ドローンを安価に迎撃、新ミサイルの開発競争進む
米国は現在、イラン製の安価なドローン(無人機)を100万ドル(約1億6000万円)以上もするミサイルで迎撃している。これに対し、米航空宇宙局(NASA)の元エンジニア、ジェーソン・コーネリアス氏(30)が率いる新興企業パーシアス・ディフェンスは、テキサス州で1万ドル(約160万円)のミサイルを製造している。
同社は、現代の戦争で急増しているドローンを迎撃するために安価なミサイルの開発を競う、数多くの新興企業や大手防衛請負会社の一つだ。
中東とウクライナでの戦争は、供給が限られた高性能ミサイル(1発当たり数百万ドルするパトリオット迎撃ミサイルなど)が、わずか数千ドルで量産されるドローンに対する防衛に使われるという問題を露呈した。
新興企業は現在、設計の見直しや既製部品の使用、製造自動化への切り替えを通じて価格を引き下げており、近いうちに数万ドルのミサイルの大量生産が可能になるとしている。これまで、ミサイルの価格は数十万ドル以上だった。
コーネリアス氏は「ウクライナの現状を見て分かったが、安価な対ドローン技術へのニーズが満たされていない」と語る。同氏は昨年、NASAを退職し、パーシアス・ディフェンスを共同設立した。
同社はシンプルなアイデアから始まった。それは、世界中で採用されている防空ミサイル「AIM9サイドワインダー」の小型廉価版を製造できないか、というものだった。製造期間も短くしようとした。
米軍が数十年前から使用しているサイドワインダーは、依然として高価だ。米国は昨年、トルコにサイドワインダー60発を売却したが、その価格は、予備のフロントセクション、交換用部品、訓練込みで約8000万ドルだった。
サイドワインダーのような既存のミサイルは非常に高性能だが、戦闘機などの高価な標的を破壊するために設計されたものだと、コーネリアス氏は言う。「これらは数千発、あるいは数万発という単位で1機5000ドルのドローンを撃墜するために設計されたものではない」
パーシアスの「マイクロミサイル」は長さ15インチ(約38センチ)で、同社によるとドローン、地上車両、船舶から発射できる。射程は約1100ヤード(約1キロ)だ。
確かに、この新世代ミサイルの多くはまだ実戦投入されていない。そのほとんどは短距離の防衛にのみ適しており、性能は高性能ミサイルに大きく劣る。例えば、高性能パトリオットシステムで使用される迎撃ミサイルは、より高速・高精度・長射程だ。弾道ミサイルも迎撃できる。
それでも、ミサイル開発を手掛ける新興各社によると、ペルシャ湾岸諸国や西側諸国の政府から増産を求める問い合わせが相次いでいるという。米国とドイツはいずれも、ドローンに対抗するために設計された低コストミサイルあるいは誘導ロケットを大量に発注している。
第1次トランプ政権下で国防総省の予算担当高官を務めたエレイン・マッカスター氏の分析によると、同省はイランとの戦争開始からわずか4日間で、同国の弾道ミサイルおよびドローンを撃墜するために約57億ドル相当の迎撃ミサイルを消費したとみられる。
湾岸諸国も戦争関連の出費がかさんでいる。サウジアラビアなどの国々はイランのドローンを撃墜するために、1発数百万ドルのパトリオット迎撃ミサイルを何発も発射したり、航空機からミサイルを発射したりしてきた。
米国などの国々は、もっと安価な弾薬を購入する必要性を認識しており、そのために従来の防衛産業以外に目を向けている。
米陸軍のミサイル・火器調達責任者であるフランク・J・ロザーノ中将は最近、上院軍事委員会の低コスト弾薬に関する公聴会で、「小規模新興企業(中略)が国防総省に対し、手頃な価格と拡張性において新たな選択肢となり得るものを提供している」と述べた。
イラン製ドローン「シャヘド」はロシアの同等品と共に、戦争に革命をもたらした。標的に突入するシャヘドは、大量投入することで敵の防衛を飽和させ、高価な迎撃ミサイルの在庫を枯渇させることができる。
費用対効果の高い迎撃ミサイルを開発しているエストニアの新興企業フランケンブルク・テクノロジーズのクスティ・サルム最高経営責任者(CEO)は、ロシアが2022年にウクライナに侵攻し、シャヘドを投入したことを初めて知った時のことを覚えている。
当時エストニア国防省の職員だったサルム氏は「ロシアが兵器として月に100機のシャヘドを発射するなら、欧州の全ての国が問題を抱えることになると思った」と語った。「今では1日に最大400機を発射している」
フランケンブルクによると、同社のミサイルは時速600マイル(966キロ)以上で飛行でき、射程は最大1.6キロだ。価格は数万ドルで、製造には数時間しかかからない。
これは民生品の進歩のおかげで可能になったとサルム氏は言う。ミサイルはかつて防衛産業専用に作られた特注部品を使用して製造されていたが、現在では一部に民生用電子部品も利用できるようになった。
例えば、物体の位置・方向・速度を計算するために使用される慣性航法システムは、当初ロケット用に開発された。現在、多くの携帯電話にそれが搭載されている。

エストニアの新興企業フランケンブルク・テクノロジーズのもとへは、湾岸諸国からの問い合わせが殺到しているという

フランケンブルクのサルムCEO
サルム氏によると、フランケンブルクはすでに2カ国(国名は明かさず)にミサイルを販売しており、湾岸諸国からの問い合わせが殺到しているという。
フランケンブルクなど複数の防衛企業は3月、英政府が同国で開催したイベントで湾岸諸国の当局者らと接触した。
とはいえ、安価なミサイルであっても他のドローン対抗手段(信号妨害、銃弾、迎撃ドローン)に比べると高価だ。
だが、精度が最も高いのはミサイルだ。通常、銃弾よりも射程が長く、迎撃ドローンと違ってあらゆる天候で機能する。オランダ国防省の研究・訓練機関「オランダ国防アカデミー」のミサイル専門家、ラルフ・セーブルスバーグ氏は、ミサイルが一般に高価なのは、構造が複雑で生産量も少ないからだと述べる。
同氏によれば、研究開発とインフラのコストを比較的少数の販売で回収する必要がある。大量生産と異なり、少量生産は専門の作業員によって製造されることが多いという。
需要の急増により、そうした状況は変わるかもしれない。パトリオットシステムの迎撃ミサイルを製造する米ロッキード・マーチンの広報担当者は、米政府による生産加速の動きがコスト削減につながる可能性があると述べた。
他の大手防衛企業も、より安価な選択肢に取り組んでいる。欧州ミサイル大手MBDAは昨年、小・中型ドローンを対象とした安価なミサイル「ディフェンドエアー」を製造する契約をドイツと結んだ。スウェーデンの防衛企業サーブは、自社開発した安価なミサイルを巡って各国と協議している。
英ケンブリッジ・エアロスペースは、3Dプリンティングや人工知能(AI)などの最新技術を駆使して生産コスト削減に取り組む新興企業の一つだと、同社のスティーブン・バレットCEOは話す。
同社は、弾道ミサイルのような高速標的向けに設計されたミサイル「スターハマー」と、ドローン・巡航ミサイル迎撃ミサイル「スカイハマー」を開発している。

ケンブリッジ・エアロスペースが開発したドローン・巡航ミサイル迎撃ミサイル「スカイハマー」
スカイハマーの射程は約19マイルで、価格は数万ドルだ。通常は開発に数年かかるが、スカイハマーは1年以内に初期生産を実現した。
ケンブリッジは新技術の採用に加え、よりシンプルな効率化に目を向けている。例えば、同社のミサイルに使用されているボルトはわずか2種類のみだ。
「あらゆるパーツを結合するのに完璧な手法を追求することもできるが、あえてシンプルに保つこともできる」とバレット氏は語った。