「ホルムズ海峡封鎖」のいま「高配当バリュー投資」は危険…「ハイテク株」より魅力的な暴落に強い「割安成長株」3選

「ホルムズ海峡封鎖」のいま「高配当バリュー投資」は危険…「ハイテク株」より魅力的な暴落に強い「割安成長株」3選
ホルムズ海峡封鎖の影響が深刻化しつつあります。政府は石油備蓄の放出、ガソリン価格補助金など対策を打ち出していますが、日本経済への影響は避けられない情勢です。
世界情勢が大きく動く時は市場も乱高下しがちで、判断を誤ると思わぬ損失をこうむることもあります。こんな時は普段と違う視点での銘柄選択が必要です。
つばめ投資顧問のアナリストの元村浩之さんが解説します。
※本記事は3/17につばめ投資顧問にて公開された「銘柄スカウターで探す「優良成長株」―スクリーニングの結果は?」を編集の上、元村氏による特別コメントを付して掲載しております。
「エネルギーコストの影響」が大きい銘柄に要注意【特別コメント】
今回のようにホルムズ海峡封鎖といった地政学リスクが意識される局面では、ハイテクや国策銘柄だけでなく、より広範な業種に影響が波及すると考えるべきです。特に注意すべきは、原材料やエネルギーコストの影響が大きい業種です。たとえば化学、紙パルプ、運輸(特に海運・航空)、さらには外食産業などは、燃料費や仕入れ価格の上昇が収益を圧迫しやすい構造にあります。
こうした不透明な局面では「ディフェンシブ銘柄」に目が向きやすくなります。ディフェンシブ銘柄とは、景気の良し悪しに関わらず需要が安定している事業を持つ企業であり、食品、日用品、小売、医薬品、通信、電力ガスなどが代表例です。これらは不況時でも売上が大きく落ちにくく、結果として業績や株価の振れ幅も相対的に小さくなりやすい特徴があります。
なお、日本の食品小売はデフレ期において、価格競争と効率化で利益を確保してきましたが、その過程でローコスト運営やサプライチェーンの最適化を磨いてきました。結果として、現在のようなインフレ局面では値上げ転嫁がしやすくなり、むしろ収益体質が強化されている企業も見られます。過去は「薄利多売」、現在は「適正価格+効率経営」へと進化しており、こうした業態群に目をつけるのは、今の局面では面白いかもしれません。
注意すべきは、個人投資家に人気の高い「高配当バリュー株」は、必ずしもディフェンシブとは限らないということです。高配当株は一般に株価が割安で利回りが高い銘柄を指しますが、その背景には成長期待の低さや業績の不安定さが織り込まれている場合もあります。たとえば銀行や資源関連などは高配当であることが多い一方、景気や市況の影響を強く受けるため、局面によっては大きく株価が下落することも珍しくありません。
重要なのは、「何が安定なのか」を見極める視点です。ディフェンシブ銘柄は需要の安定性に基づく強さを持つのに対し、高配当バリュー株は価格や利回りの観点から見た割安さに焦点があります。つまり両者は似ているようで本質的には異なる投資対象であり、自身が重視するリスク許容度や投資目的によって選ぶべき銘柄も変わってきます。
以上を踏まえると、単に利回りや割安さだけで銘柄を選ぶのではなく、自分の投資スタイルに合った特性を持つ企業を見極めることが重要だと言えます。そのためにも、スクリーニングツールを上手に活用し、条件に合致した銘柄を抽出したうえで、その中身を一つひとつ丁寧に確認していくようにしましょう。
暴落時にも安心な銘柄の探し方【レポート本編】
現在、株式市場は非常に不安定な状況に直面しています。
3月11日の午前中において、ホルムズ海峡の事実上の封鎖という衝撃的なニュースが飛び込み、これをきっかけに市場の不透明感が強まっています。
ここ最近の株式市場は、ハイテク株や国策関連銘柄が牽引してきた側面が強く、多くの投資家のポートフォリオにおいて、これらの銘柄の比率が意図せず高まっているのではないでしょうか。
こうした銘柄は値動きが非常に激しいため、有事の際にはなかなか気が休まらないと感じることも少なくありません。
自分のポートフォリオが抱えるリスクの高さに焼きもきしている方も多いはずです。
このような時こそ、ポートフォリオの安定化を図る上で、「中小型株の中で割安感があり、かつ安定性も兼ね備えた銘柄」に目を向けることが極めて重要になります。
今回は、そのような銘柄をどのように探し、どのような着眼点で選ぶべきか、具体的な事例を交えて徹底的に解説します。
銘柄スカウターを駆使した「本物の成長株」のスクリーニング術
安定した投資成果を得るためには、感情に流されず、客観的なデータに基づいて銘柄を抽出する技術が必要です。
今回は、マネックス証券の口座保有者であれば誰でも無料で利用できる「銘柄スカウター」を活用した手法を紹介します。
このツールの中にある「10年スクリーニング」という機能を活用することで、長期にわたる企業の成長トレンドを一目で見極めることが可能になります。
具体的に、長期的に成長しており財務も健全な中小型銘柄を探す条件を設定してみましょう。
市場や業種はあえて限定せず、まず時価総額は幅広く「3000億円以下」に設定します。重要なのは成長率の条件です。
売上高と営業利益のいずれも、「過去10年間の年平均成長率(CAGR)が10%以上」であることを基準とします。
さらに、単発の急成長を排除し、着実な積み上げを確認するために、10年間のうち「増収・増益の回数がそれぞれ8回以上」という厳しい条件を課します。
これに財務の安全性を担保するための「自己資本比率50%以上」というフィルターを加えると、対象は54社程度にまで絞り込まれます。

出典:マネックス証券
中四国で24時間営業の魔法をかける「ハローズ」
スクリーニングで浮上した有望なセクターの一つに、食品スーパーがあります。
中でも注目すべきは、中四国地方を中心にドミナント展開を行っているハローズです。
なぜ今、あえて食品スーパーなのかという点ですが、このセクターは昨今のインフレ経済に対する体制が非常に強まったという着眼点があります。
長年のデフレから脱却し、顧客側で値上げに対する受容性が高まったことで、物流費や人件費のコスト上昇を価格に転嫁しやすくなっているのです。
ハローズの業績は、過去10年間の売上高CAGRが8%、営業利益CAGRがなんと13.5%という極めて高い安定成長を示しています。
同社の最大の特徴は、「全店365日・24時間営業」を貫いている点にあります。
これは単に便利さを追求するだけでなく、顧客がいない深夜の時間帯に商品の搬入や陳列を終わらせ、日中は接客やレジ打ちに集中するという、徹底したオペレーションの効率化を全社で構築しているのです。
また、近隣購買型ショッピングセンターとしてドラッグストアなどを誘致し、自社物件で賃料収入を得るという、不動産としての強みも併せ持っています。
現在は広島、岡山からさらに山口県へとエリアを拡大しており、競合他社から着実に顧客を奪いながら成長を続けています。
食肉サプライチェーンを掌握する「スターゼン」
次にご紹介するのは、私たちの食卓に欠かせない食肉の卸売で国内トップクラスのシェアを誇るスターゼンです。
牛肉で8.9%、豚肉で10.2%という強固なシェアを持ちながら、株価指標はPER 9.4倍、利回り3%超と、非常に割安な水準に放置されています。
株価は2022年以降、緩やかな右肩上がりを続けており、中長期での評価が高まっています。
スターゼンの戦略で特筆すべきは、利益率の高い「加工食品」への注力です。
食肉卸は相場変動の影響を受けやすいですが、ハンバーグなどの加工品は付加価値が高く、収益を安定させる役割を果たします。

出典:スターゼン 2025年3月期決算説明資料
また、世界25カ国から仕入れるハイブリッドな調達基盤を持っており、円安や海外相場の変動リスクをうまく分散させています。
さらに、2030年に向けて海外輸出比率を現在の3%から15%まで引き上げるという計画もあり、和牛ブームを追い風にした成長も期待されます。
販売先がスーパーから外食、食品加工まで多岐にわたるため、コロナ禍のように特定の需要が消えても他でカバーできるという「安定した売上の仕組み」も大きな強みです。
郊外型ドラッグストアの進化形「クリエイトSDホールディングス」
最後は、関東圏の郊外を中心に展開するドラッグストア、クリエイトSDホールディングスです。
ドラッグストア業界は飽和状態にあると言われることもありますが、実際にはコンビニや食品スーパー、町の薬局などの市場を吸収しながら拡大を続けている成長業態です。
同社の業績も売上・利益ともにCAGR約8%弱と非常に健調で、自己資本比率60%という極めて強固な財務体質を誇ります。
クリエイトSDの最大の特徴は、食料品の売上比率が43%と非常に高い点にあります。
これは業界大手のウエルシアやマツキヨココカラなどと比較しても突出しており、事実上のスーパーマーケットとしての機能を併せ持っています。

出典:クリエイトHD、ほか各社有報より
同社は固定のフォーマットにこだわらず、医療モール型や小型スーパーのM&Aによる生鮮複合型など、地域に合わせた店舗形態を模索することを得意としています。
スーパーとして顧客を呼び込み、利益率の高い医薬品や化粧品を併せて買ってもらうというビジネスモデルは、今後も郊外において高い競争力を維持し、安定成長を続ける可能性が高いでしょう。
有事に惑わされない
有事が発生し、市場が大きく揺れ動く時こそ、投資家の真価が問われます。
ハイテク株などの値動きの激しい銘柄を持ち続けることに不安を感じるならば、今回ご紹介したような「生活に密着し、かつ着実に利益を伸ばしている割安成長株」をポートフォリオの安定剤として検討する価値があります。
大切なのは、特定のニュースに一喜一憂するのではなく、スクリーニングツールを活用して「企業の適正な価値」を自分の目で見極めることです。
全く違うセクターに視点を向けるだけで、これまで見えていなかったチャンスが広がっていることに気づくはずです。
元村 浩之/つばめ投資顧問 アナリスト
県立宗像高校、長崎大学工学部卒業。大手スポーツ小売企業入社後、店舗運営業務に従事する傍ら、ビジネスブレークスルー(BBT)大学・大学院にて企業分析スキルを習得。 2022年につばめ投資顧問に入社。長期投資を通じて顧客の幸せに資するべく、経済動向、個別銘柄分析、運営サポート業務を行っている。
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