「迷惑施設」なのに「無法状態」…データセンター立地問題、次々と法廷闘争に 東京都は対策に乗り出したが

 千葉県印西市の北総鉄道北総線・千葉ニュータウン中央駅前のデータセンター(DC)建設計画を巡り、近隣住民らが、県に代わる検査機関が行った建築確認は違法だとして、取り消しを求める訴訟を千葉地裁に起こした。住民らは、DCに関する法制度の不備や説明責任を果たそうとしない事業者の対応に警鐘を鳴らす考えだ。各地で反対運動が相次ぐ中、DCの最大需要地である東京都がようやく対策に着手した。(中根政人)

◆「駅前DC」を巡り対立が続く千葉・印西

◆「駅前DC」を巡り対立が続く千葉・印西, ◆事業者側は施設を「その他(データセンター)」に分類, ◆提訴した近隣住民は「工場もしくは倉庫」と指摘, ◆「DCが何なのか、法律上の解釈を確定する必要がある」, ◆官民一体で建設に反対していたが, ◆千葉・白井でも建設許可取り消しを求めて住民が提訴, ◆東京都、好事例を整理したガイドラインを策定へ, ◆有事の際には標的にされるリスクも, ◆「環境基準をつくり、国や自治体の指導監督が必要」との声

8日、千葉ニュータウン中央駅前のDC建設予定地で抗議活動をする住民ら=千葉県印西市で(中根政人撮影)

 「多くの市民が住み、人の往来も多い駅前でDCの建設が認められてしまえば、都市計画上のあしき前例となってしまう。今後どのような場所でもDCが建設できてしまうのではないかと危惧する」

 5日午後、千葉市中央区の千葉県弁護士会館で開かれた記者会見。印西市の事実上の中心部に位置付けられる千葉ニュータウン中央駅前のDC事業に反発して千葉地裁に同日、建築確認の取り消しを求めて提訴した原告の谷川宗和さん(53)は、悲痛な思いを吐露した。

◆事業者側は施設を「その他(データセンター)」に分類

 千葉ニュータウン中央駅から北側に徒歩で5分程度。大型ショッピングモール東側の空き地で計画されているDCの規模は地上6階建てで高さ52.7メートル、延べ床面積は約3万平方メートル。「印西ファイブ特定目的会社」(東京都千代田区)が事業者だ。

 事業者側は、建築基準法上の建築物の用途を「その他(データセンター)」と分類し、県に着工のための建築確認を申請。県に代わって審査した民間の指定確認検査機関「日本ERI」(東京都港区)が1月27日に事業者側の申請を認めた。現状では、今月中旬に工事が始まる可能性がある。

◆提訴した近隣住民は「工場もしくは倉庫」と指摘

◆「駅前DC」を巡り対立が続く千葉・印西, ◆事業者側は施設を「その他(データセンター)」に分類, ◆提訴した近隣住民は「工場もしくは倉庫」と指摘, ◆「DCが何なのか、法律上の解釈を確定する必要がある」, ◆官民一体で建設に反対していたが, ◆千葉・白井でも建設許可取り消しを求めて住民が提訴, ◆東京都、好事例を整理したガイドラインを策定へ, ◆有事の際には標的にされるリスクも, ◆「環境基準をつくり、国や自治体の指導監督が必要」との声

 人工知能(AI)などの情報処理で活用されるDCには、サーバーが多数配置され、停電した場合の非常用発電機や燃料の重油なども配備される。外部の企業に機器やスペースを貸し出す機能を備える場合もあることから、原告らはDCが「工場もしくは倉庫にあたる施設だ」と主張している。

 千葉ニュータウン中央駅の周辺地区では、地区計画を基に建築可能な建物を制限する市の条例を適用して「工場」や「倉庫業を営む倉庫」の建築を禁じており、日本ERIの建築確認に関する審査は、市が建築物の種類を制限できる根拠となっている建築基準法に違反すると指摘する。

◆「DCが何なのか、法律上の解釈を確定する必要がある」

 日本ERIを相手取った今回の訴訟では、周辺住民のうち10人が原告となった。谷川さんは「私たちだけの問題ではない。誰にでも起こりうる『今そこにある危機』だ。住民不在のまま、自分の家の隣にDCが建てられてしまうかもしれない」とも語った。

 原告の服部吉宏さん(69)は、DCが「人の出入りを徹底的に制限した巨大な情報処理工場だ」と述べた上で、周辺住民に説明責任を果たしてこなかった事業者側の問題にも言及。「計画の進め方に対しても大いなる疑問と怒りを持っている。計画ができた段階で情報をオープンにして、みんなでよく議論し、街全体にとってよい施設になるように話し合うべきだ」と語気を強めた。

◆「駅前DC」を巡り対立が続く千葉・印西, ◆事業者側は施設を「その他(データセンター)」に分類, ◆提訴した近隣住民は「工場もしくは倉庫」と指摘, ◆「DCが何なのか、法律上の解釈を確定する必要がある」, ◆官民一体で建設に反対していたが, ◆千葉・白井でも建設許可取り消しを求めて住民が提訴, ◆東京都、好事例を整理したガイドラインを策定へ, ◆有事の際には標的にされるリスクも, ◆「環境基準をつくり、国や自治体の指導監督が必要」との声

5日、記者会見で訴訟への思いを語る原告の谷川宗和さん(右)や服部吉宏さん(左)ら=千葉市中央区の千葉県弁護士会館で(中根政人撮影)

 原告代理人の及川智志弁護士は、事業者が無秩序に計画することで住民との紛争が相次ぐDC建設のあり方や、DCの法的な定義を明らかにすることが訴訟の最大の焦点だとの認識を示した。「現在の日本の法制度では、DCが位置付けられていない。だが、法の不備によって住宅地の中に建てられる事例が多く出ている。そうしたことを止めるためには、DCが一体何なのか、法律上の解釈を確定する必要がある」

◆官民一体で建設に反対していたが

 印西市の「駅前DC計画」を巡って、周辺住民の怒りや反発はなぜここまで高まったのか。

 問題が噴出したのは昨年4月、建設事業が突然公表されたことがきっかけだった。当時、同市の藤代健吾市長がX(旧ツイッター)で「地域の状況にふさわしい施設が整備されるべきであり、それはデータセンターではないと考えています」と異論を唱えたことで、周辺住民らは住民運動団体「タウンセンター地区の活用について考える会」を発足させた。住民側にとっては、反対運動は「官民一体」との思いがあった。

 だが昨年12月、市が事業者側と建設準備のための協議書を結んでいたことが明らかに。藤代氏も「白紙撤回は難しい」と建設容認に転じる姿勢を示したことで、着工への動きが加速するとの危機感が強まり、今回の提訴につながった。

◆千葉・白井でも建設許可取り消しを求めて住民が提訴

 一方で計画内容に関する事業者側の説明は不十分なまま。周辺住民にとって、サーバーを冷やす空調設備からの排熱や騒音、DCの建物の高さがもたらす日照権の問題、景観の破壊などで「健康で文化的な生活」が侵害されるとの懸念が払拭されることはなかった。

 首都圏を中心に表面化しているDC建設への反発の動き。千葉県内では、印西市に隣接する白井市でも、富ケ谷地区に建設中のDCを巡り、市の建設許可は都市計画法違反にあたるなどとして取り消しを求める訴訟が千葉地裁で係争中だ。

◆東京都、好事例を整理したガイドラインを策定へ

 そうした状況の中、DCの恩恵を最も受ける東京都が、DC建設問題への政策的な対応に乗り出した。

◆「駅前DC」を巡り対立が続く千葉・印西, ◆事業者側は施設を「その他(データセンター)」に分類, ◆提訴した近隣住民は「工場もしくは倉庫」と指摘, ◆「DCが何なのか、法律上の解釈を確定する必要がある」, ◆官民一体で建設に反対していたが, ◆千葉・白井でも建設許可取り消しを求めて住民が提訴, ◆東京都、好事例を整理したガイドラインを策定へ, ◆有事の際には標的にされるリスクも, ◆「環境基準をつくり、国や自治体の指導監督が必要」との声

2月18日、都議会本会議で施政方針を述べる小池百合子知事(手前)=奥野斐撮影

 小池百合子知事は2月18日、都議会での施政方針表明で、DCに関して「デジタル都市を支えるインフラ」と存在価値の高さを強調した上で「事業者と住民の円滑な対話のポイントや、事業者との調整の目安となるような好事例を整理したガイドラインを策定する」と表明。DCの施設面でのエネルギー効率などを評価する認定制度を創設するほか、DCの立地などの情報を早期に把握する仕組みも整えると述べた。

◆有事の際には標的にされるリスクも

 新たなガイドラインは今月中の策定を目指す。都の担当者は「地域の皆さんとのコミュニケーションで難しくなっている面があることも承知している」と最近の情勢に触れた上で「まちづくりとの整合を図って立地させていくことが大事だ」と策定理由を説明する。

◆「駅前DC」を巡り対立が続く千葉・印西, ◆事業者側は施設を「その他(データセンター)」に分類, ◆提訴した近隣住民は「工場もしくは倉庫」と指摘, ◆「DCが何なのか、法律上の解釈を確定する必要がある」, ◆官民一体で建設に反対していたが, ◆千葉・白井でも建設許可取り消しを求めて住民が提訴, ◆東京都、好事例を整理したガイドラインを策定へ, ◆有事の際には標的にされるリスクも, ◆「環境基準をつくり、国や自治体の指導監督が必要」との声

5日、DCの建設差し止めを求めて抗議活動をする住民ら=千葉市中央区で(中根政人撮影)

 DCに関しては、有事の際の「軍事目標」となるリスクも顕在化している。米国とイスラエルによるイラン攻撃を受けた戦闘の拡大で、米IT大手アマゾン・コム傘下のクラウド事業「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」は2日、アラブ首長国連邦(UAE)とバーレーンのDC計3カ所がドローンの攻撃で被害を受けたと発表。日本でも、周辺住民の不安要素がさらに増えた形だ。

◆「環境基準をつくり、国や自治体の指導監督が必要」との声

 DCの建設計画が首都圏へ過度に集中する状況を打開しようと、政府は地方への立地分散を目指す。だが、DCの事情に精通する国立情報学研究所の佐藤一郎教授は、DCの施設と利用者の距離が遠い場合に「通信遅延」が大きくなり、情報処理の精度が低下する問題を指摘。「AIの活用が広がり、通信遅延に対して事業者は神経質になっている。そのため、通信網が整っている大都市圏でのDCの需要がどうしても高くなってしまう」と、地方立地の難しさを挙げる。

 建設計画に関する事業者と住民の紛争を未然に防ぐためには「DCに関する環境基準をつくり、国もしくは自治体が事業者を指導監督することが必要ではないか」と提言。AIブームでDCの計画数がやみくもに膨らむ中、電力を大量消費するDCの「適正な数も考えていかないといけない」と訴える。

◆デスクメモ

 DCの実態は市の地区計画で建築が認められていない工場か倉庫であり、建築確認は違法だ。実態に即してDCを定義すべきだ──。印西市のDC建設計画を巡る訴訟での近隣住民らの主張は、DC建設に関する法制度の不備を浮き彫りにしている。今後の司法判断を注視していきたい。(ぶ)

【関連記事】"印西の駅前データセンター計画 「違法な建築確認」住民提訴 検査機関に取り消し求める 「認めればあしき前例に」

【関連記事】"白井・富ケ谷のデータセンター建設許可 取り消し求め市を提訴 住民の弁護士「安全か問いたい」

【関連記事】"小池百合子知事「震災の教訓、次の世代に継承することが重要だ」 東日本大震災からまもなく15年