【シンガポール】東南ア、中東情勢で成長鈍化[経済] 4.6%見通し、エネ高騰響く

【シンガポール】東南ア、中東情勢で成長鈍化[経済] 4.6%見通し、エネ高騰響く

シンガポールにある国際調査機関の東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス3マクロ経済調査事務局(AMRO)は、2026年のASEAN10カ国全体の国内総生産(GDP)が前年比4.6%成長するとの見通しを発表した。中東紛争に伴うエネルギー価格の上昇を背景に、25年(推計値)の4.9%をやや下回ると予測している。

6日に発表した26年版のASEANプラス3地域経済見通し(AREO)では、中東情勢によるエネルギー供給不安を反映した。

渡部康人AMRO事務局長兼CEOはNNAに対し、「AMROの基本ラインでは、26年6月頃までブレント原油価格が1バレル=90米ドル(約1万4,300円)超の高水準で推移した後、年末にかけて80米ドル程度まで低下する想定で試算している」と説明。この前提の下で、26年のASEAN10カ国全体の成長率は4.6%、インフレ率は3.1%になるとの見通しを示した。

一方で、「中東紛争が長期化し、原油供給が通年で1バレル=100米ドル超で高止まりした場合、成長率は基本ライン比で0.3ポイント下振れ、インフレ率は0.7ポイント上振れする可能性がある」と指摘した。

さらに、渡部氏は「影響はエネルギーにとどまらず、石油化学製品や肥料、物流、食料価格へと波及し、連鎖的かつ非線形に拡大するリスクがある」とし、経済への影響が広範かつ長期化する可能性に警鐘を鳴らした。

■輸出と内需双方に影響

国別では、10カ国のうちミャンマー、フィリピン、ブルネイを除く7カ国で26年の成長率が前年から鈍化する見通し。このうちシンガポールは26年が3.4%となり、25年の5.0%から1.6ポイント低下し、減速幅が最大となる見込みだ。

ベトナムは7.4%(0.6ポイント減)、マレーシアは4.6%(0.6ポイント減)、タイは1.7%(0.7ポイント減)と、いずれも前年からの減速が予想される。域内最大の経済規模を持つインドネシアは25年の5.1%から5.0%へと小幅な低下にとどまる見通しだ。

一方、ミャンマーは26年に2.5%となり前年を4.0ポイント上回る見込みで、フィリピンも25年の4.4%から5.3%へ伸びが加速すると予想されている。

シンガポールの減速について渡部氏は、「25年の高成長からの反動と、中東情勢の影響の双方を反映したもの」と説明。25年は米国の関税措置を見越した輸出の前倒しや、医薬品分野を中心とした貿易摩擦の緩和、人工知能(AI)主導の半導体需要の拡大により5.0%と高成長を記録していた。26年は、AI関連需要が引き続き下支え要因となるものの、中東情勢や米国の関税の影響を受け、輸出と内需の双方が鈍化すると分析した。

■インフレ加速、政策の柔軟性が焦点

26年のインフレ率は、ASEAN10カ国全体で3.1%と、25年(推計値)の2.3%から上昇する見通し。ASEAN主要6カ国すべてで上昇が見込まれ、フィリピンが3.9%(2.2ポイント増)、ベトナムが3.8%(0.5ポイント増)、インドネシアが2.8%(0.9ポイント増)、マレーシアが2.0%(0.6ポイント増)、シンガポールが1.8%(0.9ポイント増)、タイが1.1%(1.2ポイント増)となる見通しだ。

ミャンマーは24.0%と最も高く、25年の28.0%からは低下するものの、引き続き高水準が続くとみられる。

今後の政策対応について渡部氏は「不確実性が極めて高い中、政策の柔軟性を維持し、スタグフレーション(物価上昇と景気悪化が同時に起きる)の回避が重要だ」と強調した。

財政政策については、「脆弱(ぜいじゃく)な家計や重要部門にしぼった一時的な支援が望ましい」とし、広範な価格抑制策は財政余力を損なう可能性があると指摘。金融政策では、「エネルギー価格上昇に伴う一時的なインフレには過度に反応すべきではないが、コアインフレや賃金、インフレ期待へ波及する場合には、適切に対応する必要がある」と述べた。

さらに、エネルギー危機が長期化した場合には、財政・金融政策の組み合わせを柔軟に見直す必要があるとした上で、「エネルギー源の多様化やグリーンエネルギーへの移行、戦略備蓄の強化、電力網への投資、域内貿易の維持が重要」との認識を示した。

国際調査機関のASEANプラス3マクロ経済調査事務局(AMRO)は、2026年のASEAN10カ国全体の国内総生産(GDP)が前年比4.6%成長するとの見通しを発表した(同機関提供)