世界初、オールジャパン体制で4隻の自動運航船の商用運航がスタート。人手不足の解消と事故の減少に期待高まる
2026年3月27日、日本財団は全国各地を航行する複数の自動運航船を陸上支援センターから同時に航行支援する、世界初の試みを公開した。自動運航船の国際ルール制定に向けたオールジャパン体制プロジェクトの第2ステージが順調にスタートしたことになる。

日本財団主導で無人運航船実現に向けたオールジャパン体制を構築
日本は少子高齢化に伴って船員の高齢化が進展し、とくに国内の海運を担う内航貨物船にいたっては、50歳以上の船員が50%を超えるなど、大きな社会課題となっている。
また海難事故の81%が、不十分な見張りや不適切な操船などヒューマンエラーによるもので、船舶の自動化、無人化はこうした社会課題を解決に大きく貢献する可能性があり、国際基準の制定が視野に入る段階なのだという。
そこで日本財団は国内の造船や海運、船用機器メーカーに加え、AI、通信、商社などさまざまな分野の企業で構成された53社の事業体を結成。オールジャパン体制で、日本を国際ルール制定の主導者にするべく、2040年までに内航船の50%を無人運航化する「MEGURI2040」プロジェクトを推進してきた。

旅客船「おりんぴあどりーむせと」は、すでに一般旅客を乗せて自動運航を開始している。
同プロジェクトは3段階にわかれており、2021年度までに既存航路において無人運航実験を行うステージ1、2025年度までに無人運航船の商用運航を実現するステージ2、2040年までに内航船の50%を無人運航化するステージ3という流れで進行される計画だ。
新造船げんぶの強み
今回、記者発表会で公開されたのはステージ2の内容で、建造段階から自動運航システムを搭載する新造コンテナ船「げんぶ」の自動離着桟と運航、洋上航行中の旅客船と貨物船を陸上施設から同時に支援するという世界初の試みがお披露目された。

自動運航のコンテナ船「げんぶ」と左手前のトレーラーが陸上支援施設。
コンテナ船「げんぶ」は、一定条件下で見張り、判断、操船といった船員タスクすべてに加え、操船難易度の高い離着桟も自動化している。これは、自動車業界でいうところの自動運転レベル4に相当し、条件次第では離桟、航行、着桟までの全行程を自動で行えるという。
また、手動運航システムもレイアウトの最適化が図られており、船橋にコクピット型の操船コンソールが設置されている。乗員1名がシートに座ったまま、情報収集、操船、機関監視などを行えるコンパクト設計で、ジョイスティック型操船レバーの採用により、従来型船舶よりも操船しやすい。

シート前方に表示モニター、左右に操作パネルが配置されている。
船橋、機関部を含めた完全自動化は世界初で、新造船だからこそ船内レイアウトの段階から船員の負担軽減を考えた設計が実現したと言えるだろう。操船の簡易化で難易度が低下したことで、すでにいる船員の負担軽減と今後の人材採用の裾野を広げるねらいがある。
さらに、国内法の整備と認証取得も同時並行で進められている。国土交通省海事局と連携し、自動運航船に関する国の技術要件・検査体制が整備されたことで、国内ルール上での商用運航が可能になったほか、船舶保険や融資の前提条件となる船級も取得。商用運航開始しているという点で世界初の事例となるそうだ。
「MEGURI2040」プロジェクトの旗振り役である日本財団の海野常務理事は「造船分野では中国・韓国に差をつけられているが、自動運航システムの開発・運用では世界に大きくリードしている。今後は、日本の自動運航システムを世界標準とするべく、国際ルールの策定にも積極的に働きかけていく」と述べた。
世界初、複数の自動運航船を地上から遠隔支援可能に
現在、日本各地で運航している4隻の自動運航船を遠隔で監視・支援する陸上施設が「陸上支援センター」で、衛星回線を通じて4隻の状況をリアルタイムでモニタリングし、航路計画や機関の遠隔監視を実施する。

兵庫県神戸市にある常設型陸上支援センター。 提供:日本財団
兵庫県西宮市に常設型が設置され、災害時に備えてトレーラータイプの移動型施設も開発されている。今回公開されたのは移動型の方で、常設型と同じ機能がギュギュっとコンパクトに集約されている。

トレーラーサイズの支援施設。

支援センターでは、船周辺の情報や航路計画、機関部のモニタリングなどをリアルタイムで行える。
陸上支援のデモンストレーションでは、常設型の支援施設から瀬戸内海を航行する旅客船「おりんぴあどりーむせと」と「げんぶ」への同時支援が実演され、2隻の状況監視や「おりんぴあどりーむせと」に航路計画を送信する様子などが公開された。

陸上支援センター(左)から洋上を航行する自動運航船(右)に航路情報を送るデモンストレーションの様子。 提供:日本財団
ちなみに、げんぶは建造時から自動運航機能が導入された新造船なので、他の船と比べて陸上支援センターでできる支援の幅も広く、たとえば、入港時に発電機を地上から遠隔で起動できるようになっている。つまり、乗船する当直者が一人で、入港時に休憩している状態でもリモート起動できるので、省人化や船員の負担軽減が図れるのだという。
「MEGURI2040」プロジェクトが成功し、自動運航船の国際ルールの策定と自動運航システムの社会実装がスムーズに進むのか、今後の展開にも要注目だ。