粉飾決算、所得隠し…減少でも止まらぬ巨額「コンプラ違反倒産」の実態
帝国データバンクの調べによれば、意図的な法令違反や社会規範・倫理に反する行為を原因とした「コンプライアンス違反」倒産(法的整理、負債1000万円以上)は、2025年に278件発生した。前年(391件)から113件(28.9%)減少し、4年ぶりに前年を下回った。一方で、負債額の大きいコンプラ違反倒産は引き続き目立ち、2025年に発生した倒産における負債額上位20社のうち、半数近い9社がコンプラ違反倒産であった。(帝国データバンク大阪支社 情報部情報課長 内藤 修)
約30億円の所得隠しで信用が悪化
経営破綻したドローンネット

ドローンネットが入居していたビル(帝国データバンク撮影)
ドローン・マイニング装置の開発販売を手がけていた「ドローンネット」(東京都千代田区)は、2025年12月17日に東京地裁へ自己破産を申請し、翌18日に破産手続き開始決定を受けた。負債総額は約1444億9483万円で、2025年最大の倒産となった。
同社は、2017年3月に設立され、ドローン機体や付帯するアクセサリの企画・開発を行っていた。専門のポータルストアでの販売やインストラクターを育成するスクール運営を手がけ、産業向けの「DRONE the WORLD」とコンシューマー向けの「SKY FIGHT」の2ブランドでFC展開していた。
投資家向けに暗号資産の取引チェックを行うマイニング装置の販売も手がけ、ドローンネットが管理して利益の一部を暗号資産で投資家に還元するほか、その後、販売価格とほぼ同価で装置を買い取るビジネスモデルを展開。2025年2月期には年収入高約977億4200万円(会社公表値)を計上していた。
しかし、マイニングマシン販売において国税局から約30億円の所得隠しを指摘され、2024年2月期に対する重加算税を含め約8億円の追徴を受けるなど、信用が急速に悪化。2025年11月に支払い不能となるなか、12月には実質経営者が死去したことで事業の継続が困難となり、破産手続きに追い込まれた。
2026年に入ってからも、ドローンネット破綻の余波が広がっている。亡くなった実質経営者の支配下にあったと見られる会社をはじめ、時間の経過とともに、連鎖倒産も発生している。2月16日には、社債を発行することでグループの資金調達を行っていたとされる「福島建設資材」(福島市) など、関係会社4社が破産手続き開始決定を受けた。4社合計の負債総額は約379億7788万円にのぼった。
4社の中にはドローンネットから貸し付けを受けていた企業もある。一部では、それぞれの社債償還のために「資金を融通しあっていたのでは……」との話もあるようだ。今後、別の関係会社でも連鎖倒産に至る可能性は十分ある。
循環取引による粉飾決算が
発覚したオルツ
2025年夏に発生した、新興AIスタートアップ「オルツ」(東証グロース上場)の粉飾倒産も、市場関係者を中心に大きな話題を集めた。同社は、2014年11月に設立され、高精度自動文字起こしソリューション「AI GIJIROKU」などの開発・販売を手がけていた。主力の「AI GIJIROKU」は、生成AIを利用した高精度の音声認識と日本語最高精度のLLM(大規模言語モデル)を組み合わせ、2020年1月にリリースしたサービスだった。
30カ国語に対応し、リアルタイムで社内会議のテキスト化・要約などが可能なほか、業界別専門用語の認識機能も強化され、数多くの大手企業も導入。これまで調達した資金は累計100億円、導入企業数は9000社突破と公表していた。
2020年12月期に約5500万円だった年収入高(単体)は、利用者の増加や知名度の向上に伴い2023年12月期には約41億1100万円(同)まで伸ばし、2024年10月に東証グロース市場に株式上場を果たした。初の連結決算となる2024年12月期の年収入高は約60億5700万円(会社公表値)となっていたが、開発業務の外注費やサービス開発・人材投資などの費用が嵩み赤字決算が続いていた。
こうしたなか2025年4月、「AI GIJIROKU」の有料アカウントに関して、一部の販売パートナーから受注した売り上げについて、実際に利用されていないなど売り上げが過大に計上されている可能性が認められたとして、第三者委員会の設置および2025年12月期第1四半期決算の発表を延期していた。
さらに6月には、実態のない架空取引を繰り返す循環取引で売り上げを水増しして、有価証券報告書などに虚偽記載をした疑い(金融商品取引法違反の疑い)で、証券取引等監視委員会が本社や関係先を強制調査していたことが報じられた。7月には2024年12月期までの4期の売上高について、最大9割が循環取引による過大計上だったと第三者委員会に認定されるなか、7月30日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請。負債は約16億636万円(確定再生債権額)にのぼった。
大型の粉飾倒産が
高水準で推移
帝国データバンクでは、コンプライアンス違反が取材により判明した企業の倒産を「コンプライアンス違反倒産(コンプラ違反倒産)」と定義し、発生状況について定期的に調査・分析を行っている。
2025年は4年ぶりの減少に転じたものの、依然としてコロナ禍前を上回る高い水準が続いた。違反類型別でみると、意図的に決算書を虚偽表示する「粉飾」が74件(前年比23.7%減)で最も多かった。粉飾についても件数自体は減少したものの、負債10億円以上の大型の粉飾倒産は高水準で推移している。
次いで、各種補助金に関する「不正受給」が48件(同2.0%減)で続いた。労働安全衛生法違反や指定取消などの「業法違反」(44件、同38.9%減)は、これまで業法違反倒産の多くを占めていた運送業の減少が主な要因とみられる(2024年=25件、2025件=12件)。
コンプラ違反の手口は年々巧妙化しており、外部から見抜くことは困難なケースが多い。加えて、複数の金融関係者は「倒産には至っていないが、粉飾をはじめコンプライアンスに抵触する事案は数多く発生している」と話す。足元ではコンプラ違反倒産は減少傾向にあるものの、平時からの定期的かつ細やかなモニタリングが、企業規模を問わず引き続き求められる状況に変わりはない。