AIは過熱化しすぎか“オーバースペック”に陥るテクノロジー

今年1月、世界最大のテクノロジーの見本市「CES2026」と、全米小売業協会(NRF)が主催する小売業界最大の展示会「NRF2026」が開催された。“AI一色”となった昨年に対し、今年は“AI過熱”に陥っている可能性があると指摘するのは、同イベントを10年以上定点観測している松浦学氏だ。最新トレンドを解説してもらった。

そのAI・技術 本当に役立つ?

2026年のCESはAIを前面に押し出した夢のある未来の新技術が数多く披露された。しかしその多くは、消費者視点では「オーバースペック」に陥っており、肝心の実用性やニーズが疑問視されるものだった。

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130インチ級の超高精細テレビ。技術的な驚きはあっても一般消費者には無用の長物になりかねない

たとえばスマート家電やデバイス分野では、折り畳み画面や130インチ級の超高精細テレビといった派手な展示があった。しかしそれらは技術的な驚きはあっても「これはだれが本当に買うものなのか」という視点で見ると、その多くが一般消費者には無用の長物になりかねない。実際、冷蔵庫に内蔵したセンサーが在庫切れを教えてくれるAI機能などは、一見すごいが、消費者にとって本当にありがたいかといえば余計なお世話ともいえる。YouTubeやNetflixを個人で、2倍速で楽しむコンテンツに移り変わっている時代に高額な大型・高精度画面は不要だろう。

また、人型の二足歩行ロボットが展示され注目を集めたが、センサーや情報処理、使用電力の多用でインフラ関連事業だけは売上、収益が成長し続けるが、流通業の現場にとって、投資と電気代・メンテナンスのランニングと満足いく生産性に到達するのは、まだ先になるだろう。現行の自動搬送ロボットや棚搬送システムで十分に実用化が進んだ今、ヒューマノイドまで導入する必要性は現段階ではない。

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人型ロボットは小売業が導入するには“オーバースペック”でコストが見合わない

総じて、CES会場は「技術のネタとしては面白いが大衆視点ではお金のにおいがしない」──すなわち、スケールするにおいが希薄な展示会だったともいえる。

リアル店舗のジレンマ

NRF2026もメーンテーマはAI活用で、CESと展示内容が混在するほど両者の境界は薄れている。こちらも革新的と呼べる新技術は乏しく、小売現場の効率改善に向けた地に足の着いたソリューションが中心だった。

たとえば電子ショッピングカートの最新モデルは、軽量化や収納力向上といった改良が見られた程度で、本質的には従来から形状も機能も大きく変わっていない。顧客体験を劇的に変えるような技術は見当たらず、「レシートの渡し方を顧客の好みに合わせる」程度の細かな工夫にとどまっていた。

むしろ注目したいのは、既存の店舗オペレーションとAI活用とのジレンマである。すなわち、AIを駆使して顧客にパーソナライズした情報提供や通販誘導を進めれば進めるほど、店舗に足を運ばせるために施す売場演出や集客策が自縄自縛に陥るという逆説だ。実際、店舗入口の華やかなディスプレーで衝動買いを促す従来の手法は、顧客がAIの提案に沿えば沿うほど効果は薄れ、店舗内動線もコントロールされれば、売場づくりの費用対効果の低下は避けられない。

このようにリアル店舗の意義が揺らぐなか、NRFではサプライチェーン上のムダ削減や在庫ロス低減といったバックヤードの効率化にも注目が集まった。とくに日本の流通現場で問題視される、メーカーや卸による過剰供給・大量廃棄の問題は、各社がデータを持ち寄りAIで需要を精緻に予測・調整することで解決できる可能性が示唆された。サプライチェーンの効率化について、派手さはなくとも実務的な革新が確実に進みつつあることがNRFの収穫であった。社会全体でリソース不足が明白な日本においては、個別企業で解決することなく、競争相手にデータを開示せずとも社会全体では最適なリソース配分ができる仕組みが実現する時代が来ている。

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ダイユーエイトは福島県初のホームセンター企業で、今年4月に50周年を迎えます。創業者の浅倉俊一氏(現会長)が1976年に裸一貫で立ち上げ、今では東北を代表するホームセンターチェーンになりました。資金繰りに苦労しながら多店舗展開していく日々、株式上場による飛躍、東日本大震災の試練…など、ダイユーエイトの道のりは平たんではありませんでした。ダイユーエイトの魅力を伝えられるように編集しました。

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AIが変える店舗運営

AI技術の実装モードへの突入により、小売業の店舗運営におけるヒトの役割も見直しを迫られている。ホームセンター(HC)を含む小売業において「中間管理職はほぼいらなくなる」だろう。その理由は、発注・在庫管理や販売分析といった定型業務はAIが担えるためだ。現場にはチームを率いるリーダー層さえいればよく、大規模な組織構造を再考する時期に来ている。

この傾向は実店舗だけでなくEC事業にも当てはまり、データ分析や需要予測といった高度スキル人材を大量に奪い合う必要性も薄れていく。AIやロボティクスが進む分、片方で使用電力や維持費用はかさむと述べたが、それでも自社にとって〝人でなければならない業務の再定義〞と人材配置とトレーニングを最適化する挑戦に今後も取り組み、諦めずに学び続ける企業が残るだろう。

HCが生き残る2つの道

では今年のCES/NRFを受けて、HC企業は何をすべきか。

AIの台頭とデジタル化の波は、HC業界にもその戦略転換を迫っている。HCは店舗面積の制約上、ECほど多数のSKU在庫を持てず、売場に並べる商品も厳選せざるを得ない。従来はカテゴリーごとの目玉商品を大きくディスプレーして訴求するVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)や、動線上で衝動買いやクロスセルを促す手法をとってきたが、手の中のスマートフォンで画像撮影や話しかけるだけで欲しい商品や最安値・納品時期、さらにはバンドル提案など即座に提示される時代において、売場演出作業に見合うリターンは低くなり続けるし、人手不足にも悩まされる。実際、来店客が日用品の買い足しついでに店頭ディスプレーを見て予定外の商品を衝動買いする──従来は当然視されていたこの購買パターンが、もはやデジタルによって「ぶち壊された」状態にある。体感的に関連購買を促す、連想力を不要とした技術により、リアルは不利な状況にある。

ではHCは今後何を価値として打ち出すべきか。免許保有者も減り続け、安価な自動運転の普及には時間がかかるなか、店舗への最寄性は低くなり、都市地方問わず、集客コストは跳ね上がり続ける。対応策の1つは“今すぐ欲しい”というニーズへの対応である。たとえば引っ越し直後の生活立ち上げやDIY作業の真っ最中など、顧客が即時に商品を必要とする場面では、関連品提案も含めてすぐに提供、お届けできる近隣店舗の地理的優位性は揺るがない。商品の良しあしももちろんだが、もっと大括(おおぐく)りの「困り事」の需要にフォーカスし、即応力、そしてECではどうしてもわかりづらい圧倒的な専門性や、質感の確認、接遇が問われる分野でECとの使い分け化を図る方向が考えられる。

また、現在の潮流の中で生き残る店舗像として「数は少ないがスペシャルティに特化した店舗」と「資金力のある企業が運営するHC」の2パターンになるだろう。前者は専門特化による差別化店舗、後者はネットとリアルを高度に統合し会員基盤を持つ大手企業の強みを生かすことができる。HC各社も、自社の客観的な強みを軸にどちらの道をめざすのか、つまり、やる・やらない戦略そのものを明確にする必要があるだろう(エリア戦略含む)。

データ活用でムダ削減へ

最後に、HC業界に限らず小売全般にかかわるサプライチェーン効率化の動きについても言及する。NRFで示唆されたように、メーカー・卸・小売・物流が販売データを共有しAIで需要を予測する仕組みが整えば、発注精度が飛躍的に向上し在庫の過剰や欠品を大幅に削減できる。特売やセール時期に社会全体の消費が偏り、その直後に需要が落ち込むような現象も、データを横断的に分析すればある程度予見して生産・供給計画に織り込むことが可能になる。こうしたデータの共有化こそ、AI活用にもつながり、流通全体の無駄排除は早々にやるべきだ。

ただし、その実現には企業間の垣根を越えたデータ連携と仕組みの構築が不可欠だ。業界横断の取り組みとしてどこまで実行できるか、他社には見られないルール整備、データの胴元はだれかの枠組みが課題となろう。

とはいえ、家賃を負担し、店頭の演出競争に傾注するより、まずは自社のサプライチェーン改革を主体的に行い、収益性と持続性の向上がHC業界にとって喫緊のテーマであることは間違いない。これは必ずしも何でもプライベートブランドを推進するということではない。

ダイユーエイトは福島県初のホームセンター企業で、今年4月に50周年を迎えます。創業者の浅倉俊一氏(現会長)が1976年に裸一貫で立ち上げ、今では東北を代表するホームセンターチェーンになりました。資金繰りに苦労しながら多店舗展開していく日々、株式上場による飛躍、東日本大震災の試練…など、ダイユーエイトの道のりは平たんではありませんでした。ダイユーエイトの魅力を伝えられるように編集しました。

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