ガソリンの転換点か、それともEVの逆襲か――世界の新車4台に1台が電気へ! 中国は過半数突破、電化が進む世界の分断

電化は「量」より「構造」の変化

 国際エネルギー機関(IEA)は、世界のエネルギー動向の分析・統計・政策提言を行う経済協力開発機構(OECD)系の国際機関である。その最新リポート(2026年4月20日発表)によると、2025年のエネルギー需要全体の伸びは1.3%で、過去10年平均の1.4%をわずかに下回った。だが内訳を見ると、これまでとは質の異なる変化が起きている。

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 電力需要の伸び率は約3%と、需要全体の2倍以上だ。供給増分の4分の1以上を太陽光発電が占め、再生可能エネルギーとして初めて成長の首位に立った。新規導入された蓄電池は110GWに達し、天然ガスの追加容量を上回った。

 電気自動車(EV)の世界販売台数は前年比20%超の2100万台となり、新車販売の

「約4台に1台」

がEVになった。2019年以降に導入された低排出技術によって、中南米全体の年間需要に相当する化石燃料の消費が削減されている。エネルギーの転換は、既存の産業の仕組みを実際に変え始めている。

中国でEVが標準になった理由

電化は「量」より「構造」の変化, 中国でEVが標準になった理由, 欧州と新興国の市場動向, 「石油の終焉」も「EVの勝利」も早計

国際エネルギー機関が2026年4月20日に発表したリポート(画像:国際エネルギー機関)

 中国では新車販売の5割をEVが占め、初めて過半数を超えた。価格競争の激化と効率的な供給網の広がりが背景にある。

 内訳を見ると、プラグインハイブリッド車の伸びが4%にとどまる一方、販売増のほとんどをバッテリー式電気自動車(BEV)が担った。商用の大型トラックも前年比3倍の20万台超を売り上げ、ビジネスの現場でも電化が現実的な選択肢になっている。再生可能エネルギーの普及で石炭火力が押し出され、2025年に中国の排出量は減少した。

 中国でEVが広まった理由は環境意識ではなく、

「最も安くて使い勝手の良い移動手段」

になったからだ。盤石な供給体制とインフラを前に、エンジン車は例外的な存在になりつつある。

 2025年の米国のEV販売台数は前年比2%減となった。技術への不信というより、政策の変化が主な原因だ。

 9月に連邦税額控除が打ち切られ、燃費規制違反のメーカーへの罰則も免除された。買い手の購入メリットが消え、メーカーが積極的に売る動機もなくなった。一方、税優遇が終わる直前の第3四半期には過去最高の販売を記録している。

 エネルギー供給面でも逆風が吹いた。天然ガス価格の上昇で石炭火力への回帰が起き、先進国全体の排出量が0.5%増えた。これは1990年代以来初めて、新興国の伸び率(0.3%)を上回る異例の事態だ。米国のEV市場は、政策と電力コスト次第で人々の選択が大きく揺れる不安定な状況にある。

欧州と新興国の市場動向

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国際エネルギー機関が2026年4月20日に発表したリポート(画像:国際エネルギー機関)

 欧州は前年比30%増と高い伸びを見せたが、各国の補助金に依存している実態がある。スペインやイタリアで支援策が再開され、ポーランドで140%増、オランダや英国でも25%超の伸びを記録した。

 フランスのように前年並みにとどまる国もあり、市場が自立して動いているとはいい難い。ノルウェーではBEVのシェアが96%に達し、条件が整えばエンジン車をほぼ完全に置き換えられることが示された。

 中国以外の新興国では前年比80%増という急拡大が起きている。インドの販売台数は230万台と過去最高で、乗用車も7割超増えた。東南アジアではタイ、ベトナム、インドネシア(125%増)を中心に市場が倍増し、中南米ではメキシコが3倍超、ブラジルが4割増、エクアドルが240%増などと各地で伸びている。

 この急拡大を支えているのは、中国国内の競争から生まれた安価な車両だ。新興国の電化は自国の環境政策というより、

「外からの大量供給によって市場が塗り替えられている」

面が大きい。EVの普及は、車の性能向上だけでは語れない。エネルギーを生み出す側の変化と切り離して考えることができない。

 2019年以降に蓄積された低排出技術のなかでも、太陽光発電は年間600テラワット時という過去最大の伸びを記録した。再生可能エネルギーとヒートポンプの普及で、世界全体のLNG輸出量の半分に相当する天然ガスが代替された。

 エネルギー供給の土台が変わり続けるなかで、EVの価値は地域ごとの電気代やインフラの整い具合に応じて変わっていくだろう。今の性能だけを比べるのではなく、供給の仕組みがどう変わっていくかという視点で見る必要がある。

「石油の終焉」も「EVの勝利」も早計

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世界エネルギー転換の現在地 2025-2026。

 EV普及を「石油時代の終わり」と即断するのは早い。2025年の世界の石油需要は前年比0.7%増えており、石油への依存は続いている。一方でエネルギー需要全体の増加分の約6割を再生可能エネルギーと原子力が賄い、二酸化炭素排出量の増加は0.4%にとどまった。こうした数字が示すのは、

「エネルギーの転換が地域や用途によって複雑に進んでいる」

という現実だ。市場は石油か電気かの二択で動いているのではなく、

・電力の中身

・資源の価格

に応じてその時々に最適なエネルギーを選んでいる。電化は、供給の安定と多様性を高めるための選択肢が増えたと捉えるのが自然だ。

 再生可能エネルギーと原子力の発電量は、電力需要の伸びを上回る規模に達した。電化の恩恵を受けられるかどうかは、それぞれの地域の電力網の質にかかっている。

 インドでは強力なモンスーンなどの影響もあり、1970年代以来続いてきた二酸化炭素排出量の増加が初めて横ばいになった。どの動力源を選ぶべきかに、ひとつの正解はない。

 電気が安く安定して供給される地域ではEVは合理的な選択だが、インフラが整っていない市場では同じ判断が裏目に出ることもある。必要なのは技術の優劣を論じることより、自分が置かれた電力環境と国の政策を正確に把握し、どの仕組みの上で判断するかを見極めることだろう。