1ドル160円突破…「為替介入」の可能性再浮上も、市場にとっては危険な一手の可能性。イラン情勢と原油高で波乱含みの3月、4月も不安定な展開続く【4月の米ドル/円予想レンジ155~165円の根拠】

(※画像はイメージです/PIXTA)
3月30日、為替相場ではドル/円が1ドル=160円台半ばと、約1年8ヵ月ぶりに160円台を突破しました。中東情勢の悪化から原油価格が高騰し、円売りが進んだ3月。米国株安やスタグフレーション懸念から米ドル売りの動きも強まるなど、相場は不安定さを増しました。また、160円台を突破したことで、再び日本の通貨当局による「為替介入(円安阻止介入)」実施の是非が注目されます。先月の相場を振り返るとともに、為替介入実施の条件と4月の注目ポイントをみていきましょう。マネックス証券チーフFXコンサルタント・吉田恒氏が解説します。
3月31日~4月6日の「FX投資戦略」ポイント
<ポイント>
・3月は主に「中東有事」を受けて米ドル高・円安が拡大し、160円の大台を突破。
・2024年7月に記録したこの間の円安ピーク「161.9円」が視野に入り、為替介入(円安阻止介入)への注目高まる。介入を巡る動向は円・米ドルともに暴落リスクを秘めている可能性も。
・3月の米ドル/円は155~165円と予想。(第1週予想は文末を参照のこと)。
中東有事で米ドル高・円安拡大、1ドル160円台に乗った3月
原油等供給懸念で円売り…米金融政策は利下げから利上げへ見通し転換
3月の米ドル/円は大きく上昇し、この間の高値を更新。27日にはついに1ドル=160円の大台を突破しました(図表1参照)。
主に材料視されたのは、2月末の米国とイスラエルによるイラン攻撃を受けた「中東有事」の発生でしょう。その後、イランがホルムズ海峡の事実上の封鎖に動いたことで、原油等のエネルギー供給懸念が広がり、それが原油等の輸入依存度の高い日本ということで、円売り材料になったと考えられます。

[図表1]米ドル/円の日足チャート(2026年1月~) 出所:マネックストレーダーFX
また、原油等の急騰により、世界的に物価高、インフレ再燃への懸念が浮上しました。こうしたなか、金融政策を反映する短期金利、米2年債利回りも米国の政策金利であるFFレート誘導目標上限の3.75%を大きく上回るまで上昇しました(図表2参照)。

[図表2]FFレートと米2年債利回り(2017年~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成
これは、市場の米金融政策への見方が「次の一手は利下げ」から「利上げもあり得る」へと転換しつつあることを示唆するといえるでしょう。その結果、米金利の上昇に伴って日米金利差(米ドル優位・円劣位)が拡大しました(図表3参照)。

[図表3]米ドル/円と日米金利差(2026年1月~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成
では、この「中東有事」を背景とした金利差拡大と円安基調は、4月以降も続くのでしょうか。
米国株安も拡大…中東情勢は「円売り」「米ドル売り」の両面リスクに警戒
米国等とイラン双方の原油生産施設への攻撃により、原油供給の早期回復は困難である見通しです。そのため、原油価格の下落は期待しづらく、高値圏での推移が続く可能性が高いと考えられます。
これはつまり基本的には、これまで米ドル高・円安を押し上げてきた要因が、今後も続く可能性があることを意味します。
その一方で、エネルギー価格の急騰は米国経済にも悪影響を及ぼすとの見方が強まり、米国株の下落も広がりました。
もし米国株安がさらに続くようであれば、米景気悪化への懸念が高まり、物価高と景気後退が同時進行する「スタグフレーション」への警戒から、米ドルが売られる展開も想定されます。
円安阻止介入実施なら、円・米ドルともに「暴落」リスク
再び意識される「為替介入」実施の是非
それにしても、米ドル高・円安が160円を超えた状況が続き、さらに2024年7月に記録した161.9円というこの間のピークも超えるような展開になれば、日本の通貨当局による為替介入(円安阻止介入)が改めて強く意識される局面となりそうです。
そこで、為替介入実施の可能性と、円安を止めることができるかについて考えてみます。
日本の通貨当局は、2022年と2024年に為替介入を断続的に行い、最終的には円安の阻止、反転に成功しました。この介入を開始したのは、いずれの年も米ドル/円が5年MA(移動平均線)を3割程度と大きく上回った水準でした(図表4参照)。

[図表4]米ドル/円の5年MAかい離率(1990年~) 出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成
一方、それ以前の為替介入は、2010~2011年の円高局面で行われたものでしたが、実はこのときも米ドル/円が5年MAを2割以上と大きく下回った水準で介入が開始されました。
2022、2024年の円安阻止、そして2010~2011年の円高阻止とも、米ドル/円が5年MAから2割以上大きくかい離するなかで介入が始まったのは、当局が介入を成功させるために、相場の“行き過ぎ”を重視していた可能性を示しているのではないでしょうか。
160円近辺の日本単独介入は「失敗」の恐れ
規模が巨大な為替市場において、介入だけで相場の流れを転換させるのは容易ではありません。ただし、これまでの実績を見る限り、米ドル/円は5年MA±3割以上にかい離するケースはほとんどなく、2~3割のかい離が“行き過ぎ”の限界圏だったとみられます。
当局は円安・円高のどちらを阻止する際にも、この“行き過ぎ”を逆手に取る形で、介入のタイミングを見極めてきた可能性があります。
では足下はどうかというと、160円という水準ではありますが、米ドル/円は5年MAを15%程度上回っているに過ぎません。
「行き過ぎ」を逆手にとるという考え方からすると、足下の5年MAは140円程度なので、少なくとも2割以上上回る170円前後までは、米ドル売り・円買い介入に踏み切らない可能性があります。
逆にいえば、170円に達する前の水準で介入を行った場合、円安阻止は「失敗」に終わる懸念もあると考えられます。
4月の米ドル/円は「155~165円」と予想
1月23日、米ドル高・円安が160円に迫る局面で、日本とともに米国の通貨当局も「レートチェック」に動きました。これは介入の前段階という見方の強いもので、2024年までは日本単独で行われてきた円安阻止が、今回は「日米協調」の形でけん制に転じたことになります。
つまり、すでにこの時点で、160円程度での日本単独の円安阻止は困難との自覚が日米双方にあった可能性があります。
では、早期に米ドル売り・円買いの日米協調介入が実現する可能性はあるのでしょうか。
1月23日、米当局が「レートチェック」に動くと、米ドルは円以外の通貨に対しても急落しました。間もなく、ベッセント財務長官は米ドル売り介入の可能性を否定したうえで「強い米ドル政策」に変わりはないと明言するなど、事実上の「米ドル安けん制」を行いました。
以上のように見ると、米国が円安阻止のために実際の米ドル売り介入に踏み切るのはやはり容易ではなく、仮に実施した場合には、円安阻止以上に米ドル急落リスクが拡大する可能性も考えられます。
その意味では、160円近辺での日米の為替介入を巡る動向は、円と米ドルともに暴落リスクが現実化するきっかけになる可能性を秘めているのかもしれません。そういったことを踏まえ、4月の米ドル/円は「155~165円」と予想します。
今週の米ドル/円は「155~165円」と予想
4月第1週となる今週は、3日に発表予定の3月米雇用統計をはじめ、注目度の高い米経済指標が予定されています。また、イラン情勢や原油価格の動向、さらに米国株安の行方にも引き続き目が離せない状況になりそうです。
そしてすでに述べてきた円安阻止の為替介入を巡る動きは、円安、円高の両方向で大きく荒れる要因になりそうです。以上を踏まえ、今週の米ドル/円は「157~162円」と予想します。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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