トランプ氏周辺から情報流出?不可解な市場取引相次ぐ

ドナルド・トランプ米大統領は、関税を巡る方針転換から軍事攻撃に至るまで、突然の政策変更で市場を動かしてきた。同氏の発表に先立ち、何度か異例の取引が記録されている。

つい最近では、トランプ氏が23日朝に自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」への投稿でイランとの緊張を緩和する約15分前に、原油先物とS&P500種指数先物で不可解な取引活動が急増した。これにより原油価格は急落し、株価は急伸した。

トランプ氏に批判的な向きは、誰かがこの投稿の内容を事前に把握して利益を得たと即座に推測した。クリス・マーフィー上院議員(民主、コネティカット州)はX(旧ツイッター)で「誰だったのか? トランプ氏か? 家族か? ホワイトハウスのスタッフか? これは汚職だ。驚くべき汚職だ」と指摘した。

23日のトランプ氏の投稿に先立って、あるいは過去のいかなる事例においても、情報漏えいやインサイダー取引が行われた証拠はない。ホワイトハウスのクシュ・デサイ副報道官は声明で、「全ての連邦政府職員は、非公開情報を金銭的利益のために利用することを禁じる政府倫理規定に従う義務がある。しかし証拠もなく、政権当局者がそのような行為に関与していると示唆するのは、根拠のない無責任な報道だ」と非難した。

それでも市場に精通した一部のベテランは、公式発表前にトランプ氏の周辺から情報が少しずつ漏れていると考えている。以下は、トランプ氏が引き起こした相場変動の前に、絶妙なタイミングで取引が行われた事例をまとめたものだ。

2026年3月23日:トランプ氏はトゥルース・ソーシャルへの投稿で、イランとの「生産的な」協議を受けて、イランの発電所への攻撃を延期すると発表した。

投稿の約15分前、原油先物市場で突如として取引が急増した。ダウ・ジョーンズ・マーケット・データによると、米東部時間午前6時49分から6時51分までの2分間に、7億6000万ドル以上のブレント原油先物とWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物が取引された。同じ時間帯にS&P500先物でも同様の取引急増が見られた。

取引量の急増に明確なきっかけはなかった。午前6時50分の出来高急増時に、原油価格はわずかに下落した。トランプ氏の投稿後、原油価格は即座に下落し、株価指数先物は急騰した。

26年2月28日:米・イスラエル軍がイランへの攻撃を開始した直後、ブロックチェーン分析会社のバブルマップスは、暗号資産(仮想通貨)ベースの予測市場であるポリマーケットを通じて米国の攻撃に賭けて120万ドル(約1億9100万円)を稼いだ「内部関係者と思われる」グループを特定した。

バブルマップスによると、これらのアカウントの大半は「2月28日までの攻撃」に賭けており、この日はまさに作戦実行日だった。同社は後にそのうちの一つが、昨年、米国によるイランの核施設攻撃に賭けて利益を上げていた別のポリマーケットのアカウントと関連していることを示す証拠を発見した。

ポリマーケットは今週、インサイダー取引に対する規則を強化し、盗まれた機密情報や違法な情報に基づいて取引することを禁止すると発表した。

26年1月2日:米東部時間午後10時46分、トランプ氏は米軍に対し、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を拘束する作戦を進めるよう命じた。この作戦が世界に知られるようになったのは、その夜遅く、カラカスで爆発が起きた時だった。

ポリマーケットでの一連の取引は、誰かがこの作戦の事前情報を利用して利益を得たのではないかという疑念を招いた。25年12月下旬から26年1月上旬にかけて、謎のトレーダーがベネズエラ関連の賭けに約3万4000ドルを投じた。主にマドゥロ氏が1月末までに失脚した場合に利益が出る契約だった。最後の賭けが行われたのは1月2日午後9時58分で、トランプ氏の命令が出される1時間足らず前のことだった。

ポリマーケットで予想されていた「マドゥロ氏が1月31日までに失脚する確率」

このトレーダーは40万ドル以上の利益を手にした。その正体は依然として不明だ。数日後、連邦議会の民主党議員数人が、連邦政府職員が非公開情報を利用して予測市場で取引することを禁止する法案を提出した。

25年10月10日:中国のレアアース(希土類)輸出規制に憤慨したトランプ氏は貿易に関する威嚇を強め、午後遅くにトゥルース・ソーシャルへの投稿で、中国に100%の追加関税を課すと表明した。株価は下落した。

この時、暗号資産取引所のハイパーリキッドで絶妙なタイミングの取引が行われた。売りが広がる前に、二つのアカウントがビットコインとイーサの下落に巨額の賭けをした。その日の終わりまでにポジションは決済され、1億6000万ドルの利益を生んだ。

最後の取引はトランプ氏の投稿のわずか1分前に行われたため、誰かが事前に情報を得ていたのではないかという臆測を呼んだ。しかし、他にも考えられる理由はあった。例えば、これらの賭けは、トランプ氏の関税発動の脅しを招いた中国の輸出規制への反応だった可能性がある。昨年10月の棚ぼたも一時的なものだった。このハイパーリキッドのアカウントの一つは今年1月、イーサの上昇を見込んだ不運な賭けで1億2800万ドル以上を失った。

25年4月9日:米東部時間午後1時18分、トランプ氏は1週間前に「解放の日」関税によって引き起こされた株式市場の急落を突然反転させた。トゥルース・ソーシャルへの投稿で、数十カ国に対する相互関税の上乗せ分の適用を90日間停止すると発表した。S&P500は急騰した。

市場関係者は、S&P500に連動する人気の上場投資信託(ETF)(ティッカーシンボル「SPY」)に関連するオプション取引の午後1時直後の動きに注目した。その取引は短期の強気コールオプション(買う権利)で、同日午後にS&P500が大幅に上昇して引けた場合にのみ利益が得られるものだった。「正気じゃない、誰かが事前に知っていたに違いない」とデータプロバイダーのアンユージュアル・ホエールズは投稿した。同社のXアカウントは、インサイダー取引の可能性を示す特徴を持つ取引活動を頻繁に取り上げている。

4月9日満期、行使価格509ドルの SPYコールオプションの出来高

一部のトレーダーは、もっと平凡な理由を挙げた。これらのオプション取引は、午後1時の10年物米国債の入札が予想以上にうまくいき、混乱が米国債市場に波及するのではないかという懸念が和らいだ直後に行われたというものだ。

それでも民主党議員は調査を求めた。トランプ氏の支持者らは彼らの懸念を一蹴し、ある人物はこれを「トランプ錯乱症候群」の一例だと指摘した。