1ドル=160円で「為替介入」発動か? 個人投資家が警戒すべき2026年「5つの経済シナリオ」

「4月利上げ」の線は薄い?, ドル/円相場は1ドル=160円が“防衛ライン”, 中間選挙に向けてトランプ大統領はがむしゃらに手を打つ, 対米投資は「第二弾」、「第三弾」と立て続けに発表される公算大, 新FRB議長は7月か9月に利下げに踏み切る?

1ドル=160円で「為替介入」発動か? 個人投資家が警戒すべき2026年「5つの経済シナリオ」

2月8日に行われた衆議院解散総選挙では、自民党が単独で3分の2超の議席を獲得するなど圧勝しました。これによって、株式市場では主に高市政権の政策への期待から株高が進行。また、ドル/円相場が一時大きく円高に振れるなど、為替市場にも大きな影響を与えています。

このように、大きなイベントや経済事象は金融市場を大きく動かす力を持っています。今回は、2026年に実施が予定されている、あるいは発生の可能性が高いイベントや事象について、現状の動向と、そのイベントや事象がもたらす結果を考察。あらかじめそれらを知り、自らの投資戦略に活用しましょう。

「4月利上げ」の線は薄い?

「4月利上げ」の線は薄い?, ドル/円相場は1ドル=160円が“防衛ライン”, 中間選挙に向けてトランプ大統領はがむしゃらに手を打つ, 対米投資は「第二弾」、「第三弾」と立て続けに発表される公算大, 新FRB議長は7月か9月に利下げに踏み切る?

【日銀利上げ】

2025年、日銀は1月と12月の2度にわたって利上げを実施しました。具体的には、金融機関同士が超短期で資金のやり取りを行う際の金利(無担保コールレート)の誘導目標を0.25%→0.5%(1月)、0.5%→0.75%(12月)への引き上げです。この利上げを背景に、短期金利、長期金利とも上昇傾向が強まりました。企業への貸出金利や住宅ローン金利が上昇するなど、実体経済にも影響が出ています。

直近のインタビューで、植田和男日銀総裁は「これまで実施した利上げの影響を細やかに点検し、今後も経済や物価の動向に応じて利上げを継続していく」との考えを明らかにしています。追加利上げの回数や時期についてはさまざまな意見が出ており、市場では「中立金利の下限付近までは上げるだろう」との見方が支配的です。

日銀は、景気が過熱したら金利を上げ、景気が悪化したら金利を下げることで、景気や雇用、物価をコントロールする役割を担っています。「中立金利」とは、景気を良くも悪くもしない金利水準のこと。現状、日銀は中立金利に対する見方や着地点を明らかにしていません。「1%超」と推測する金融機関もあれば、「2.5%程度」と試算する調査機関もありますが、「現状の政策金利は、まだ中立金利と開きがある」という点については一致しています。つまり、リーマンショックや感染症のパンデミックのような非常事態が発生しない限り、日銀が追加利上げに踏み切るのは確実な情勢と言っていいでしょう。

植田総裁の「経済や物価の動向に応じて」という発言からもわかるように、現時点で利上げのタイミングや回数を正確に予測するのはかなり困難です。ただ、ここまでの言動から、植田総裁が利上げに関して「企業の賃上げ動向」を重視していることは明らか。そう考えると、3月の「春闘」で企業の賃上げ姿勢が鮮明となれば、4月27日、28日の金融政策決定会合に向けて、追加利上げについての議論が熱気を帯びそうです。

一部で「高市首相が植田総裁との会談で追加利上げに難色を示した」などと報道されたことに加え、政府が提出した日銀審議委員のメンバー入れ替えの人事案で、金融緩和と積極財政を容認する「リフレ派」の人物が提出されたこともあり、「4月に利上げが行われる可能性は低い」との見方が浮上しています。いずれにしても、3月の春闘の結果と、4月の金融政策決定会合に向けた日銀の動きは要注目です。

ドル/円相場は1ドル=160円が“防衛ライン”

「4月利上げ」の線は薄い?, ドル/円相場は1ドル=160円が“防衛ライン”, 中間選挙に向けてトランプ大統領はがむしゃらに手を打つ, 対米投資は「第二弾」、「第三弾」と立て続けに発表される公算大, 新FRB議長は7月か9月に利下げに踏み切る?

【為替介入】

日銀の利上げと合わせて注目したいのが、財務省による「為替介入」です。為替介入とは、急激な為替相場の変動に対して、行き過ぎた円高を止めるなら「円売り・ドル買い」、円安を止めるなら「円買い・ドル売り」を行うこと。原資は財務省の「外国為替資金特別会計(外為特会)」です。直近では、2024年の4月~5月に約9.7兆円、同年7月~9月に約5.5兆円の円買い・ドル売り介入が行われました。ただ、過去のケースを見ると、日本単独による為替介入では、為替相場の中長期的なトレンドを変えるまでには至っていません。

2026年1月下旬、「日銀と米金融当局がレートチェックを行った」との報道が金融市場を駆け巡りました。「レートチェック」は、中央銀行が主要な金融機関に対して為替相場の照会を行うことで、“為替介入の準備段階”と言われています。注目は、今回のレートチェックが日銀だけではなく、ほぼ同時に米国側も財務長官のベッセント氏が主導する形で行っていたこと。先ほど、「日本単独による介入では効果は薄い」と述べましたが、日・米が同時に介入を行う「協調介入」となれば、話は変わってきます。

協調介入の例として最も有名なのが、1985年のプラザ合意でしょう。米国、英国、西独、フランス、日本5カ国の財務相と中央銀行総裁が、ドル高を是正するために米プラザホテルに集まり、各国が協調してドル売り・自国通貨買いを実施することで合意しました。このプラザ合意直後から、ドル/円相場は1ドル230円台から、翌年には150円台まで円高が進行。為替相場のトレンドが劇的に変わったわけです。

今回、米国側もレートチェックを行ったと判明したことで、金融市場は一時「日米の協調介入が実施されるかも!」との見方が噴出し、ドル/円相場は一時的に大きく円高に振れました。しかし、その後、ベッセント財務長官が「米国は“強いドル”政策を堅持しており、(円安を是正するための為替介入は)断じてない」と述べ、足元では日米協調介入の可能性が低いことが判明すると、為替相場では再びじりじりと円安ドル高が進んでいます。

今回のケースを通して、為替市場では「日本のドル円防衛ラインは1ドル=160円」「160円を超えても円安が続くようなら、少なくとも日本側は為替介入を実施する」という認識が広がりました。この記事を書いている2月末現在、ドル/円は1ドル=156円程度で推移しています。もし今後、1ドル=160円に接近する局面が訪れれば、再び為替介入が取り沙汰されるようになるでしょう。この場合、ポイントは「日本単独ではなく、米国との協調介入になるか」になりそうです。

中間選挙に向けてトランプ大統領はがむしゃらに手を打つ

「4月利上げ」の線は薄い?, ドル/円相場は1ドル=160円が“防衛ライン”, 中間選挙に向けてトランプ大統領はがむしゃらに手を打つ, 対米投資は「第二弾」、「第三弾」と立て続けに発表される公算大, 新FRB議長は7月か9月に利下げに踏み切る?

【トランプ関税と米中間選挙】

2025年、世界各国を混乱の渦に陥れた「トランプ関税」。2月20日、米国の最高裁判所はトランプ関税のベースである国際緊急経済権限法(IEEPA)による関税措置を「違法」とする判決を下しました。最高裁は徴収された推計1750億ドルの関税の返還方法には言及していませんが、2月24日以降、IEEPAを根拠にした関税徴収ができなくなります。

そこでトランプ大統領は、今度は「法律が『根本的な国際収支問題』と定める状況に直面した場合、大統領が関税を課す権限を与える」とする通商法122条を持ち出し、世界各国に10~15%の関税を課す制度を発動。この通商法122条を元にした「新トランプ関税」には、これまでのトランプ関税とは明確に違う点があります。それは、「関税率の上限が15%」であること、「適用期間が最長で150日」であること、150日を過ぎると、「その関税を維持するのに議会の承認が必要」なことの3つ。同関税がスタートしたのは2月24日なので、これに「最長150日を当てはめると、同関税の期限は2026年7月24日です。

2026年は、6月11日からFIFAワールドカップ2026の本大会グループステージがスタートし、決勝は7月19日を予定しています。世界は、サッカーワールドカップ決勝の熱狂冷めやらぬ中で新トランプ関税の期限を迎えることになりそうです。当然、トランプ大統領は期限前に別の手を打ち出してくると予想されますが、足元で行われている日本の特別国会の会期は7月17日まで。会期が延長されない限り、トランプ大統領の“次の一手”に対して、国会審議が必要な対策は講じられないでしょう。

最高裁の判決後、トランプ大統領は自らのSNSで「最高裁は、ほかにも数多くの関税を承認している」「当初の関税よりも、はるかに強力かつ不快な方法で、法的な確実性をもってそれらを活用できる」と投稿しています。この投稿や、トランプ大統領のこれまでの言動を踏まえると、期限後もあらゆる手を駆使して関税を徴収する方法を取ってくることが予想されます

米国は、2026年11月3日に中間選挙を控えています。トランプ大統領の支持率が過去最低レベルにまで下がっていることを考えると、トランプ大統領はこの選挙に向けて、米国にとってプラスと考える政策をがむしゃらに打ってくるでしょう。

2026年も、世界は「新トランプ関税」という不確実性の嵐に巻き込まれることは間違いなさそうです。

対米投資は「第二弾」、「第三弾」と立て続けに発表される公算大

【日本の対米投資】

「4月利上げ」の線は薄い?, ドル/円相場は1ドル=160円が“防衛ライン”, 中間選挙に向けてトランプ大統領はがむしゃらに手を打つ, 対米投資は「第二弾」、「第三弾」と立て続けに発表される公算大, 新FRB議長は7月か9月に利下げに踏み切る?

2025年10月下旬のトランプ大統領の訪日時、日米政府は共同で日米間の投資に関する計画を発表しました。今月17日、トランプ大統領はその第一弾として「データセンター向けの天然ガス火力発電」と「原油輸出インフラ」、「人工ダイヤモンド製造施設」の3プロジェクトを発表。ガス発電所の事業規模は約330億ドル(約5兆1150億円)、原油輸出施設は21億ドル(同3255億円)、人工ダイヤは6億ドル(930億円)となる見込みです。

日本の株式市場では、第一弾に関連する銘柄が物色される一方、次世代原発の建設など第二弾以降のプロジェクトを予想して、先回り買いをする動きも見られます。前述したように、米国は11月に中間選挙を予定しており、現時点で旗色が悪いトランプ大統領は、中間選挙に向けて関税以外で支持率を上げようと、あの手この手を打ってくることが予想されます。日本の「5500億ドル(約85兆円)規模の対米投資」もそのひとつに含まれるでしょう。その点で、今後は第二弾以降の具体的なプロジェクトが矢継ぎ早に打ち出される可能性が高いと思われます。

対米投資に関しては、「日米投資に関する共同ファクトシート」にプロジェクトの事業規模やプロジェクトに関心を寄せる企業名が公表されているので、個人投資家であれば一度目を通しておくべきでしょう。休みの日に、ファクトシートを読み込んで「次はこのテーマ、銘柄が来るはず」などと、あれこれ考えを巡らせてみてはいかがでしょうか。

新FRB議長は7月か9月に利下げに踏み切る?

【米利下げ】

現在、多くの投資家が関心を寄せるのが「米FRB(連邦準備制度理事会)がいつ利下げに踏み切るか」という点です。現状、米経済は成長率が減速する一方、個人消費や雇用、消費者物価などは堅調に推移しています。米政府機関閉鎖の影響で雇用統計など一部重要指標の発表に遅れが生じていることは懸念すべき材料のひとつではありますが、以前から指摘されてきた「AIバブルの崩壊による株式相場の暴落」は、まだ起きていません。AIバブルの命運を握るのは米半導体メーカーのエヌビディア。2月26日に発表された決算では、引き続き市場予想を上回るなど好調を維持しており、目先はAI関連銘柄の相場が大崩れすることはなさそうです。

トランプ大統領は膨らみ続ける政府債務の負担軽減を理由に、パウエルFRB議長に対して再三再四、利下げを要求してきました。この利下げ圧力に対して、「トランプ大統領は金融行政の独立性を軽視している」と、世界中から批判されています。そんな中、トランプ大統領は1月30日、5月に任期を終えるパウエル議長の後任にケビン・ウォーシュ氏を指名しました。

ウォーシュ氏は、2006年から2011年にFRBで理事を務め、2008年のリーマンショックが収束した後も金融緩和を続ける当時のバーナンキFRB議長を批判するなど、いわゆる「タカ派」として知られています。とはいえ、2018年には利上げや量的引き締め策を停止すべきと主張するなど、常にタカ派というわけではないもよう。どちらかというと、「現状に即して柔軟な金融政策を取る」スタンスと考えて良さそうです。

もっとも、ある日本の為替業界の重鎮は「トランプ大統領は、ウォーシュ氏との面談を経て次期FRB議長に指名した。当然、ウォーシュ氏はトランプ大統領の利下げ要求について認知しており、その上で次期議長に指名されたということ。この経緯を考えると、ウォーシュ氏が一度も利下げを行わないとは思えない」と指摘。これは、かなり腑に落ちる分析と言えるのではないでしょうか。

ウォーシュ氏が就任してから初めてのFOMC(連邦公開市場委員会)は6月16日、17日。その後の開催日程は、7月28日・29日、9月15日・16日、10月27日・28日、12月17日・18日です。就任直後の6月に利下げに踏み切った場合、世界から「FRBはトランプに屈した」と批判される可能性があり、ウォーシュ氏としても就任直後から悪評が広がるのは避けたいはず。前述したFRB議長就任の経緯とトランプ大統領の意向を考えると、「7月以降、11月の中間選挙前」、つまり7月か9月に、利下げに踏み切る可能性が高いと思われます。

市場でFRBが利下げを行うとの認識が広がれば、為替相場では円高・ドル安圧力が高まるはずです。もちろん、6月以降の米経済や金融市場の動向次第で状況は変化しますが、このシナリオは頭の片隅に置いておくべきでしょう。