「誰を責任者にすればいいんですか」改正物流効率化法、施行直前でCLO選任率「43%」――荷主企業が動けない根本理由

CLO選任遅延の構造

 2026年4月に本格施行される「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律(改正物流効率化法)」により、一定規模以上の荷主は特定事業者に指定され、規制の対象は広がる。

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 この改正は企業にとって、法への対応にとどまらず、これまでの物流体制や進め方を見直す課題を突きつけている。ただ、その受け止め方や対応の進み具合は、まだ十分に見えていない。

 CUBE-LINX(東京都日野市)は、物流特定事業者の物流部門最終責任者304人(20代から60代の男女)を対象に調査を行った。本格施行を前に、その動きは鈍い。各社がそれぞれに妥当と考える判断を重ねた結果、全体として進みが遅れている。この調査は、その過程で避けにくい摩擦が生じている状況が数字で示されている。特定事業者となるなかで、物流責任者の

「78.9%」

が実務負担の重さを強く感じている。

 現場の裁量で回してきた物流は、法の枠に沿った運用へと移る。その変化への戸惑いが、この数字に表れているのだ。運営の柔軟さが損なわれることへの懸念も残っている。

権限集中への抵抗と人材不足

CLO選任遅延の構造, 権限集中への抵抗と人材不足, 費用負担顕在化と投資停滞, 先行投資回避と競争ねじれ, 責任分散と全体停滞構造

改正物流効率化法への対応実態に関する調査(画像:CUBE-LINX)

 一方で、物流統括管理者(CLO)の選任は

「43.4%」

にとどまる。残る56.6%は施行直前でも「選任予定(48.4%)」か「未選任(8.2%)」のままだ。

・システム導入や設備投資に必要な予算・投資コスト(46.2%)

・荷主、物流会社などのステークホルダーとの利害調整(45.2%)

がともに重く、対応を前に進めきれない。資金と社内の合意、その両面で足踏みが続いているのだ――。

 CLOには、生産や営業など他部門に計画の見直しを求める強い権限がともなう。その影響で社内の力関係が揺らぐことへの懸念が、選任をためらわせている。41.0%が挙げる人材不足も、現場経験だけでなく、法務や統制の知識を持ち、物流と結びつけられる人材が足りない点にある。法規制を社内の仕組みに落とし込む力の不足が、先送りを招いているのだ。

 69.1%が計画に着手していても、最終判断までに時間がかかるのは、現場と経営層の受け止め方に差があるためだ。物流部門が法的責任を現実の問題として捉える一方で、経営層が事業の存続に関わる課題として十分に受け止めきれていない場合、意思決定は止まる。

費用負担顕在化と投資停滞

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改正物流効率化法への対応実態に関する調査(画像:CUBE-LINX)

 システム導入や運賃交渉といった対応は、各社にとって収支を保つための動きである。ただ、その過程で関係者の間に費用負担を巡る摩擦が生じている。

 46.2%が壁とする投資予算の確保が進まない背景には、物流を外部に委ね、費用として扱ってきたこれまでの考え方がある。システム導入を

「資産」

として扱う判断は、物流を利益を生む分野と見ていない企業には受け入れにくい。こうした財務面での慣れが、法対応を前向きな投資ではなく、負担増として捉える傾向につながっている。

 59.1%が行う「運賃や料金の適正化に向けた運賃交渉・価格転嫁」は、58.1%が進める「荷待ち・荷役時間の削減に向けた現場オペレーションの改善」と結びつく。しかし、発注の仕方を見直した結果として売り上げが落ちる場合、社内で利益の対立が生じる。45.2%が直面する「荷主、物流会社などのステークホルダーとの利害調整」には、こうした見直しにともなう負担を避けようとする組織内の抵抗がにじむ。

 39.5%が検討する「バース予約や動態管理システムの導入」などの仕組み導入でも、情報のデジタル化によって、これまで見えにくかった無駄が表に出る。荷主側では管理の手間が増え、物流会社では配車の自由度が狭まる。この変化への懸念が、投資判断を遅らせる要因となっているのだ。

先行投資回避と競争ねじれ

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改正物流効率化法への対応実態に関する調査(画像:CUBE-LINX)

 2026年3月の調査時点で、8割近くが負担を感じている。規制が求める水準と、企業が持つ人手や資金がかみ合っていないことが背景にある。

「既に計画を策定済みで、実行している」は20.4%にとどまる。多くの企業が慎重な姿勢を崩さないのは、

「先行投資によるコスト増が競争上の不利につながる」

ことを気にしているためだろう。競合が責任者を置かず、従来のやり方で低コストを維持する場合、法を守る企業ほど短期的に利益率が下がる。そうしたねじれが、施行直前の停滞を招いている。

 特定事業者の基準は物量という数値で区切られる。ただ、実際の物流の複雑さは業種ごとに異なる。8割近くが抱く負担感は、自社の実態が現在の法の枠にうまく収まらないことへの抵抗でもある。このずれを埋めようと各社が個別に対応を探る。その過程が、全体の進みを遅らせている。

 48.4%が選任を予定としているのは、施行後の監督の厳しさを見極めてから動こうとするためだろう。この動きは各社にとってはリスクを抑える判断だが、全体としては責任者がいないまま、形だけの計画が並ぶ状態を生んでいる。

責任分散と全体停滞構造

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改正物流効率化法の対応実態。

 今回の調査結果から見えてくるのは、個々の企業の怠りというより、予算や人手、利害の調整といった現実の制約のなかで、それぞれが自社にとって妥当と考える対応を積み重ねた結果、全体として動きが滞っている姿である。

 各社は自らの立場で判断を下している。それでも、全体としては4月の開始時点に間に合わない状況にある。この段階に至ると、一社の努力だけで解消できる範囲を超えているともいえる。

 特定事業者の8割近くが負担を感じ、5割以上で責任者が決まっていない。この数字が示すのは、特定の主体に原因を求めにくい状況そのものが、制度への対応を難しくしているという現実である。