「資料がまとまらない人」が無意識にハマる2つのワナ【戦略コンサルが解説】

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じっくり考えて資料を作成したいのに、情報が整理できず考えがうまくまとまらない、という経験は誰にでもあるはずだ。そんな時、思考のプロである戦略コンサルタントはどう対処しているのだろうか。デロイト トーマツで10年以上のキャリアを重ねてきた筆者が思考のコツを解説する。※本稿は、戦略コンサルタントの望月安迪『コンサルタント3年目までの必修ビジネススキル キャリアを踏破するためのサバイバルマップ』(SBクリエイティブ)の一部を抜粋・編集したものです。
頭の使い方の基本は
「思考キャパの選択と集中」
足立さんは入社して1年目のアナリスト。競合企業調査プロジェクトで、日次の内部定例ミーティング中に資料をレビューしていたときのことだ。
「お願いしていたあの資料、進捗はどうかな?」
「すみません、正直自分の中であまり整理ができず、ちょっとまとまっていません…」
自信のない足立さんの資料を見てみると、スライド上には断片的でまとまりのない内容が書き散らかされている。ちょっと何が言いたいのかわからない、といった内容だ。さらにPCのブラウザ上には大量のタブが並べられていて、情報に溺れているようにも見える。
どんな情報を集めればよいか、メッセージをどうするか、資料をどう作るか――。複数のことを同時に考え、あっちに行ったり、こっちに行ったり。思考が散乱し、まるでジャングルに迷い込んだかのようだ。こんな状態だと、シャープに成果を作り出すことはできない。
人間が1つのことに集中して注意を向けたり、考えたりできる容量のことは「認知リソース」と呼ばれている。
いわば、自分の“思考キャパ”だ。
「そんなにいろんなことを一気に考えられない…」と感じることがあるように、限りあるキャパを同時にバラ撒いてしまうと、結局どれもが中途半端になってしまう。
大事なのは思考の段階を切り分け、「思考キャパの選択と集中」を徹底することにある。あちらこちらに思考を飛び散らかさず、1つひとつの段階に思考を集中させることだ。それも、自覚的に。
思考の基本モデルは
インプット・ストック・プロセス・アウトプット
明晰なコンサルタントの頭の中では、次のように思考が展開されている。
・「今はインプットの段階、考えるのはまず脇に置いて基礎になる材料を集めよう」
・「一旦、情報は集まった。今はこの情報をうまく加工して、仮説を考え出すことに集中しよう」
・「どうも今ある情報を使い切ってもいい仮説が出ない。インプットが不足していそうだから、もう一度新しい情報を探してみよう」
・「これでいい仮説が出そうだから、伝わりやすい見せ方を工夫しよう」
自分が持てるキャパを、注力すべき焦点に一点集中して注ぎ込むこと。その「思考キャパの選択と集中」が、頭をうまく使いこなすことの第1のコツだ。
では、どのようにすればこの限りある思考キャパをうまく配分し、集中させることができるようになるだろうか?それには思考をいくつかの段階に分解してみることだ。
そこで役立つのが、「インプット・ストック・プロセス・アウトプット」という思考の基本モデルだ。これは単なる考え方の手順ではなく、意識的にキャパを注ぐ対象を切り替えるためのフレームワークとして使うことができる。
たとえるなら、料理をするとき、食材集め、下準備、調理、盛りつけといった各手順に集中するために、それぞれを区切ってスペースや時間を割り当てるだろう。考えることもこれと同じだ。
考えるべき段階を「選択」し
キャパを「集中」させる
(1)インプット(情報収集):まず、この段階では「考える素材を集めること」に思考のキャパを集中させる。必要な情報やデータを徹底的に集めることに特化し、「今はインプットの皿を満たす時間」と割り切ってまだ分析や結論出し(プロセスやアウトプット)にリソースを割かないように意識する。
(2)ストック(知識・経験の活用):次に、集めた情報だけでなく、その情報と関連づけられそうな過去の事例、フレームワーク、自分の経験などの棚卸しをする。ここでも、「今はこれまでに培ったレシピを参照する時間」と考え、他の思考段階へのリソース配分は抑える。
(3)プロセス(情報の加工):ここが考えることの核心部分だ。インプットとストックで集めた素材を使い、それらを分析したり、比較したり、組み合わせたりして、そこから言える仮説を抽出する。ここで認知リソースを最大限投入する。ここでも他の段階への意識は一旦脇に置き「今は料理を作る時間」として集中する。
(4)アウトプット(成果の表現・伝達):最後に、プロセスで練り上げた思考を「相手に伝わる形に整えること」にリソースを注ぐ。資料作成、プレゼンテーション構成、言葉選びなど、プロセス段階で考えた内容をどう「見せるか」「伝えるか」に特化し、「今は盛りつけをして、完成させる時間」と捉える。

同書より転載
このように、思考の「受け皿」を選択し認知リソースを集中させることで、思考のキャパオーバーを防ぎながら一つひとつのタスクの質を高めることができる。これなら、「もっとちゃんと考えてみて」という漠然とした指示をもらっても、
・「今は材料が不足している。インプットにまずは集中しよう」
・「ひと通り調べたら、改めて過去の知見ストックも参照しよう」
・「調査はやめて、プロセスに全振りしよう」
・「今は資料作成や、伝え方を考えるのは脇に置こう」
といった形で、自分の思考の状態とリソース配分を客観的に把握し、コントロールができるようになる。
インプット過剰?プロセス不足?
いまの自分の状態を適切に把握しよう
思考が空回りしてしまい、なかなかアウトプットにつながらないという壁にぶつかることは誰しもある。それについては大きく分けて2つのパターンに陥っていることが多い。
パターン(1):「インプット過多・プロセス不足」の罠
「とにかく徹底的に調べなければ!」と意気込むあまり、情報収集に時間をかけすぎてしまうケースがこれだ。膨大な情報を集めたはいいものの、それを調理する「プロセス(加工)」の時間が不足したり、何が重要かを見失ったりしてしまう。結果として、頑張って集めたのに「アウトプット」が生み出せなくなる。いわば、素材は山ほどあるのに、調理する時間も気力も失って、料理が完成しない状態だ。
パターン(2):「プロセス偏重・インプット不足」の罠
「自分の頭で考え抜くぞ!」と、思考力に自信がある人ほど陥りやすいのがこのケース。手元にあるわずかな情報だけで考えを広げようとしても、十分な「インプット(素材)」がなく、思考が堂々巡りになったり、現実離れした机上の空論になったりしがちだ。それではやはり「アウトプット」にはつながらない。これはシェフが、ろくに食材もないのに必死に鍋を振っているような状態だ。これでは美味しい料理は作れない。
思考で行き詰まりを感じたとき、まず大切なのは「自分は今、この2つのどちらかにはまってはいないか?」と、一度自分と距離を取ってみることだ。

『コンサルタント3年目までの必修ビジネススキル キャリアを踏破するためのサバイバルマップ』 (望月安迪、SBクリエイティブ)
もし頭の中が散らかって、何から手をつけていいかわからないと感じたら、インプット過多[パターン(1)]のサインだ。そのときは、一旦情報収集をストップし、集めた情報を整理・分析する「プロセス」に舵を切る。
また、「どうしよう」「なんとかしないと…」など思いながらも、具体的なアイデアが出てこない場合は、インプット不足[パターン(2)]を疑おう。その場合は、闇雲に考え続けるのをやめ、追加で情報を収集する「インプット」に舵を切る。
僕の経験では、ファームにいるメンバーではパターン(2)の罠にはまる人が多い。そうした人には「インプットが足りていないんじゃない?追加の新情報を集めたほうがいいよ」と伝えるだけで、持ち前の思考力を活かしてぐっと考えを前に推し進めることができるようになる。
自分がどのような状態にあるのかに気づければ、インプットとプロセスのバランスを「舵取り」することができるようになるのだ。