イラン「シャヘド戦争」で、ドローンメーカー各社に「空前の商機」到来の一方、中国の動向に懸念も

迎撃ドローンを手にする、ウクライナ第208ヘルソン防空ミサイル旅団「ハンター」部隊の兵士。
- ドローンメーカー各社は、イラン戦争によって、低価格の迎撃ドローンに対する関心が急激に高まっていると明かした。
- ドローン企業はBusiness Insiderに対し、突如として起きた爆発的な需要増に追いつけなくなる可能性が高いと語った。
- 彼らによると、自国の重要インフラを守ろうとする湾岸諸国からの問い合わせが大半だという。
アメリカ・イスラエル対イランの戦争が中東全域で激化し、世界の市場を混乱させているなか、「ドローンを迎撃するためのドローン」を製造する一部のメーカーがこの紛争に商機を見出している。
中東からの引き合い「開戦後は毎日」
中東域外の迎撃ドローンメーカー各社はBusiness Insiderに対し、過去1週間でデモンストレーション(実演)の依頼や購入の問い合わせが急増していると明かした。アメリカとその同盟国がイランの徘徊型兵器(ターゲットの上空を待機・徘徊して攻撃する自爆型ドローン)への対応に追われているからだ。
「以前は月に1、2回程度だった中東からの問い合わせが、開戦後は毎日来るようになった」
そう語るのは、ノルディック・エア・ディフェンス(Nordic Air Defense)の事業開発ディレクター、イェンス・ホルツァプフェル(Jens Holzapfel)氏だ。スウェーデンのスタートアップである同社は、プロペラ駆動型の迎撃ドローン「クルーガー100XR(Kreuger-100XR)」を開発しており、現在ウクライナで実証テストを行っている。
各社によると、ヨーロッパ各国からもコンタクトはあるものの、新たな問い合わせは湾岸諸国の政府や各国の国防省と連携する機関から寄せられるものが圧倒的に多いという。
ドローン購入の目的が変化している
台湾のトロン・フューチャー(Tron Future)の広報担当ミーシャ・ルー(Misha Lu)氏によれば、4つのプロペラを持ち、敵に体当りして破壊する使い捨てのクワッドコプター迎撃機や、空中で網を撃ち出して墜落させるネット発射ドローンなど、同社の対ドローン製品に対する海外からの問い合わせは、開戦以来「事実上、倍増している」という。
ルー氏によると、ほぼすべての見込み客が、空港や送電網といった重要インフラを守る手段を求めているとのことだ。
また、購入希望者の関心が、ジャマー(電波妨害装置)による対ドローン対策から、爆発物や物理的な力でドローンを直接破壊する「ハードキル(物理的破壊)」ソリューションへと大きくシフトしていることも明らかにした。
ハードキル型対ドローン技術への需要が高まっているのは、イランが湾岸地域のアメリカとその同盟国に対し、何千機もの自爆型ドローン「シャヘド(Shahed)」を発射し続けているからだ。この徘徊型兵器の一部は防空網をかいくぐり、アメリカ軍施設などの標的を攻撃することに成功している。
シャヘドの脅威に対する防空において、最大の懸念事項となっているのが「コスト」と「数量」だ。従来の空対空ミサイルや地対空ミサイルは供給量が限られており、1機あたり2万〜5万ドル(319万〜797万5000円、1ドル=159.5円)のシャヘドを迎撃するために大量に使うには、あまりにもコストがかかりすぎるのだ。
ウクライナ製ドローンの引き合い急上昇

ロシアがウクライナに対する爆撃に使用して以来、イラン製ドローン「シャヘド」は長年にわたって西側諸国の懸念対象となってきた。
より低コストの解決策として、ウクライナが先駆けて開発したのが、FPVドローン(搭載カメラの映像をリアルタイムで確認しながら遠隔操作する小型機)や小型ドローンを使ってシャヘドを捕捉し、体当たり攻撃をする方法だ。
人気の迎撃ドローン「スティング(Sting)」を製造するウクライナのメーカー、ワイルド・ホーネッツ(Wild Hornets)はBusiness Insiderに対し、以前は1日1〜2件程度だった引き合いが、3月に入ってから「1日数十件」に達していると語った。
スティングの大部分はいまも、ウクライナがロシア国産版のシャヘドを撃退するために製造されている。ウクライナ政府によると、ロシアはこれまでに5万7000機超のシャヘドを発射しているという。
激増する新たな問い合わせについて、ワイルド・ホーネッツの広報担当者は「それらはあくまで要望であって、我々が(取引に)合意したわけではない。我々の最優先事項はウクライナの防衛だ」と語った。
ウクライナのジレンマと今後の行方
同じくウクライナの大手ドローンメーカー、スカイフォール(Skyfall)は3月初旬、海外から迎撃ドローンの要請を受けており、ウクライナ国内の需要に支障をきたさない範囲で月に最大1万機輸出が可能だとロイターに語っている。
ただし、ウクライナ企業が現時点でそうした輸出契約を締結するのは難しいかもしれない。無人航空機システム(ドローン)は自国の戦術的な戦闘作戦の柱となっており、ウクライナの戦時法ではドローンの国外輸出が原則禁止されているからだ。

ワイルド・ホーネッツは、現在ウクライナで使用されている人気の迎撃ドローン「スティング」を製造している。
しかし、この輸出禁止措置が今後も続くかどうかは不透明だ。ウクライナ政府は新興の防衛テクノロジー市場を育成する目的で、国の管理下で輸出を行う可能性を模索してきた。同時に、戦時下における生産の専門知識や、実戦を通じて兵器をテスト・改良できるという自国の強みを積極的にアピールしている。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelenskyy)大統領もまた、シャヘド対策に関する支援や専門知識を求める湾岸諸国などの同盟国に対し、協力する用意があることを繰り返し示している。
ただしこれまでのところ、ゼレンスキー大統領はウクライナ政府が中東に専門家を派遣している事実を認めただけで、ドローンの輸出販売には言及していない。
他国メーカーも「対応できないほどの需要」
一方、ウクライナ以外の国の迎撃ドローンメーカーにとっては、この突然の需要増はあまりにも巨大で、大多数の企業は急増する引き合いに対応しきれるかどうか確信を持てずにいる。この技術自体がまだ比較的新しいため、生産ラインを十分に構築しきれていない企業もいるからだ。
ラトビアに拠点を置くオリジン・ロボティクス(Origin Robotics)のCEO、アギルス・キプルス(Agirs Kipurs)氏はBusiness Insiderの取材に対し、同社はすでに既存の契約履行に取り組んでおり、「需要のごく一部」にしか応えられない可能性があると語った。
「我々は生産規模を拡大し、生産体制をフル稼働させる準備を進めている段階のため、当然ながらすべての要請に応えることはできない」とキプルス氏は述べた。同社はウクライナに配備されているドローンや、北大西洋条約機構(NATO)軍が使用する自律型迎撃機を製造している。
また、チェコのTRLドローンズ(TRL Drones)は最近、ウクライナで使用されている固定翼の迎撃ドローン(短距離用ドローンと、より大型のジェット推進システム)に対する引き合いが1日に複数件寄せられている、と同社の担当者イジー・ヤノウシェク(Jiří Janoušek)氏は明かした。
彼によると、TRLドローンズは新たな引き合いに対応すべく生産能力を増強しているものの、「舞い込んでくる案件を慎重に優先順位をつけざるを得ない」状況にある。具体的には、自社が求める運用要件を把握し、迅速に取引を進められる顧客を優先しているとのことだ。
「ウクライナに対する支援は引き続き我々の最優先事項であり、生産能力の一部はそのために充てている」とヤノウシェク氏は付け加えた。
中国部品メーカーの動向に懸念高まる
台湾企業トロン・フューチャーのルー氏も、寄せられるすべての引き合いに「全力で対応中」だが、まだ生産規模を拡大している途上にあると語っている。

台北の航空宇宙・防衛展示会に展示されたトロン・フューチャーの迎撃ドローンの1つ。
彼によれば、台湾や東アジアからの需要も最近になって倍増しており、台湾の法執行機関や軍事機関からの引き合いはすでに2桁(数十件)に達しているという。
ルー氏は、「Loong M9」や「Feilong 300D」といった中国独自のデルタ翼(三角翼)ドローンに対する懸念があると語る。いずれもイラン製の自爆ドローン「シャヘド136」に告示している。
中国の産業界は長年、ウクライナ戦争の当事国双方(ロシアとウクライナ)にドローンの部品を長年供給してきた。そのため、人民解放軍は確実にウクライナの戦場から学んでいるはずだとルー氏は指摘し、次のように語った。
「もし台湾有事が起きた場合、さまざまなクラスの低価格ドローンがミサイルと入り混じって飛来するという、イラン戦争と同様の『飽和攻撃』が展開されることになるだろう」