物価高でもちょっと高級「ロイホ」が増収増益のワケ

物価高の今、高級路線のファミレス「ロイヤルホスト」が好調な理由とは(写真:ロイヤルホスト)

ロイヤルホストといえば、ファミレスの中でも値段設定が高めで、高級感のあるレストランチェーン。物価高の今、「そう気楽には行けない」と筆者自身も思い込んでいたが、実際には敷居が高すぎるということもなかった。

【写真】分厚い! 6578円(税込)の「450g厚切りワンポンドステーキ」

とくに平日の「洋食ランチ」はメインにご飯とスープがついて1000円台から。ファストフードのセットでも1000円を超えてしまう今、ホスピタリティの行き届いた空間でゆっくり食事をできることを考えるとお得に感じられた。

一方、「450g厚切りワンポンドステーキ」(以下すべて税込み、6578円)などの高価格帯メニューも密かな人気で、販売数をじわじわと伸ばしているらしい。同チェーン好調の理由はどこにあるのか。運営するロイヤルフードサービス代表取締役社長、川勝邦弘氏に聞いた。

ロイヤルの業績

ロイヤルホストの国内店舗数は225店舗(2025年12月31日時点)。ロイヤルホールディングスの2025年12月期決算によると、ロイヤルホストの売上高は439億800万円、経常利益は31億3200万円で前期比増収増益。既存店売上高も2026年2月までで19カ月連続で前年を上回っている。

(撮影:今井康一)

理由について川勝氏は「コロナ禍後も創業時からの方針を変えずに実施してきたことが今につながった」と語る。

「コロナ禍、飲食に携わる従業員自体が減っていたため、戻ってきたお客様の数に対して店舗の体力が戻っていない、パフォーマンスが戻っていない状態だった。1〜2年は苦しい運営が続いていた」

その間、サービス品質も当然ながら、従来のようにとはいかなかった。客が離れる心配はなかったのかというと、「大丈夫ではなかったと感じている」とのことだ。

同じ課題を抱えた他の多くの飲食店では、DXも導入して作業を簡素化し、人のサービスを削って対応した。しかしロイヤルホストではあくまで「人の価値」にこだわって、これまで通りのサービスを提供する道を選んだそうだ。

1951年に機内食搭載と喫茶営業を始めて、わずか2年後に立ち上げたのがレストラン業だ。フレンチの専門レストランの体験価値をより身近にし、食事を楽しんでもらうために、手間暇のかかったメニューやフルサービスに力を入れてきた。

フレンチの専門レストランの体験価値をより身近にし、食事を楽しんでもらうために、手間暇のかかったメニューやフルサービスに力を入れてきた(写真:ロイヤルホスト)

「その方針を、人手不足だからといって変えるわけにはいかない。人材育成に改めて力を入れました」

人とデジタルをすみ分けたロイヤル版働き方改革

しかし、従来のやり方を何もかも踏襲したわけではなかった。

まず、人手が不足していた1〜2年の間はスポットワーカーも導入していたという。同時に、バックヤードのDXに取り組んだ。システム開発企業に現場の悩みを相談しながら、発注などの事務作業や、人材教育においても部分的にAIを導入するなど、独自のシステムを構築。人がサービスや調理に集中できる環境を整えていった。

多様な人材が、時間帯や地域を選んで働けるよう、シフトの組み方も変革した。店の従業員はブランドを表現する必要があるため、直接採用の人材に切り替えていった。スポットワーカーから従業員になったケースもあるそうだ。これらの結果、アルバイト、社員共に雇用人数も拡大してきているそうだ。

「将来的に働く人が減っても、今と同じレベルでサービスできる体制を整えた」

さらに人材に対しては、ブランド教育を強化した。例えばここ2年ほど行っている店舗責任者研修では創業の地、福岡市の研修センターで学んでもらうと同時に、近隣の店舗を見学してもらっている。創業地ではブランドに対する地元からの応援の思いも強く、ポジティブな影響があるそうだ。

メニューに関しては、グランドメニューのベーシックな価値に磨きをかけると同時に、フェアメニューで新しい流れを取り入れた。

例えば「コスモドリア」(1298円)や「ビーフジャワカレー」(1298円)、「ロイヤルのオニオングラタンスープ」(583円)などは、ロイヤルホストで人気が持続する看板メニュー。こちらについては、古くからのファンがついているため大きくは変えられない。

コスモドリア(写真:ロイヤルホスト)

黒×黒ハンバーグスペシャルランチ(写真:ロイヤルホスト)

比較的新しいヒットメニューが黒毛和牛、国産黒豚を使った「黒×黒ハンバーグ」だ。また、ステーキはもともとアメリカ産牛肉を使っているが、その中でも産地を選び、品質をアップしてきた。

フェアメニューは従来から外国の味や雰囲気を楽しめるものが多かったが、最近ではこれに、国産素材や産地にフォーカスした「Good JAPAN」フェアが加わった。

「生産者と共にコロナ禍を乗り越えたことで絆が深まったことが、フェア企画につながった。お客様にも非常に好評だ」

5月中旬までは「北海道の恵み」として、時鮭(ときしらず)、いくら、きたあかりといった北海道産食材を使ったメニューを展開している。

来店動機の変化が追い風に

成果は客単価のアップとして表れているそうだ。

例えば一人当たりの皿数が増える傾向にある。また、高単価商品の出数が上がってきている。冒頭に紹介したステーキはその例だ。

厚切りワンポンドステーキ450g(写真:ロイヤルホスト)

「ステーキはご馳走感のあるメニューの代表。出数が長い年月をかけて少しずつ上がり続けており、集客につながっていると感じている。お客様の来店動機がご馳走を食べて楽しむことにシフトしてきているため、客単価の伸びもあり、コロナ禍以降の食材費の高騰の影響を受けつつも、大きな値上げは避けられている」

ロイヤルホストならではの魅力を体感するため、「黒×黒ハンバーグスペシャルランチ」(2310円)を食べた。スープとデザートをそれぞれ「ロイヤルのオニオングラタンスープ」(プラス330円)、期間限定(取材時)の「プチストロベリーパフェ」(プラス440円)に替えてもらった。

オニオングラタンスープ(写真:ロイヤルホスト)

苺と不知火のプチパフェ(写真:ロイヤルホスト)

ハンバーグは丸く成形してあり、ガッツリ、というよりはふわっと軽い食感で食べやすい。オニオングラタンスープは素材の旨みが溶け込んだ、濃厚ながら優しい味わいだ。パフェは生のイチゴやソルベなど、甘酸っぱくさっぱりとして、食後にちょうどよかった。

店舗に関しては大きな増減なく展開しているが、改装や移転に力を入れている。創業の頃はモータリゼーションを背景にロードサイドを中心に広がってきたものの、現在は施設内、ビル内の店舗が増えてきているそうだ。

「家族にとってハレのイベント、例えば誕生日は食事単体では成立しない。ショッピングセンターなどで1日楽しく過ごして食事もするという具合に変化している。それに従い、出店のモデルも変えていく必要がある」

今後は商業施設内に、グループ内の複数ブランドを並べて出店する可能性もあるという。広い区画を借りると賃料の面で有利になるという資金上の理由もあるが、大きな狙いは相互のブランドイメージや認知度アップだ。

「例えばてんや、シェーキーズ、シズラーもロイヤルグループだということはあまり知られていない。グループとしてのブランド力を訴求することで、それぞれのブランドの価値をアップできると考えている」

もう一つの柱、物販

コロナ禍で本格化した食物販事業は、もう一つの柱として成長してきているそうだ。立ち上げ当初は新たな冷凍食品ブランドとして展開していたが、現在はロイヤルホストブランドに組み込む形で「ロイヤルホスト デリ」として訴求を強め、ECのほか、店頭の物販コーナーでも展開している。

「ロイヤルホスト デリ」を店舗でも展開(写真:ロイヤルホスト)

ロイヤルホスト馬事公苑店のロイヤルホスト デリ(写真:ロイヤルホスト)

「コロナ禍の終息と共に世の中の冷凍食品の売り上げは下がってきているが、当事業は売り上げを維持している。店舗で召し上がった商品を購入する方もいる。余韻を楽しむという意味があるのではないか」

同チェーンのような歴史のあるブランドでは、客の高齢化が課題となり得る。川勝氏も注目しているところで、喫茶メニューなどで若い世代の取り込みを図っているそうだ。

ロイヤルフードサービスの川勝邦弘社長(撮影:今井康一)

「実は何十年も前から『若年層に受けていない』ことは社内で課題となってきた。しかし実際に顧客満足度アンケートを見ると、家族で来た幼い頃の記憶が懐かしく、自分の家族と一緒に来た、という例が多い。3世代が集まるのは週末、お盆、お正月という最大繁忙期。お客様は最大の期待感を持って来られる。そこで良い体験をしてもらうことで未来の顧客ができると考えている」

225gアンガスサーロインステーキ(写真:ロイヤルホスト)

幼い頃の幸せな体験を、大人になっても変わらず味わえること。そのブランド価値を社会の変化の中でも堅持したことが、ロイヤルホスト成長の大きな理由となっているようだ。