マルチビタミンと老化の関係に新たな知見…でもまだドラッグストアに急ぐ必要はない

新たな研究によると、1日1回マルチビタミンを摂取した高齢者は、老化の進みがわずかに遅くなったという。
- 新しい研究で、高齢者がマルチビタミンを摂取すると生物学的老化の進行がやや遅くなることが示された。
- この研究は、マルチビタミンが老化の改善に何らかの効果を持つかを探る第一歩となるかもしれない。
- 将来的には、医師が個人の生物学的年齢に合わせてサプリの組み合わせを調整できることが期待されている。
マルチビタミンのサプリメントを飲んで、「これは実際に何か効果があるのだろうか」と誰もが一度は考えたことがあるはずだ。
この疑問に対して医療の専門家が何十年もの間に示してきた回答は、はっきりしないものだった。我々の健康や、より長く健康に生きることに対して、マルチビタミンが意味のある測定可能な影響を与えるという確固たる証拠が不足していた。
2026年3月9日に医学誌「ネイチャー・メディシン(Nature Medicine)」に掲載された研究によると、高齢者の場合、マルチビタミンには何らかの効果がある可能性が示された。毎日1錠のマルチビタミンを摂取したところ、老化の進み具合を示す指標が約4カ月分遅くなったという。
医療の専門家は、この研究結果は興味深いとしながらも、効果は非常に小さく、摂取しているサプリメントの種類や組み合わせを今の段階で変えるのは時期尚早だと指摘している。
「これは、誰もが外に出てマルチビタミンを飲み始めるべきだという意味ではない」と研究論文の筆頭著者でサプリメント研究者でもあるハワード・セッソ(Howard Sesso)はBusiness Insiderに語った。セッソはハーバード大学医学部(Harvard Medical School)の疫学者で、医学の准教授でもある。
「このことが、さまざまな要素を結びつける手がかりを与え始めているということだ」
これは高齢者がマルチビタミンを摂取するとわずかな効果を得られる可能性があるとする研究の一例だ。特に、食事から十分な栄養を取れていない場合には、その可能性があるとされる。2023年にアメリカン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートリション(American Journal of Clinical Nutrition)に掲載された別の研究では、1日1回のマルチビタミン摂取が、一般的な記憶力テストの成績をわずかに改善するのに役立つことがわかった。
1日1回マルチビタミンを摂取すると、生物学的年齢の進みを示す指標の進行が遅くなった

サプリメントは多く摂取すればよいというものではない。この研究では参加者は1日1錠のみマルチビタミンを摂取した。
この研究は大規模なランダム化比較試験で、958人の高齢者を追跡して調査した(平均年齢は70歳、男性は60歳以上、女性は65歳以上)。参加者の半数は高齢者向けの一般的なマルチビタミンを1日1回、2年間摂取し、残りの半数はプラセボ(偽薬)を摂取した。毎日欠かさずマルチビタミンを摂取した人たちは、偽のサプリメントを摂取した人たちと比較すると、2年間で生物学的な老化の進みが約4カ月分遅いという結果が出た。
この研究には、マルチビタミンメーカーのセントラム(Centrum)が資金の一部を提供し、研究で使用する錠剤も研究者に無償で提供した。ただし研究自体は独立した大学の研究チームによって実施され、アメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health)からの連邦研究助成も受けている。
研究チームは、「生物学的年齢時計」と呼ばれる指標を使って、参加者の老化の進み具合を測定した。これは「エピジェネティック・クロック」とも呼ばれ、グリムエイジ(GrimAge)とフェノエイジ(PhenoAge)という2つの指標が含まれている。これらの指標は、人の血液や唾液を使ってDNAメチル化、つまり加齢に伴う遺伝子発現の変化を測定する。この「時計」は、血圧やコレステロール値、脈拍の測定のように体の一部の状態だけを見るのではなく、体全体の老化を予測するように設計されている。
この研究では、生物学的年齢時計の指標で老化の進みが速い人ほど、サプリメントの摂取によって老化の進行が遅くなる傾向が見られた。これは、栄養が不足している高齢者や健康状態があまり良くない人ほど、マルチビタミンの恩恵を受けやすい可能性があることを示唆している。
セッソは、毎日摂取するマルチビタミンに含まれるさまざまなビタミンやミネラルの「相互のつながり」が関係している可能性があると述べた。「我々がまだ十分に理解していない形で、これらの成分が互いに作用し合っている可能性がある」という。
しかし、この研究では、老化のペースを遅らせれば、その人の健康状態を確実に改善することを示すことはできなかった。
この研究には関わっていないコロンビア大学(Columbia University)の疫学准教授で、老化研究者のダニエル・ベルスキー(Daniel Belsky)は、「老化の生物学的メカニズムとは関係のない多くの要因が、エピジェネティック・クロックの変動を引き起こす可能性がある」とBusiness Insiderに語った。
実際、生物学的年齢時計は、手術を受けた人や妊娠中の女性の場合、老化が早まっているように見えることがある。だが、こうした変化は一時的なものであり、寿命を示すものではない可能性が高いとされている。
サプリメントでは若い成人のデータが不足

研究の著者の1人は、栄養はサプリメントではなく食事から取る方がよいと考えている。
マルチビタミンが必須の栄養素を補い、高齢者の健康維持に役立つという証拠がさらに強まれば、今後は医師が高齢者にマルチビタミンの摂取を勧めることが、より一般的になるかもしれない。