「愛犬と山に移住したい!」→築50年200万円の山小屋を買って愕然…突きつけられた「衝撃の費用」

『犬のために山へ移住する』より 画像提供:穴澤 賢氏

愛犬との快適な暮らしを求めて、山への完全移住を決めた筆者。だが山暮らしでは、物件の価格だけで初期費用の総額を判断することはできない。200万円で購入した築50年の山小屋も、修繕や設備投資を重ねた結果、総額は約1600万円に達した。格安物件に潜む「本当のコスト」と出費の内訳を明かす※本稿は、編集者の穴澤 賢『犬のために山へ移住する』(草思社)の一部を抜粋・編集したものです。

雑草だらけで家はボロボロ

築50年の格安物件を契約

 敷地は足の踏み場もないほど雑草だらけ、傾斜地で家は坂の上、階段は朽ち果てている築50年ほどのボロ小屋だった。

 それでもなぜか妻と私は「ここ、なんかいいね」と初めて意見が一致した。

 価格が安かったこともある。中古車1台買うより安かった。恐らく破格だったのは、家の取り壊し費用を考慮してくれていたのだろう。けれど私は最初から壊すつもりはなく、補修して使うつもりだった。

 その後、管理事務所を通して所有者と契約することになった。条件は、売却する前に必要な物は持ち出すけど、それ以外の荷物は私たちで処分すること。それくらい全然かまわない。

 後日改めて契約書に判子を押して、物件の前に立つと「ここはもう私たちの家なのだ」と、胸の奥からうれしさが湧いてきた。記念に大福(編集部注/著者は飼い犬の大吉と福助をまとめてこう呼ぶ)と写真を撮った。それが2017年5月のことだ。

著者が不思議と心惹かれたという、朽ち果てた階段

 ここからが結構大変だった。まず、朽ち果てた階段を直さないといけない。これは友枝さん(編集部注/移住アドバイザー)が知り合いの大工さんに頼んでくれた。

築年数や劣化、断熱材の有無…

安い物件には必ず安い理由がある

 土地を探すにしても、中古物件を探すにしても、注意しておいたほうがいいことがある。

 それは、安い物件には必ず安い理由があるということ。それは都会でも同じだけど、移住やセカンドハウスとなると、うっかり忘れがちになる。

 山で売りに出ている土地は都会とは比べ物にならないくらい広い。別荘地では一区画が300坪くらい、狭くても150坪くらいはある。それが100万くらいで買えたりするので、思わず「安い!」となるが、そこには落とし穴もある。

 私が物件探しをしているときもそうだったが、150坪で100万の土地があった。

 木々に囲まれた行き止まりで、私はその秘密基地的な感じが気に入ったが、妻は嫌だという。よく考えたら、たしかに鬱蒼としているから日当たりが悪い。ということは冬寒い。敷地にも木が生い茂っているから、家を建てようと思うとまずそれらを伐採しないといけない。それには費用もかかる。

 ただでさえ余裕がないのに、余計なお金は使えない。ということで却下となったが、そういうマイナス要素を不動産屋はほとんど説明してくれない。

 中古物件でも同じだ。予算が限られていたから最初から除外したが、1000万以上する物件もあれば、500万、安いのものだと150万の物件もあった。

 そして安い物件には必ず理由があった。まず建物の築年数と劣化具合、それから断熱材が入っているかどうか、それに日当たりなど様々な要素が考慮されてその値段になっていると思ったほうがいい。簡単にいえば、安い中古物件を買うと、後でそれだけ余計に修繕費がかかるのだ。

 ここでひとつ残念なお知らせがあるが、私が物件探しをしてた2017年頃は安い物件がたくさんあった。けれどコロナ以降、リモートワークが可能になり、移住者や別荘購入者が増えて中古物件そのものが激減しているらしい。

 価格も高騰していて、500万くらいの中古物件なんてもうほとんど出ない。土地だけなら300坪で100万くらいの土地はあるが、そこに新築を建てるとなると寒冷地ならではの費用がかかる。理由は、標高1200m以上は冬の間土が凍るため、基礎をそれだけ深く掘らないといけない。

 それでも都内で一軒家を建てるのに比べたら相当安く済むと思うが、近年の資材高騰で全体的に価格は高くなっている。新築の場合、狭くても最低3000万くらいはかかると思っておいたほうがいい。

下手をすれば冬に凍死する山では

ストーブの設置費用が馬鹿にならない

 偉そうに安い物件には安い理由があると言っている私だが、当時はそんなこと全然意識していなかった。身をもって経験したから断言するのである。

 修繕に関して、わが家のケースを紹介しよう。幸いにも破格の値段の中古物件を手に入れたが、後が大変だった。

 まず困ったのは、雨漏りがひどかったことだ。そのためバケツを大量に買ってきて、雨の日はしのいでいた。そして腰越に帰るときはリビングにテントのようにブルーシートを貼り、家具が濡れるのを防いでいた。

 雨漏りしているなら屋根を修理すればいいが、雨漏りする箇所が特定できないから屋根全面を張り替えないといけない。すぐにその費用を出す余裕がなかったから苦肉の策としてそうしたのだ。

 次に断熱効果だった。夏に山の家を手に入れて、2、3カ月は掃除やらテラスにオイルステインを塗ったり、草刈りしてドッグラン作りに費やしているうちに秋になった。気密性も悪く暖房器具もないため、当初はサマーハウスとして考えていたが、その頃には冬にも来たいと思うようになっていた。大福が山に来る度、イキイキした顔をしていたからだ。

テラスにオイルステインを塗る著者

 となると、暖房器具を用意しないといけない。そこで地元の設備業者に見てもらって相談してみると、担当者いわく、この家に薪ストーブを入れてもそれほど温まらないだろうという。理由は気密性と断熱材で、恐らくこの建物には断熱材は入っておらず、窓もアルミサッシの一枚ガラスだから、いくら薪ストーブを焚いたところで熱がどんどん逃げてしまうとのこと。

 それでは体育館にあるような大きな石油ストーブはどうかと尋ねると、それはあまり意味がないという。なぜなら、一般的な石油ストーブや石油ファンヒーターは定期的に換気が必要で、怠ると一酸化炭素中毒になる。窓を開けて換気すると、一気に冷気が入り込むので、また室内が冷える。

 そして再び温まった頃、換気するとまた冷えるのエンドレスになるというのだ。

 ではどうすればいいかと聞くと、寒冷地仕様のFF式(強制給排気Forced Draught Balanced Flueの略)ストーブというものがあるという。

 壁際に設置するストーブで排気口が外に出ているから換気は不要、燃料は屋外に100リットルの灯油タンクを設置してそこからストーブが自力で補給する。エアコンと同じく設定温度になれば止まり、温度が下がるとまた作動する。それならある程度、暖は取れるのではないかとのこと。

 なぜそんなに真剣に考えるかというと、標高1450mの冬はマイナス15℃くらいになるからだ。暖房器具がないと室内でも凍死するレベルである。ファンヒーターくらいでは到底太刀打ちできない。そこで仕方なく、FF式ストーブを設置することにしたが、設置費用は結構高くついた。

 だから中古物件を買う前に、断熱効果や暖房器具の有無はちゃんと確かめておいたほうがいい。暖房器具だけでなく、あちこち補修したり、リフォームしたり、思いも寄らないことにとにかく費用がかかる。

物件の購入費も含めた

コストは計約1600万円

 山に移住やセカンドハウスを考えている人は、環境だけでなく、かかる費用も気になると思う。鎌倉市腰越に一軒家があり、八ヶ岳にセカンドハウスを手に入れたからセレブだと思うかもしれないが、実は全然そんなことはない。幸いにして格安物件があり、大工さんと出会うことができたおかげで今の状態がある。

 私が山に家を買った時期とは状況が変わり、中古物件の価格が上がっているし、大工さんに直接お願いすることで工務店と比べるとずいぶん安く抑えられたから、いざやろうと思うとこんな金額では難しいと思うので、参考程度にしてほしい。

 というわけで、私のケースを正直に紹介しておこう。

 まず、300坪の敷地に建つ築50年の山小屋は、200万だった。当時はこれくらいの中古物件が結構あったのだ。

 朽ち果てていた階段を撤去して、新たな木製の階段の設置に30万、FF式ストーブに30万かかった。

 次に、雨漏りする屋根の葺き替えが230万くらい。雨漏りはなんとしても直さないといけなかったので仕方ないが、いくつかの業者に見積もりを依頼してみると、それぞれ価格が全然違ったので、何かを業者に頼むときは複数業者に見積もりを依頼することをお勧めする。

 リビングや寝室のリフォーム、私の仕事部屋とサンルームなどに関しては大工さんと相談しながら払える余裕のあるときに少しずつやっていたのでどこにいくらと明確には分けられないが、500万くらいはかかっている。

 近所の人が工務店に頼んでサンルームを作ったが、それだけで300万かかったそうだから、わが家はかなり安く済んでいると思う。

 それから完全移住後にやったリフォームで、風呂場と洗面室に150万、トイレが130万。汲み取り式から合併浄化槽へするのに150万かかったが、これに関しては原村から50万円援助が出たので、実質は100万程度だ。

『 犬のために山へ移住する 』(穴澤 賢、草思社)

 さらに念願の薪ストーブを設置するのに煙突工事も含めて140万円。さらに薪を置いておく薪棚を3台設置したので、それに40万円かかった。

 薪ストーブに付随するチェーンソーが6万、薪割り機が15万、薪を運ぶ運搬機が40万だった。

 ざっと並べただけでもこれだけかかっているが、一度にやったわけではなく、時間をかけて少しずつやってきたことだ。移住後のリフォームに関しては、腰越の家が高く売れたからできたことであり、それがなければ当分先になっていた。

 だから前に述べたように、安い物件は後で補修費用などがかかるから、結局は高い物件を買うのと同じくらいお金を使うことになると思っていたほうがいい。