相続と資産の切り崩しが同時に始まるから難しい…60歳で激変する投資の常識【資産運用会社社長がズバリ回答】

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投資についてよくわからなくても、とりあえず分散と長期運用を心がければ、積み立てNISAのハードルは高くない。しかし、60歳を迎えた頃から投資は一気に難しくなる。親からの相続と資産の切り崩しが同時に始まる60代は、お金とどう向き合えばいいのか。資産運用会社社長が回答。※本稿は、実業家の中野晴啓『貯め方・使い方の不安がスッと消える!女子が自分らしく生きるためのお金計画』(翔泳社)の一部を抜粋・編集したものです。

いざお金が増えてくると

使うのが惜しくなる

 人生100年といわれるようになって久しいので、それに向けてお金を貯めたり投資をしたりする人もたくさんいます。でも、増やすことが目的になり、死ぬ直前が一番金持ち!というケースも少なくありません。もちろん、いつ死ぬかはわからないので、いつか使おうと思っていたのでしょうが、その「いつか」を迎える前に人生が終わってしまう。そんなことも起こり得ます。

 それまでお金を増やすために我慢していたこともあるでしょう。もしかしたら人生の楽しみを犠牲にしていたかもしれません。でも、お金が増えていくと、増やすことが目的になってしまう……。

 皆さんが、増えたら使うのがもったいないと思ってしまうのは、不思議なことではありません。お金は使ったら減りますし、減ったら不安になりますからね。

 でも、将来自分が使うためにお金を育てるという目的は、絶対に見失ってはいけないんです。お金は墓場に持っていけません。まずは、「お金は使うために育てている」という大きな指針を持ち続けましょう。

 将来のために増やしているお金は、すぐに使わないのが理想です。だって、将来のためなんでしょ?という話だからです。その将来は30年、40年という長い時間軸になることもあります。

使うタイミングを決めてから

投資を始めることが大事

 一方で、例えば子どもの学費のためであれば、時間軸はもう少し短くなるでしょう。子どもが小学生の時には大学費用のことを考えるので、10年くらい先が「将来」になりますね。そしてそのタイミングが来たら、気持ちよくお金を使っていきましょう。

 でも、もし2年、3年先を考えているなら、それは投資に回すべきではありません。その期間では長期投資にはならず、その時の相場状況に結果が依存することにしかならないからです。このくらいの期間ではむしろ、減っているかもしれません。もちろん、相場が大きく下がる可能性も考慮する必要があります。それならば、貯金をして2、3年後に使ったほうがいいと思います。

 私自身の話をすると、長期投資を始めたのは25年ほど前のことです。30代半ばの頃で、当時は先々の不安をどうやって解消しようかなと考えていました。その時に長期投資をスタートしたので、これに使おう!という具体的な目的はありませんでしたね。

 でも、おそらく長期投資をする人の多くも、明確な目的のために続けているのではない気がします。将来、自分が老後を迎えた時に、お金に困りたくないという気持ちが強いのではないでしょうか。お金の不安は一生つきまとうもの。だからこそ、その不安をどうやったら解消できるのかを、みんな必死に考えているのだと思います。その誰でもできる方法が、長期投資ということですね。

定年退職をしても

資産形成は終わらない

 将来のお金を作るために投資を始めたとして、その「将来」が来た場合、どのようにお金を使っていけばいいの?という質問は意外と多いです。

 例えば、65歳で仕事を辞めて年金生活を始め、そこからお金が必要になるケースも多いですよね。では、そのタイミングでスパっと投資をやめて、長い時間をかけて作ってきた資産を全部解約し、貯金をするのかというと、それは適切な選択ではないと思いますよ。

 この場合は、毎月必要な分だけ取り崩して使うことが大切ですね。そうすれば、使わない分はその先も運用が続き、お金は育っていきます。解約してしまうと育てられない、つまりお金が増えないわけですからね。老後は「お金を育てながら使う」という考えが、とても重要になってくると思いますよ。

 65歳までは突発的なトラブルや子どもの教育資金などで投資したお金を使い、それ以降は年金にプラスするイメージで使っていくのが、これからのスタンダードになると思います。つまり、自分がもらえるであろう年金を計算して、100歳まで生きることを前提としたお金の計画が必要になりますね。

 年金の受給額は、毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」で確認ができます。ここには保険料納付額、直近13カ月の月別状況、年金加入金額、これまでの加入実績に応じた年金額が記載されています。それを見ると自分がいくらもらえるのかのイメージがつかめます(35歳と45歳では、これまでの年金加入履歴、全期間での月別状況も書かれています)。

 毎年、ねんきん定期便を見ると、「これだけなの?」と思うこともあるでしょう。でも、逆にそう思うならば、すぐに対策が取れますね。足りないという焦りは、時として今後の原動力にもなります。いい意味で現実を捉えて、しっかりとした計画を立てていきましょう。

株式や投資信託の相続は

ややこしい上に面倒

 亡くなった人が株式や投資信託を所有していた場合、それは相続の対象になり、相続人が相続することになります。相続人には、亡くなった人の配偶者と優先順位が高い人が該当します。

 優先順位が高い人とは、順番に、亡くなった人の子ども、亡くなった人の父母や祖父母、亡くなった人の兄弟姉妹です。もし遺言書を書いていたら、その内容が優先されます。

 株式や投資信託の相続手続きでは、名義変更が行われます。金融機関に連絡して、必要な書類などを確認しましょう。もし金融機関がわからないなら、証券保管振替機関に開示請求ができます。

 ここは、金融機関から預けられた投資家の株式などを集中保管している組織です。開示請求をする場合には、相続人であることを証明する戸籍謄本や本人確認書類が必要になります。

 また、亡くなった人の株式などを相続する場合は、同じ金融機関に証券口座を持っていないといけません。違う金融機関の口座は相続ができないので、新たに証券口座を作る場合もあります。

NISA口座そのものは

相続することができない

 亡くなった人の株式や投資信託を相続した後は、それを売却することもできます。もし値上がりをしていて譲渡所得(売却益)が出るようならば、約20%の税金がかかります。

 NISA口座で株式や投資信託を保有していた人が亡くなった場合、NISA口座そのものを相続人が相続することはできません。

 NISA口座を非課税で運用するには、その口座を持っていた人が生きていることが条件になります。亡くなったのであれば、その日までの運用となってしまうのです。

 相続する場合、亡くなった日の終値で相続人が取得したものとして、まずは基本的に亡くなった人の特定口座や一般口座などのNISA口座以外に移されます。その後で相続人の口座に引き継がれ、課税されることになります。

 相続人のNISA口座に引き継ぐことができればいいのですが、それは叶いません。相続人がNISA口座を持っていたとしても、残念ながらそこに移すことはできないのです。

同書より転載

親がまだ元気なうちに

済ませておくべき手続き

 亡くなった人が投資をしていることを誰も知らなかった。そんなケースもあるでしょう。そうすると誰も金融機関に連絡しないので、毎月の引き落としが続き、運用も継続されます。

 ただ、引き落としは金融機関の口座から行われるので、いつか残高がなくなり、引き落としができなくなりますよね。連続して3回引き落としができない場合は、自動積立が休止されることもあります。その際、金融機関から連絡が来ることがありますが、それでも遺族が気づかない場合もあると思います。

 このようなことが起こらないように、亡くなった人の遺品や書類、パソコンやスマホの閲覧履歴などを調べる必要はありますね。

 また金融機関の通帳や取引を確認すると、毎月引き落とされていた履歴が残っているので、投資していたこともわかると思いますよ。

 NISAで投資をする人が増えている一方で、認知症への不安もあるかもしれません。自分も将来認知症になるかもしれませんが、それよりもまず、親が認知症になる可能性を考える必要性があるのは事実です。

『貯め方・使い方の不安がスッと消える!女子が自分らしく生きるためのお金計画』 (中野晴啓、翔泳社)

 認知症と診断されると、一般的に証券口座の取引が制限されます。認知症になった本人の判断能力が低下しているとみなされ、金融機関が本人の資産を守ろうとするからです。すると、保有している株式や投資信託の売却ができなくなるなどの支障が出てきてしまいます。

 これを防ぐために、自分や家族が認知症になる前にできることの1つが、家族サポート証券口座を作ることです。これは元気なうちに家族を代理人と定めて、公正証書で委任契約を結ぶことです。これによって認知症と診断された後でも家族が口座を管理できるようになります。

 他にも家族信託があります。自分の財産を家族に託して、管理や処分を任せる方法です。これは制度が複雑になっているので、弁護士や司法書士などの専門家に相談したほうが安心でしょうね。

 費用はかかってしまうのですが、後々のトラブルも防ぐことができると思いますよ。