ボロボロのトヨタ車がウガンダで140万円で売れる本当の理由。日本の中古車は「異世界転生」している

日本車は日本国内での価値を失った瞬間、高コストの壁が存在しない海外市場へと越境し、第二の人生をあゆみ始める。

「走行距離10万キロを超えたら、その車の価値はゼロに近い」。日本の中古車市場で長年ささやかれてきたこの「常識」は、グローバルな視点で見れば、極めて特異で経済合理性を欠いたマーケットの歪みに他ならない。なぜ、本来であれば十分に走れるはずの車両が、これほどまでに早く「資産」から「廃棄物」へと転落するのか。その最大の要因は、世界的に見ても異質な「自動車検査登録制度(車検)」と、新車の回転率を上げたい産業構造にある。

日本車の「異常なまでの高コスト構造」

日本の車検は、単なる保安基準の確認という枠を大きく超えている。新車から3年、その後2年ごとに訪れるこの儀式は、数十項目におよぶ精査と、不適合箇所への強制的な修理を強いる。そこに重量税や自賠責保険といった高額な「公租公課」がセットでのしかかる構造は、フランスの約7000円、アメリカの数千円という検査費用と比較すれば、異常なまでの高コスト構造と言わざるを得ない。この「高すぎるハードル」が、日本のオーナーに「車検を通すくらいなら、新車に買い替えたほうが合理的だ」という、半ば強制的な判断を促してきたのである。

しかし、この厳しい制度こそが、実は海外市場における日本車の「最強の品質保証」となっている点は、皮肉な逆説である。日本の車検をクリアし続けてきた車両は、たとえ20年落ちであっても、定期的に消耗品が交換され、致命的な故障が放置されていない。つまり日本の車検制度は、中古車のコンディションを底上げし、海外バイヤーが安心して買い付けられる「標準化された高品質な商品」を量産する巨大なプラットフォームとして機能しているのだ。

加速される「スクラップ・アンド・ビルド」

udeyismail / Shutterstock.com

なぜ、技術が進歩して車の寿命が延びているにもかかわらず、日本の車検費用や維持コストは一向に下がらないのか。その答えは、日本の基幹産業である自動車メーカーが、国内市場において「新車の回転率」を維持しなければならない構造にある。

日本の自動車税制は、長く乗れば乗るほど優遇されるどころか、逆にペナルティが課される仕組みだ。新車登録から13年、あるいは18年が経過した車両に対しては、自動車税や重量税が段階的に増税される。これは世界的に見ても珍しい「古いものを大切にする者に厳しい制度」であり、環境負荷を名目に掲げつつも、実態としては消費者の視線を常に最新モデルへと向けさせるためのインセンティブとして機能している。

この高コストの壁は、単なる税収確保のためだけではない。メーカー側にとっても、国内市場が「30万キロ走る車」であふれかえってしまえば、新車の販売台数は激減し、世界をリードする開発投資のサイクルが止まってしまう。そこで、車検費用の高騰と増税という「経済的な寿命」を意図的に機械的な寿命よりも手前に設定することで、まだ十分に走れる高品質な車両を、強制的に市場外(海外)へ押し出す「トコロテン式」のような循環構造を作り上げているのだ。

つまり、日本のユーザーが直面している「高すぎる維持費」という壁は、自動車大国としての経済成長を維持するための必要経費として、システムに組み込まれたものだと言うことができる。我々が「新車への買い替え」というレールの上を走らされている一方で、そのレールからこぼれ落ちた「まだ走れる資産」は、日本国内での価値を失った瞬間、この高コストの壁が存在しない海外市場へと越境し、第二の人生をあゆみ始める。

「20万キロは慣らし運転」海外が日本のボロ車に熱狂する理由

Dwi cahyono12 / Shutterstock.com

日本の中古車オークション会場で、走行距離20万キロを超え、外装に無数の傷があるトヨタ・ハイエースが、驚くような高値で落札されていく光景は、もはや日常である。日本の一般消費者が「廃車費用を払わなければならない」と思い込んでいる個体が、国境を越えた瞬間に商品へと変貌する。

海外、特に新興国のバイヤーにとって、日本車の走行距離に対する感覚は我々とは根本的に異なる。「20万キロ?ようやく慣らし運転が終わったところだ」という言葉は、あながち誇張ではない。筆者が住んでいるハンガリーでも半数以上の中古車が20万キロを超えて販売されている。彼らにとって走行距離は重要な指標ではなく、心臓部であるエンジンが、あと30万キロ、50万キロと回り続けるならさして問題にならない。

この信頼を支えているのは、単なる「メイド・イン・ジャパン」というブランド神話だけではない。「世界で最も過保護に扱われた車両」という事実が、「ユーズド・イン・ジャパン」という付加価値を与えている。