「主婦は退職できないんです」「こんなマミートラック、我慢ならない」忙しい日本の女性たちのホンネを「女性の休日」に聞いてみた

東京・新宿駅前で行われた「女性の休日」のアクションに参加した人たち=6日夕
女性たちが仕事や家事、育児を一斉に休んだら、日本社会はどうなるか―。こんな問いを突きつけ、女性たちが実際に何かを休み、語り合うことでジェンダー平等を目指すアクションが、3月8日の国際女性デーに合わせて全国で行われた。
その名も「日本版『女性の休日』」。
モデルは北欧アイスランドで約50年前、全女性の9割が参加し、家事などをボイコットしたとされる事実上のストライキだ。かつては男女賃金格差が大きく、家事などの家庭内ケア労働を女性が担うことが多かったアイスランド。「女性の休日」を経て改革が進み、今や「ジェンダー平等先進国」として知られている。
家事、育児を負担する時間が長く「世界一忙しい」とも言われる日本の女性たちは、何を「休み」、どんな願いを込めたのか。(共同通信=渡辺顕子、伊藤光雪、池上いぶき、瀬尾遊、小林道、諏訪圭亮、古俣友理)

東京・新宿駅前で行われた「女性の休日」のアクションに参加した人たち=6日夜
▽男女格差「世界最小」の国で
「かつてはアイスランドも今の日本のような状況だったが、女性たちがつながり、動いた」
2月24日、全国一斉アクションを呼びかける東京都内の集会。登壇した弁護士の太田啓子さんが訴えた。「いろいろな抑圧や『こうであってほしい』という思いを形にして、一緒に動く仲間がいると感じられれば」
1975年10月24日、格差解消を求めてアイスランドで行われた「女性の休日」は、後の改革につながった。アイスランドは現在、世界経済フォーラムの「男女格差報告」で最も格差が小さく、16年連続1位だ。
時を経て知られることになったのは、米国人監督が制作した同名のドキュメンタリー映画がきっかけ。日本では昨年10月以降、全国で順次公開中だ。各地で感想をシェアする会が開かれ、共感した人たちが今回の「日本版『女性の休日』」アクションで立ち上がった。
何を「休む」かは人それぞれ。仕事でも、家事でも、心をほっと休めるでもいい。今年の国際女性デー前後に、日本各地で企画されたアクションは200以上。国際女性デーを控えた6日には、全国で100を超えるイベントが企画された。

「今日は家事も仕事も休みます」と書かれたプラカードを掲げて行進する女性ら=6日午前、宇都宮市
▽女性たちは休めたのか? 各地で聞いた
経済協力開発機構(OECD)の調査によると、日本の女性の家事や育児など「無償労働」時間は、男性の約5倍に上る。睡眠時間も加盟国最低レベルの短さだ。
忙しい女性たちは本当に休めたのか―。6日、各地で記者が話を聞くと、人生からにじみ出た「もやもや」や憤り、ジェンダー平等への願いが聞こえてきた。
【@宇都宮】
宇都宮市中心部では6日午前、リレートークや行進が行われた。集まったのは約80人。「今日は家事も仕事も休みます」と書かれたプラカードを掲げる人もいた。
☆栃木県那須塩原市の女性漫画家(40)☆
「今日は強いて言うなら仕事を休みました。
私の母は専業主婦で、家事のほとんどを担っていた。父は仕事を退職した後、手伝えるのに何もせず、母の家事負担は変わらない。主婦は退職できないんです。
女友達を見ていると同僚の男性より出世が遅い。友達は優秀で、資格を取ったり試験を受けたりして、今は会社で必要とされる存在になった。そこに至るのに必要だった努力の量が男性と違う。
今日のようなイベントをきっかけに、まず現状に気づいてもらうことが第一歩。女性の負担が当たり前だと思われていることに社会に気付いてほしいなって思います」
☆宇都宮市の女性会社員(47)☆
「今日は有給を取りました。夫と保育園に通う娘との3人暮らしで、今週末も夫に家事や育児を託して出かけます。
以前は夫と同じ会社に勤め、唯一の女性管理職でした。子どもができて育休が終わると、管理職を外されて、悔しかった。『こんなマミートラック、我慢ならない』と夫に言って転職しました。
みんな、『自分が頑張ればいい』と思いがちだけど、両立の難しさは構造の問題だと思う」

「女性の休日」に合わせた行進に参加する女性ら=6日午前、宇都宮市
【@新宿】
東京・新宿駅前では6日夜、数百人が集まった。次々とマイクを握った女性らは「保育園の送り迎えは女性ばかり」「ヘルパーが仕事に来なかったらどうなるか」と訴えた。
☆横浜市の50代女性☆
「今日は仕事を早引きしました。家事は休んだわけではないが、夫が『ご飯作るから行っといで』と送り出してくれた。
選択的夫婦別姓の実現を何よりも望んでいる。最初は事実婚だったが、仕事を辞めて学校に通うことになった際、夫の扶養に入るため不本意ながら入籍した。子どもに同じ思いをしてほしくない。姓を変えている自分と、変えていない夫を比較して、夫を恨んでしまうこともありました」
☆市役所職員の男性(46)☆
「同僚の女性にすすめられて参加しました。
海外のように『女性の休日』が認知されてほしい。…と、言いながら自分も、家事や育児をフルタイム勤務の妻に任せてしまっている。変えられるところは変えたい」
☆50代の女性フリーター☆
「今日は転職活動を休みました。
去年まで女子大で事務職をしていたが、お金がなくて退学する子もいた。高卒女性の賃金はとても低い。自分も非婚で非正規だったので引き留めたけど、どうしようもなかった。結婚しないと生活が危ういというのはおかしいと思う。
妊娠を理由に早期に仕事を辞めざるを得なかった同僚の姿も見てきた」
▽企業はどう取り組むべきか
【@オンライン】
男女格差のない働き方を実現するために、企業の側はどうすべきか。オンラインでは6日夕、「女性の休日」の映画を基にジェンダー平等を考えるイベント『働き方未来会議』が開かれ、各界で取り組むトップらが意見を交わした。
☆コンサルティング会社「ワーク・ライフバランス」社長の小室淑恵さん☆
「残業時間を短くする工夫をした企業では、女性役員や男性の育休取得、給与が増えて、業績も好調になっている。
他国では、夫婦両方の労働時間を法的に下げることで、複数の手で育児ができる社会を設計している。日本は逆に、長時間労働社会に女性を合わせてしまった。今の働き方は変えていくべきだ」
☆NPO法人「ファザーリング・ジャパン」理事の川島高之さん☆
「私自身、総合商社で24時間闘ってきたが、子どもが生まれて家事や育児をやるようになり、人生が豊かになった。
男性が家事や育児をやることが自分にプラスになると広めることがジェンダー・ギャップ解消につながると思う」

理想の未来をイメージしたコラージュを制作し、発表する参加者=6日午後、名古屋市
▽鮮やかな未来を
【@名古屋】
名古屋市では6日昼、思い描く未来をマップにするワークショップが開かれ、経営者や子育て中の女性ら14人が参加。「女性の休日」のテーマカラーの赤色にちなみ、赤い服やアクセサリーを身に着けた女性たちが雑誌の写真を切り貼りし、理想の未来をイメージしたコラージュを制作した。
「多様性が受け入れられ、それぞれの居場所がある」「全ての女性が輝いている社会」。参加者は作品に込めた願いを発表し合った。手には、未来に込められた希望のような、色鮮やかなマップが示されていた。
主催団体の中川桂太さん(40)は「いきなり社会は変わらないが、今日のイベントが行動を起こすきっかけになってくれたら」と期待を込めた。