うちの子もハマってる「ボンボンドロップシール」大ブーム! 親子で「金銭教育」のチャンスである理由
1シート1000円が2000円以上に? 大ブームの「ボンボンドロップシール」を巡る転売やニセモノ騒動。投資のプロ・泉美智子さんが、この現象を「生きた経済学」として徹底解説。親子で「需要と供給」や「価値の正体」を学び、賢い消費者になるためのヒントを届けます。

(写真提供:泉美智子)
「またボンドロ買って! って言われた……」「フリマアプリの値段、高すぎない?」 小学生から大人までを虜にする3Dシール「ボンボンドロップシール(ボンドロ)」の熱狂。
シールがないと友達の輪に入れないという子どもの訴えで、親がシールを入手するために必死になっています。
なんとかしてシールを買うために、入荷状況を問い合わせる電話をかけまくったり、開店前の店に並ぶ「開店アタック」をしたりするので、電話対応で通常の業務が圧迫され、近隣からは苦情が寄せられるなど販売店側も疲弊。そのためロフトやしまむらをはじめ、シールの販売を中止する店舗も出てきました。
シールを盗まれたり、交換でもめたりする子ども同士のトラブル、ニセモノを定価より高く売ろうとしていた男性2人が逮捕される事件も起きています。親としては、高額転売やニセモノの出現に戸惑うことも多いでしょう。
『投資の超基本』の著者で「動く図鑑MOVE『お金と経済』」の監修者・泉美智子さんは「このブームこそ、生きた経済を学ぶ最高の教材」だと語ります。泉さん自身、小学3年生の孫・かのんちゃんを通してボンドロに触れる中で、教科書では学べない「お金の仕組み」を実感しているそう。
なぜ転売価格は上がるのか? ニセモノを買うとどうなる? 親子で楽しみながら「賢い消費者」への第一歩を踏み出すための、ボンドロの経済学を開講します!
最高4倍にまであがった転売価格
──小学生や平成女子に大人気の「ボンボンドロップシール」や「ぷっくりシール」、「おしりシール」などの3Dシールですが、お店では1シート550〜1000円の定価で売られています。ところがフリマアプリでは1シート2000円以上と、定価の2〜4倍くらいの値段がついています。どうしてそんなに高い値段になってしまうのでしょうか?
なぜ定価の4倍に? 転売価格が跳ね上がる「需要と供給」のカラクリ
泉:高いお金を払っても「欲しい」という人がいるからです。経済学の基本である「需要と供給」のバランスですね。転売されている値段が高くなるのは、急激に買いたい人(需要)が増えて、シールの生産(供給)が追いつかなくなったからです。

需要と供給のしくみ「動く図鑑MOVE『お金と経済』」より(P.107)イラスト:川端修史
泉:買えないとあきらめる人が多ければ、そのうちシールの生産が追いついて、買える人が増えます。でも「みんなが持っていないものを持っている」という見せびらかしの消費、経済学では「有閑主義」といいますが、「みんなが買えない」「売っていない」ことがひとつの価値になっています。
そこが令和のシールブームの特徴で、小学校時代にシールブームを経験した20代女性、それから20〜30代の親世代も子どもと一緒に夢中になっているから、高い値段でも買える人がいる。子どもだけの世界だったら、ここまで高値にならなかったかもしれませんね。
ブームの要因は3つあります。
1つ目は「希少性」。「みんなが持っていないものを、自分は持っている」という価値観が、コレクション欲につながっているのでしょう。
2つ目は「オリジナリティ」。どんなシール帳を使っているか、表にはどんなシールをどんなふうに貼っているか。またシール帳にキーホルダーなどを着けて「自分だけのもの」にアレンジするのが、楽しみになっていることです。
泉:3つ目は「承認欲求」。「入手困難なシールを苦労して入手した」ストーリーに対して「すごい」と言われたり、集めたシール帳の出来映えをほめられたりすると、うれしくなるでしょう。
特に今はSNSでいろんな人に向けて発信できるし評価が数値として可視化されているので、ブームに乗っかって投稿がバズれば、その人の注目度も上がりますから。

かのんちゃんは、シール帳に青い花のキーホルダーをつけている。(写真提供:泉美智子)
お店で売るときの価格が変わらない理由は?
──なぜ、お店で売る価格が変わらないのですか?
泉:お店がメーカーや卸業者から商品を買うときの「仕入れ額」は、ブームに左右されないからです。
商品の価格設定は最終的にお店が決めますが、メーカーが卸業者や小売店に商品を売るときには「希望小売価格」をしらせます。お店はその金額を参考にして、仕入れ額に、お店で働く人に支払う給料などの「人件費」、お店をやるのにかかる「家賃」や「光熱費」、「備品費」、さらにお店の「もうけ(利益)」を足して、売値を決めます。
ブームに乗っかって値段を高くするというのは、「もうけ(利益)」の部分を増やすことになります。

商品の値段が決まる仕組み「動く図鑑MOVE『お金と経済』」より(P.107)
──もしお店が、フリマアプリと同じように高い値段で売ったらどうなるでしょうか?
泉:高くても売れるブーム中は、もうかるかもしれません。でも流行には必ず終わりがありますから、ブームが去ると「あの店は流行るとすぐ値上げする」という悪い評判が立って、そのお店で買い物をしたいと思う人が減る可能性があります。
お客さんが減れば商品が売れないので、もうけが出ません。もうけがないと、仕入れ費用はもちろん、人件費や家賃なども払えなくなりますから、お店を続けることができなくなります。そうなれば、結果的にお店は「損」をします。
だからお店側の対策としては、「お一人さま1枚まで」と購入できる枚数を制限したり抽選をしたりして、「公平性」を重視した方法を取っているというのが現状でしょう。
転売する人がもうかるのは、需要と供給のバランスが崩れている商品の希少性を利用して、価格をつりあげているから。これも「市場の原理」です。供給量が少なくても買う人が多ければ価格は上がり、供給量が増えれば希少価値が失われて価格が下がって、適正価格に落ち着きます。
流行には必ず終わりがありますから、「いつ買うか」「金額はいくらまで出せるのか」を見極めるのは消費者です。だからみなさんには、価値の勉強をして賢い消費者になってほしいと思います。
ブームが終わりに近づけば、自然と値段も落ち着いてきますから、焦って手に入れようとせずに待つのも選択の1つ。「買い時」を見極める力を養う、良い機会になりますよ。
「レート(希少価値)」とは?
──シール交換は「物物交換」ですが、「交換レート」があるそうです。投稿サイト「発言小町」に保護者が、相手の子がお菓子の付録のシール、自分の子はキティちゃんのウォーターシールを交換して、後日相手の親御さんから菓子折り持参で謝罪されたと投稿して、話題になりました。
まさに今、ともだちとシール交換を楽しんでいる泉先生のお孫さん、かのんちゃんは「レート」を知っているのでしょうか?
泉先生……かのんは「レート」って知っているの?
かのんちゃん……よくわからない。お気に入りはあるけど……。

かのんちゃんの最近のお気に入りは、ぷにぷにした触り心地のシリコン素材がついた「肉球シール」。(写真提供:泉美智子)
泉先生……そうよね。小学3年生だと、価値はまだちょっと難しいね。
一般的に、ものの価値はみんなが欲しいものほど高くなります。シール交換の場合は、交換の場でシールを出したときに決まっていくので、同じシールを出しても、その場その場で交換レートが変わります。
子ども同士の小さなコミュニティでも市場が形成できるし、市場の原理も働く。世代やコミュニティによって「もの」が変わっても、交換の文化はずっとありましたよね。
──確かに、絵画や宝石など高価なものから、カードゲームのカードやコインなど安価なものまで、世の中にはコレクションされているものがいっぱいあります。ブームになっていなくても、交換市場はいたるところに存在していますね。
泉:そうなんです。みんなにとって価値のあるものが欲しいことと、ブランド物を欲しいということと原理は同じです。
ブランドには、ブランドの価値を守るための商標権や知的財産権があります。無断で類似品を作ることを許すと価値が損なわれる「商標の希釈化」が起こるため、特許などを取得して権利を保護して、ブランド物を持つ人のステータスが損なわれないようにしています。だから、ブランド物のニセモノを売ったり買ったりすると犯罪になります。
ボンドロシールはこの立体感が特徴です。そもそも日本の立体シールの原点は、1980年代に小中学生の間で爆発的に流行した「スポンジシール(ぷっくりシール)」らしいので、「ボンドロシール」自体にも権利がありません。
ですから、ニセモノや類似品が出てくるのを止めることができないのが現状です。
ニセモノが本物を駆逐する? 市場の原理
──法律違反ではなく、「それを買いたい」という消費者がいれば、類似品がある方が「手に入りやすくなる」ので、消費者にとって良いことになるのでは?
類似品やニセモノを放置すると消費者も損をする!
泉:経済学には「レモンの原理(レモン市場の法則)」という理論があります。
例えば中古車は、買う人がパッと見ただけでは、商品の良し悪しがわかりづらいものがあります。
売る人は、商品の品質について詳しい情報を持っている一方、買う人はそこまで商品に詳しくないし、売り手と同じ情報を得るのはほぼ不可能なので、買い手にとっては不利な状況になります。これを経済学で「情報の非対称」といいます。
──売り手と買い手が持っている情報が、かなり違うということですね。買うときに、売り手がきちんと情報を教えてくれればよいですが、信用できない人だったら、「だまされるかもしれない」と警戒します。
泉:そこが「レモンの原理」のポイントです。
「良いものは高く、悪いものは安く」が正しい値つけですが、品質が悪くても高く売ってやろうと考える売り手もいます。そうなると買う人は「外れ」を引きたくないので、商品全体を見て「高いもの」と「安いもの」ではなく、その中間のもの(平均的なもの)を選ぶようになるんですよ。
──双方に損が少ないなら、良いことだと思いますが……。
泉:でも、本当に良いものを売りたい人にとってはどうでしょうか?
良い商品を、品質に見合った値段で市場に出しているのに、買われるのはごく平均的な品質のものばかり。売れるものに値段を合わせれば売り手が損をするので、その市場から撤退します。その結果、市場には質の悪い商品だけが残るようになる、という悪循環が生まれるのです。
──商品の質が落ちると、一部の人はその売り手から買わないという選択をすると思います。行きつけのレストランがあったけれど、味が落ちて行かなくなるみたいなことと同じでしょうか?

シール帳にシールを貼りかえていくのも楽しみの1つ。(写真提供:泉美智子)
泉:そうですね。ただ小学生では、ニセモノができる仕組みまでは理解できないと思いますし、今、楽しい時間が過ごせていればだいじょうぶだと思います。マイナスよりもプラスの面に目を向けて、ボンドロシールの流行についておさらいしましょう。
シール交換の良い面は、シールがコミュニケーションツールのひとつになっていて、特に経済の知識がなくても、経済の基本を学べる最適の場であることです。
シールそのものが欲しいという欲求だけでなく、希少価値の高いシールを持っていることで満足を得る「イミ消費」や、みんなでシールを持ち寄って「かわいいね!」「それいいね!」と楽しくおしゃべりする体験を重視する「エモ消費」いう側面もあるでしょう。
それを含めたシール交換の思い出が、後で経済を学んだときに「ああ、これはシール交換のことだ!」と理論にはめられるときが来ます。それが「生きた経済の勉強」なんです。
──子ども時代の体験が、大人になってから活きるということですね。
泉:日本では2022年4月の成年年齢18歳引き上げに対応して、ようやく家庭科や社会科、総合の授業で「消費者教育」が始まりました。消費者が賢くなれば、価値に見合った値段を自分自身で判断することができるようになります。
ですから、シールやカード、ゲームなど子どものうちに失敗と成功を繰り返しながら、「自分にとってのものの価値」をつくっていってほしいなと思います。
手作り立体シールの出現は必然だった!?
──ブームの過熱で、ボンドロシールが手に入りづらくなったタイミングで「手作り立体シール」が話題になりました。通常のシールやイラストなどに、ボンドを盛りつけして乾かしたものです。
泉:手作り品には「世界にひとつしかない」価値があります。手作りの喜びや新しい価値が生まれるという現象も、ボンドロシールのブームで学べることのひとつ。他人には価値が低いものでも、持ち主本人が「これは世界にひとつしかない、自分の大切なものだ」と感じることも、金銭教育です。
ただし手作りシールを販売するのは、法律に触れる危険があります。自分の楽しみとして、友達同士の無償交換の場だけにしておいてくださいね。
──気になるのは、手作り立体シールに注目が集まった結果、ボンドも不足するという現象が起きたことです。意外なところに影響があるんだと驚きました。
泉:ある商品が売れたことで、別の商品の売り上げにも影響することを、経済学では「波及効果」といいます。常にいろいろなものが動いているというところが、経済のおもしろさなんですよ。
【投資の目】ブームに乗った会社の株は「買い」か?
──ボンドロシールがブームになったから株価が高くなるかもしれない、と思って株を買うのはアリですか?
泉:残念ながら、ボンドロシールの開発・製造元の株式会社クーリアは上場していないので、一般の人が自由に株を売買することができません。
──そうなんですね。残念!
泉:あきらめるのは早いですよ。シールを裏返して、台紙を見てみましょう。そこには「株式会社クーリア」の名前ではなく、「BANDAI NAMCO」のロゴと「サンスター文具株式会社」の名前が大きく印刷されています。

商品には、必ずどこかに商品情報が記載されている。ボンドロシールは台紙の裏側に、取扱注意や素材、バーコード、製造元情報、権利表記などが印刷されているので、親子で「どんな情報が書かれているのか」一緒に見ると勉強になる。(写真提供:泉美智子)
──本当ですね! インターネットで調べると、ボンドロシールは<製造元>株式会社クーリア、<販売元>サンスター文具株式会社になっています。そしてサンスター文具株式会社は、バンダイナムコホールディングスの連結子会社になっていて、こちらも株式が公開されていません。
泉:ボンドロシールの場合は、株を買って製造会社を応援する道はなさそうですね。でも、大好きな商品を売っている会社の株を買いたいという気持ちは、とても良いことです。
私は、セミナーで初めて株を買う子どもたちに教えるときに、「その会社を応援したいと思う?」と問いかけるところから始めています。やっぱり自分が応援したいと思っている会社なら、株価の変動も気になるし、いろいろ調べるでしょう。子どもたちは、「利益率何%」と言われてもチンプンカンプンですから。
アメリカでは、働いている会社の株を社員が購入する「持ち株制度(主に「従業員持ち株会」)」があるところが多いです。会社が成長すると自分にもメリットがあると考えると、働くモチベーションも高くなるでしょう。株を買ったからには、株価が上がって欲しいわけですからね。
今回は、シールブームに引っ張られて「文具」市場全体が活性化するという動きも見られたので、上場している文具メーカーの中で、自分が応援したいという企業を探してみてはどうでしょうか?
──なるほど。株価が上がりそうな予感みたいなものはありますか?
泉:それがあったら、誰も損をしないでしょうね(笑)。
大切なのは、今ではなく未来です。繰り返し言っているように、ブームはやがて去ります。去った後に、その会社が次のヒット商品を生み出す力があるかどうか、いろんな情報を集めて予想することが大切です。株を買っても、配当金がもらえるのは早くて半年から1年先。そのときにブームが去っていて株価が下がってしまったら損をします。
株価が上がることと、配当金が出ることは別問題で、必ず配当金がもらえるわけではありません。その会社の商品が配られるというケースもあるようです。
株を買う企業選びについて学生と話したときに、株主優待で商品や商品券がもらえるから、自分が普段使っている化粧品会社やよく行く飲食店の株を選ぶと聞きました。このように、ふだん商品を買ったりお店で食べたりという行動にプラスして、株を買って大好きな企業を応援しようという気持ちで、投資をスタートするのがよいと思います。
──投資商品を買えばいいか悩んだ場合は、専門家が運用をする「投資信託」を利用するのも、ひとつの選択ですね。また特定の推し企業を直接応援する場合は、事業の内容や将来性などの情報を集めることが大事ということですね。ありがとうございました。
泉:「価格」は経済の基本であり、価格がどうして決まるのかを探るのはとても楽しいことです。
なぜ同じものでも値段が違うのか、その中から自分はなにを選ぶのか。そうやって連想していくのが経済学の第一歩になります。「ボンドロシール、高くても買うのか? 手作りするのか?」、自分で考えて答えを出して、行動してみてください。
撮影/安田光優