「第三次オイルショックのよう」でも日本は心配不要?過去から学んだ『3つの危機回避策』 一方で中東に今後“新たな火種”か…覇権争いは石油から天然ガスへ?【イラン情勢】
「史上最大の危機」ガソリン平均小売価格は190.8円に
ホルムズ海峡“封鎖”により混乱が続く石油情勢。全国のガソリン平均小売価格は先週の発表より29円値上がりして、レギュラー1リットルあたり190.8円となり、史上最高値を記録しました(3月16日時点 資源エネルギー庁発表)。
過去に2度オイルショックを経験している日本ですが、今回の事態を「史上最大の危機」と見る専門家も。一方、当時とは大きく異なる事情もあるようです。
今私たちが直面している「石油危機」。過去を教訓にした3つの対策とは?未来の安心に向けて何ができるのか?ポスト石油戦略研究所・大場紀章代表に聞きました。
過去の石油危機では「わずか数%」現在は「20%」

石油輸送の要衝・ホルムズ海峡が事実上“封鎖”され、ガソリン価格は史上最高値を記録。私たちの生活にも影響が出ていますが、日本は過去に2度同じような経験をしています。
1度目は1973年~74年の「第一次オイルショック」です。第四次中東戦争の勃発でアラブ産油国が石油輸出を規制し、原油価格が3か月で4倍に。「紙が不足する」といった日用品への不安や噂が広がり、トイレットペーパーの買い占め騒動など大混乱が起こりました。
2度目は1978年~82年の「第二次オイルショック」。イラン革命の影響で原油の生産量が激減し、価格高騰が長期化。経済停滞により多くの企業で労働者の解雇が相次ぎました。
この時、産油国の禁輸・生産停止で減少した石油流通はわずか数%。ホルムズ海峡“封鎖”で世界流通の20%がストップしている現在の方が、はるかに影響が大きいと言えます。
国単位で供給ストップ…北朝鮮では人口の5%が犠牲に?

国単位で石油供給が止まったのは過去に3例(ポスト石油戦略研究所・大場紀章氏)。
1991年、ソ連からほぼ全量を調達していた北朝鮮とキューバへの供給が、ソ連崩壊によりストップしました。北朝鮮は暖房などを我慢して石油消費を5割減らしたものの、人口の5%が犠牲になったとも言われています。一方、キューバは道路を畑に変えるなど自給自足を進め、石油消費を8割減らしました。
また、石油の8割を米国からの輸入に頼っていた日本は1941年、いわゆる“ABCD包囲網”により供給が停止され、太平洋戦争へと突入します。
危機対策①「迂回ルート」 サウジアラビアを西へ横断し紅海へ

大場氏が「史上最大」と見る今回の“石油危機”。日本は対策として「迂回ルート」「備蓄」「アメリカからの輸入」の3つを確保していると言います。
1つ目は「迂回ルート」の確保。例えば、サウジアラビアを横断する全長1200km(青森~山口に相当)のパイプラインを活用してペルシャ湾岸から西へ輸送し、ホルムズ海峡ではなく紅海からインド洋に抜けるルートがあります。
危機対策②「備蓄放出」 日本の備蓄量は248日分

2つ目が、国際協調での「備蓄」放出です。
第一次オイルショックを機に設立されたIEA(国際エネルギー機関)にはアメリカ・日本をはじめ32か国が加盟していて、各国が石油を備蓄し危機時には協調放出するよう呼びかけます。
日本の備蓄量は、「国家備蓄146日分」「民間備蓄96日分」「産油国共同備蓄6日分」です(資源エネルギー庁 1月末時点)。
危機対策③「アメリカからの輸入」 韓国・インドと取り合いに?

3つ目が「アメリカからの輸入」の確保。
1日の石油消費量317万バレルのうち、前述した「迂回ルート」「国家備蓄放出」でそれぞれ33%をまかない、10%〜15%は節約。不足分の約20%をアメリカから購入するという方法です。
<1日の消費量・317万バレル>
▼33%→迂回ルート
▼33%→国家備蓄放出
▼10%〜15%→節約で減らす
⇒残り約20%→米国から購入(脱中東)

IEA加盟国であるアメリカの石油備蓄は4億バレル(20日分)。うち1.7億バレルを4か月かけて放出する計画で、1日あたり140万バレルとなる計算です。ホルムズ依存度の高い日本・韓国・インドなどの国々で取り合うことになると大場氏は見ています。
エネルギー安全保障かコストか…石油調達のジレンマ解消するには?

今後、中東情勢が落ち着いた場合、日本のエネルギー政策はどうあるべきなのか?
エネルギー安全保障の観点から見ると「脱中東」を進めるべきだが、他の選択肢として有力なアメリカ産原油は高い…石油調達にはこのジレンマがあります。
そこで必要となってくるのが「政策での誘導」。補助金や調達先の指定などです。
石油から天然ガスへ…ゲームチェンジで中東は今後も不安定?

一方、この先も中東は落ち着かない可能性があると大場氏は指摘。中東の覇権争いの中心が今後、石油から「天然ガス(LNG)」へ移行するからだと言います。
中東の資源国のうち、石油埋蔵量の世界2位はサウジアラビアですが、天然ガス埋蔵量の世界2位はイラン、3位はカタールです(資源エネルギー庁 2019年末)。
天然ガスは発電に使うエネルギーとして、石油に比べてコスト・環境面で優れていて拡大傾向にあり、このパワーバランスの変化が不安定要因になるかもしれません。
「脱・中東」から「脱・石油」へ…EV政策を考えるべき

こうした点を踏まえ、「脱・中東」には限界があるため、今後は「脱・石油」を目指すべきだと大場氏は指摘。
ガソリン・軽油で石油利用の53%を占めている現状を考えると、エネルギー安全保障の観点から「EV政策」を考えるべきだと言います。
(2026年3月18日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)