【陸上自衛隊×在沖縄米軍】密着ルポ!過去最大規模「アイアン・フィスト26日米共同訓練」肉薄撮

名護市久志で行われた上陸訓練に参加した米海兵隊の最新水陸両用車ACV。走破性を高めるため足回りをタイヤ式とした

対 ″仮想敵″の戦闘訓練

小雨が降る曇天の下、唸るような重低音が種子島の前之浜海浜公園に響きわたった。散歩していた親子連れや犬のリードを引いていた老人が思わず空を見上げると、木立の間から米海兵隊のMV-22Bオスプレイの巨体が現れた。

公園内に着陸すると後部ハッチが開き、小銃や迫撃砲を抱えた米海兵隊員が降り立った。そのままグランドを横切り、周囲を警戒しながら遊歩道を進んでいく。

そこから北東に約30km進んだ島の中央部に位置する中山海岸には、海上自衛隊のホバークラフト型揚陸艇LCACが上陸。高機動車等を送り届けた。

その2日後、今度は沖縄県名護市久志の海岸に続々と軍用車両が上陸。足回りをタイヤにした米海兵隊の新装備ACVは砂浜を駆けあがると一般道へ——。

これは日本版海兵隊こと陸上自衛隊の水陸機動団と在沖縄の米・第3海兵機動展開部隊が2月11日から3月9日にかけて実施した日米共同訓練「アイアン・フィスト26」の一コマだ。米軍はエイブラハム・リンカーンやジェラルド・R・フォードら主力空母を中東に派遣し、イランに苛烈な空爆を行いながら、日米合わせて参加人員約4900名という過去最大規模の島嶼(とうしょ)防衛訓練を行っていたのである。

日米間では年間を通して様々な訓練が行われているが、「アイアン・フィスト」は趣が少し異なる。’06年から毎年実施されてきたこの共同訓練は中国という仮想敵との戦いを明確に想定しているのだ。

’00年代に入り、日本の南西諸島部での中国による海・空の示威行為が激化。長らく北方エリアの国土防衛警備に重きを置いてきた陸自は戦術の変更を余儀なくされたが、島嶼防衛のノウハウがない。そこで米海兵隊をお手本にした共同訓練「アイアン・フィスト」が始まったのだ。

米本土での装備を身に着けたまま泳ぐ「着装泳」などの基本から始まり、水陸両用車を借りての訓練を経て’18年に水陸機動団を新編。’23年からようやく舞台を日本に移し、実際の島嶼防衛の現場となる島々を使っての訓練が始まった。

「演習場以外での訓練を″生地(せいち)訓練″と呼びます。実際の地形を使った訓練であり、戦術技量の向上に欠かせない。空自の戦闘機なども、基地が破壊された場合を想定し、民間空港で補給を受ける機動分散運用を訓練しています」(陸自幹部)

3月6日には島に上陸した敵部隊との戦闘訓練が行われた。日米の隊員が持つ小銃の先にはレーダー送信機、体にはレーダー受信機が付いており、敵のレーザーを受けると受信機から警報音が鳴り、最悪″戦死″と判定される。空包音がけたたましく鳴り響く中、日米の隊員たちは粛々と進軍していった。

米国防省は、中国が建軍100周年を迎える’27年の台湾侵攻を警戒している。日本にとっても中台問題は対岸の火事ではない。双方の危機意識が現場に緊迫感を生んでいた。今日のイランの悲劇が極東アジアで起こらぬことを願いたい。

米海兵隊員が通行規制を行う中、国道329号線を横切るACV。今回の訓練では、実際の地形を使った訓練が多数行われた

種子島の中山海岸で行われた海自ホバークラフト型揚陸艇LCACの上陸訓練。輸送艦「おおすみ」から車両と人員を運搬

種子島の前之浜海浜公園のグランドに降り立ったMV-22Bオスプレイ。展開していた兵士を収容し、洋上の母艦まで運んだ

『FRIDAY』2026年3月27・4月3日合併号より

撮影・文:菊池雅之(軍事フォトジャーナリスト)