新型「リーフ」が新たな「EVのベンチマーク」となりうる可能性。補助金で実質250万円~となる価格も追い風になるか?
和製EVの代表格として2010年にデビュー以来、グローバルで約70万台を販売し、推定累計走行距離は約280億kmに及ぶという日産自動車「リーフ」が昨年、3代目に進化した。
【写真】ぐっとモダンに生まれ変わった3代目「リーフ」のデザイン
モーターとバッテリーの組み合わせは「B5」と「B7」の2種類で、グレードは上から「G」「X」、B5のみの「S」。カスタマイズカーの「AUTECH(オーテック)」も双方で選べる。まず高性能で満充電での航続距離も長いB7が、昨年10月に受注開始。今年1月にB5の注文受付も始まった。
初代が登場した頃と比べると、注目度はいまひとつになっているが、国内外から数多くの新型EVが登場していることを考えれば、仕方ないだろう。
しかし、最上級グレードになる「B7 G」に乗ると、日本の道でも扱いやすいサイズに、モダンなデザイン、使いやすいインターフェイス、熟成を感じる走りが融合していて、今だからこそリーフを選ぶ価値は十分にあると思った。
大きく見えて120mmも短くなっている
まず記しておくべきはボディサイズで、全長4360mm×全幅1810mm×全高1565mmと、先代と比べて幅と高さが20mm拡大したのに対し、長さは120mmも短くなった。

ボリュームがあるので大きく見えるが、実際の寸法は意外にコンパクト(筆者撮影)
兄貴分の「アリア」や、そのライバルであるトヨタ自動車「bZ4X」スバル「ソルテラ」の兄弟車よりひとまわり小柄で、インド製のスズキ「eビターラ」よりやや大きい程度。エンジン車ではトヨタ「カローラ クロス」より小さく、本田技研工業「ヴェゼル」とほぼ同寸になる。
それでいてホイールベースは、先代比で10mmだけ短い2690mmとなる。真横からの写真を見比べると、充電口が車体前端からフロントフェンダーに移ったことで、フロントオーバーハングが大きく詰められたことがわかる。
初代およびそのビッグマイナーチェンジ版と言える先代(2代目)が、同クラスのエンジン車「ティーダ」などに使われていた「Bプラットフォーム」をベースにしたのに対して、現行型はアリアと同じEV専用プラットフォーム「CMF-EV」を採用する。これが効率的なパッケージングに結びついたようだ。
スタイリングもアリアに似ている。ハッチバックからクロスオーバーに転換したとのことだが、SUVにありがちなゴツゴツ感とは無縁で、ルーフラインがきれいなアーチを描く、シンプルかつモダンなクーペSUVのフォルムが清涼感をもたらしてくれる。
それとともに、前衛をアピールしていた初代から、2代目では普遍的になっていたデザインイメージが、再び前衛に戻ってきたと感じた。
日本刀にインスピレーションを得たディテールも
初代リーフは、グリルレスのフロントマスク、空力を考えて上まで回り込んだヘッドランプやリアゲートより出っ張った縦長のコンビランプなど、EVらしさを前面に押し出した造形だった。
しかし、思うような人気につながらなかったことから、先代ではキャビンまわりはそのままに、前後をオーセンティックに仕立て直した。
初代が登場した頃は、まだEVが少数派だったこともあり、異質感を抱いた人がいたのかもしれない。でも、今はテスラやヒョンデ、BYDなど、“EVらしさ”を前面に押し出した車種が増えた。

クーペSUVのようななだらかなルーフラインが特徴的(筆者撮影)
もちろん欧州勢のように、エンジン車で築いたブランドイメージを継承する手法もあるが、リーフはEVのパイオニアと呼べる存在だ。だから、攻めの姿勢をデザインでアピールしてきたことは納得できる。
それでいてアリアや「フェアレディZ」と同様、ピラーからリアハッチにかけて緩やかなアーチを描くウィンドウラインのアクセントは、日本刀からインスピレーションを得たものとするなど、日本的なエッセンスも盛り込んでいる。
グリルレスになったフロントは、6つの菱形で構成されたシグネチャーランプによって、最新のVモーションを表現したという。

「セレナ」や新しくなった「サクラ」にも通ずるデザイン(筆者撮影)
ヘッドランプがその上にあり、Gグレードでは左右のヘッドランプを一文字のライトバーでつなぐので「Vっぽくない」と感じるが、アリアに続いてサクラも同様の顔つきになったので、日産のEVはこのマスクで行くということなのだろう。
リアではこちらもGグレードのみの装備である、3D効果を取り入れた、「ニⅢ」パターンのコンビランプが目を引く。

「ニⅢ=日産」をモチーフにしたコンビランプのデザインがユニーク(筆者撮影)
ちなみにこの「ニⅢパターン」、左右フロントフェンダーの充電リッドにも刻まれ、Xグレードはホイールもこの意匠になっている。
シンプル・モダンなインテリア
インテリアもアリア似だ。フロアはフラットで、水平基調のインパネは無駄な出っ張りがなく、12.3インチのスクリーンを並べたデュアルディスプレイが、手前の一段低い場所に置かれる。ここからも新世代プラットフォームの恩恵が伝わってくるものだ。

「アリア」に似た横基調のシンプルなインテリアは質感も高い(筆者撮影)
メーターの表示やスイッチの配置も煩雑にならず、整理されていて、とにかくシンプルかつクリーン。シフトセレクターはボタン式だが、DとRに出っ張りが設けられているので、ブラインドタッチも問題なく行えた。
試乗車の内装色はブラックだったが、実際は一部がグリーンがかった色調になっていて、ファブリック調の素材も採用していることもあり、シックでありながら無機質でない、ちょっと日本離れしたコーディネートに感じた。

「B7 G」グレードでは試乗車のブラックのほかホワイト/ブルーパープルも選択できる(筆者撮影)
オプションで用意されるガラスルーフは、ボタン操作でガラスの透明度を変え、車内に入る光の量を調整することができるタイプ。フルシェード、フロントシェード、リアシェード、シェードレスを選べ、一部のモードではLEAFのロゴが浮かび上がる。

調光パノラミックガラスルーフ(遮熱機能付)はメーカーオプション(筆者撮影)
後席は、身長170cmの筆者がドライビングポジションを取った後ろに座ると、ひざの前には15cmぐらいの空間が残り、頭上も余裕がある。ボディサイズを考えれば標準的なスペースだ。
先代までのようにフロアが高くて居心地がイマイチということはないが、前席下につま先を入れられないことは気になった。
今回試乗したのはB7 G。短時間走らせて、「これはEV界のベンチマークと言っていいのではないか」と思った。
ボディサイズはちょうどいい。ノーズが短くなったことがありがたいし、フロントフード左右の盛り上がりは車両感覚の掴みやすさに貢献している。
加減速については、「これ以上こなれたEVはないのでは?」と思うほど。アクセルから足を離すと回生ブレーキで減速する「e-Pedal」も自然で、慣れれば市街地ではこちらのほうが速度制御しやすい。

メーターのグラフィックもシンプルでモダンな印象(筆者撮影)
乗り心地は、低速では19インチホイール/タイヤの硬さが伝わるものの、速度を上げれば兄貴分のアリアよりしっとりしていて、快適に巡航できる。18インチのX/Sグレードなら、さらに快適になるかもしれない。
ハンドリングは、初代のような低重心や前の軽さを強調するキャラクターではなく、エンジン車の延長線上にある身のこなしの中で、EVならではの安定感を享受できるフィーリングになっている。
満充電で200kmしか走らなかった初代の初期型の記憶が残る身には、50km程度の走行ではバッテリーがまだ90%/450km分ぐらい残っていることにも、進化を感じた。バッテリーが減らないので、充電時間を短く切り上げたほどである。
補助金考慮で実質250万円~
価格は試乗したB7 Gが599万9400円、ベーシックな「B5 S」は438万9000円となる。
今年度の補助金はグレードを問わず、国が129万円で、自治体で最高レベルの東京都は、再エネ電力を導入しなくても60万円となっており、実質250万円ぐらいから買えることになる。EVへの補助金に不満を漏らす人もいるが、今はガソリンにも補助金が入っていることを忘れてはいけない。
EVが踊り場にあるというのは、イスラエルとアメリカがイランを攻撃する前の話で、欧州では現在、EVの販売が上向いているという。
こんな時代だからこそ、豊富な実績を持つリーフのモデルチェンジは、グローバルでも、そして日本でも、注目されているような気がする。