ軍第25空挺旅団の移動式攻撃ドローン作業場で3Dプリントされたドローン用弾薬を手にするウクライナ兵。同軍兵士がこの技術をどのように活用しているのかを示す一例だ。
兵士やその他の部隊は、爆弾の筐体もプリントしている。そこに爆薬を充填することで、中身の爆薬は入手できるが、弾薬(完成品としての爆弾)が不足するという状況を打開しているのだ。あるボランティアグループがBusiness Insiderに語ったところによると、その筐体の製造コストは1個あたり4ドル(624円、1ドル=156円)未満であり、安価で使い捨てができるという。
ウクライナ企業は、ケーブルで制御されるためにジャミング(電波妨害)不可能なドローン「光ファイバードローン」用のスプール(巻き枠)も3Dプリントしている。
ウクライナ軍全体で3Dプリント技術がどの程度普及しているか、その正確な規模は定かではない。とはいえ、コスト、スピード、適応性が、兵器のハイテク度と同じくらい重視される戦争において、この技術が重要な推進力となっていることは間違いない。ウクライナの軍隊はロシアよりもはるかに小規模だが、低コストかつ迅速に生産される装備品によって、その差を埋めるほどの大きな恩恵を受けている。
ウクライナの実戦経験に触発され、訓練も変えた
アイルランド近衛連隊第1大隊は、イギリス主導の多国籍ミッション「オペレーション・インターフレックス」を支援する任務中に、そうした知見の多くを得た。この作戦には14カ国が参加し、これまで6万2000人以上のウクライナ兵を訓練してきた。
インターフレックスは本来、西側諸国や北大西洋条約機構(NATO)のドクトリン(戦闘教義)をウクライナ軍に共有するためのものだが、イギリス軍もまた、ウクライナの実戦経験に基づいて自らの訓練を適応させている。

イギリス主導の訓練「オペレーション・インターフレックス」は、ウクライナの実戦経験豊富な兵士と新たに入隊した兵士の両方を訓練しているが、同時に教える立場のイギリス陸軍にも新たな知見を与えている。
イギリス軍は自らの訓練に、塹壕戦訓練の復活、将来の地上戦がどのように展開するかに関する前提条件の見直し、そして訓練プログラムへの対ドローン用防護ネット(物理的な網)の導入を取り入れた。
「これほど多くを学べるとは予想していなかった」
ウクライナは、西側の軍隊がここ数十年経験してこなかったような戦争を戦っている。つまり、同等レベルの軍事力を持つ敵国との、大規模かつ過酷な「産業型消耗戦」だ。それとは対照的に、米英による近年の軍事作戦は主に対反乱作戦だった。
そのため、NATO加盟国は国防費を増額するとともに、ドローンやその他の低コストなシステムなど、ウクライナでの戦争で特に有効性が実証された能力への投資を拡大している。
潤沢な兵器の備蓄と高度な空軍力を持つ一部の西側諸国の軍隊にとって、ドローンなどの低コストな代替手段は、それほど大きな役割を果たさない可能性もある。そもそもウクライナがドローンに多大な投資をせざるを得なかったのは、西側諸国のような圧倒的な軍事力が欠如していたからにほかならない。
とはいえ、将来の戦闘でこれらの兵器が一定の役割を果たすことが予想されている。そのため、米英をはじめとする各国の軍隊は、この新たな戦闘技術に関する最適解を模索している。
Business Insiderが最近取材した訓練デモンストレーションの場で、アーウィン=クラーク中佐は次のように語った。
「ウクライナ軍と共に活動し、彼らを訓練することは本当に刺激的だ。1年以上前にインターフレックスの任務を開始した際、我々自身がこれほど多くを学ぶことになるとはまったく予想していなかった」