ランクル、スカイライン、ロードスターなどの日本車が牽引、米国発の旧車ブームに大手メーカー続々参戦

ヘリテージパーツに関する出展をしたトヨタ「カローラ・スプリンター(AE86)」(写真:筆者撮影)

日本車の旧車ブームが続いている。旧車に定義はないが、現在のブームでは、1960年から1990年代に製造販売されたモデルの人気が高い。なかでも、米国「25年ルール」の影響で、1980年代から2000年代前半の「ネオ・クラシックカー」の海外需要が高まり、国内市場で高値が当たり前になっている。そうした市場動向を受けて、自動車メーカー各社は旧車用の補修部品を「ヘリテージパーツ」として復刻。トヨタ、日産、ホンダ、マツダに次いで、スバルも2026年2月に市場参入を明らかにした。国内外で過熱する旧車ブームの行方を考察する。

(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

「ノスタルジック2デイズ」(2026年2月21〜22日:パシフィコ横浜)の初日、会場内は50代から60代の男性を中心に、家族連れを含めて多くの旧車ファンで賑わっていた。

 旧車を扱う雑誌など、複数メディアが合同で主催する日本最大級のクラシックカーモーターショーである。

 クラシックカーと聞くと、1900年代前半に米国フォードが大量生産を始めた「T型」のような、馬車からクルマへの転換を促したモデルや、フェラーリやポルシェなど欧州メーカーの希少車を想像する人もいるだろう。

 そうした欧米の旧車が主流の国内イベントもあるが、ノスタルジック2デイズの主役は昭和から平成初期の街を彩った日本車たちだ。

 筆者はこれまで日本の旧車を主体としたイベントを定常的に取材してきたが、ここ数年で明らかに雰囲気が変わったと感じている。

 最も大きな変化は、自動車メーカーの本社や大手自動車ディーラーが、旧車に対する関心を高めている点だ。

 これまでにも、自動車メーカーが自社で運営する自動車博物館の展示車を持ち込むことはあったが、最近では新しい事業として、旧車市場を重視するようになっている。

旧車ビジネスの中核にある「ヘリテージパーツ」

 新事業の中核は「ヘリテージパーツ」の販売だ。

 ヘリテージパーツとは、復刻された補修部品のこと。自動車メーカーは新車を製造すると、ディーラーへの卸売販売に合わせて補修部品の供給も始める。補修部品を在庫して、ディーラーや修理工場からの発注に迅速に対応する体制を敷くわけだ。

 複数の自動車メーカー関係者に話を聞くと、補修部品の製造継続年数は正確には決まっておらず、一般的に20年前後だという。

 自動車メーカーでつくる業界団体の日本自動車工業会によれば、新車を購入したユーザーのクルマの保有年数は7年強で、新車購入者の約2割が、10年を超える保有年数に達する。その後、中古車として二次流通することを考えると、自動車メーカーが新車製造後、20年程度補修部品を製造し続けることは妥当だと考えられる。

 そうした中で、自動車メーカーはすべてのクルマに対して、ヘリテージパーツを設定しているわけではない。

 あくまでも、対象となるのは人気の旧車だ。

旧車市場を牽引するスポーツモデル

 具体的には、トヨタでは「ランドクルーザー」「カローラ・スプリンター(型式AE86)」「スープラ」、日産は「スカイラインGT-R(R32、R33、R34)」、マツダは「ロードスター(NA)」、ホンダは「NSX」といった主にスポーツカーである。

 各社のヘリテージパーツ事業の状況を調べると、トヨタ(GR)は「AE86(カローラ・スプリンター)」向けエンジンのシリンダーヘッドとシリンダーブロックを新規採用した。新車発売当時の部品と比べて燃焼室の切削加工を追加するなどして、エンジン個体の圧縮比のばらつきを抑えた。単純に部品を復刻したのではなく、現代の技術を活用してより良いパーツを供給することを、トヨタは心がけている。

ディーラー独自にレストアをするケースもある。トヨタモビリティ神奈川では「スープラ」のほかに、1980年から1990年代「クラウン」のレストア依頼が増えているという(写真:筆者撮影)

 ヘリテージパーツ事業参入で最後発のスバルは2026年2月、初代「インプレッサ(GC/GF)」を皮切りに「スバルヘリテージサービス」を始めた。

 ユーザーからの問い合わせがあると、スバルが用意したパーツリストを確認し、スバルが適合と在庫の確認を行い、対応可能な販売店を検索する。パーツの取り付けや交換は販売店の店舗で行う仕組みだ。

スバルは初代「インプレッサ(GC/GF)からヘリテージパーツ事業を開始(写真:筆者撮影)

 今後、対応車種を拡張する予定だが、スバル本社側がフルレストアするプロジェクトについては現時点で未定である。

 これまでもヘリテージ関連サービスを行っていたホンダは、「NSX(初代)」向けのヘリテージパーツを活用した車両全体の復刻であるレストア事業を「ホンダヘリテージワークス」として刷新した。

 関係者によれば、エンジンのオーバーホールやサスペンションの修繕などを行うベース作業の料金が1000万円強。そのほか、ボディや内装などフルパックでレストアすると料金は2000万円を超える。

 そして、フルレストアサービスで最も積極的な事業展開を計画しているのが日産だ。

 2025年12月に日産モータースポーツ&カスタマイズ社のNISMO事業所(神奈川県横浜市)で実施した報道陣向け事業説明会では、1980年代末から2000年代初頭にかけて生産販売された、いわゆる第2世代「スカイラインGT-R(R32/R33/R34)」向けのレストアサービスを強化すると説明。国内で一部の販売店に構えている「パフォーマンスセンター」を米国で展開することを計画していることを明らかにした。

米国から火がついた旧車ブーム

 こうした自動車メーカー各社が海外市場を含めてヘリテージパーツの拡充やレストア事業の構築を急いでいる背景には、米国の通称「25年ルール」が深く関係している。

 米国では1989年、主に欧州から輸入されるクラシックカーへの衝突安全規定への対応が不明瞭だったことを受けて、輸入車セイフティコンプライアンス法を制定。新車製造から25年以上経った旧車を対象とした。これに連動して、一部の州では排気ガス規制に対しても旧車に対する規制を緩和した。

 こうしたルールを、1980年代から2000年代前半の日本からの輸入車に適合することで、日本からの旧車輸入が一気に増えた。

 人気の理由は、映画「ワイルドスピードシリーズ(米国題「ファスト&フューリアスシリーズ」)」の影響だ。2001年に公開された同シリーズ初作は、1990年代末から2000年代初頭に米国カリフォルニア州で火がついた日系チューニングカーブームをモチーフにした作品だ。

 その当時に20代だった日系チューニングカーファンが今、当時を懐かしんでハイパフォーマンスな日本の旧車を大人買いしているのだ。

 一方、日本でも現在の20代や30代が昭和を懐かしむようなトレンドがあり、旧車ブームの新たなる客層になっている。

1970年代の日産販売店を懐かしむ展示。後方に「チェリー」を展示(写真:筆者撮影)

 そんな日米でのブームによる日系旧車の需要急拡大に応じて、日本での旧車価格は高騰している。

 果たしてこのブームがいつまで続くのか。またブームの反動で、旧車価格がこの先、急激に下がることはあるのか。

 日系旧車はいまだにブームの真っ只中。そのため将来の市場を予測することは難しい。

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