「もう無理」で衝動的に会社を辞めた人の末路

写真はイメージです Photo:PIXTA

「今の仕事を辞めたい」と感じた瞬間は、キャリアを見直すサイン。ただし、衝動的に行動するのではなく、その背景にある本音に目を向けよう。立ち止まって考えることで、これまでとは違う選択肢が見えてくるかもしれない。※本稿は、キャリアコンサルタントの金井芽衣『やりたいことも目標もないので、後悔しないキャリアのつくり方教えてください』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集したものです。

「辞めたい」の奥に潜む

本音を掘り下げる

「今の仕事を辞めたいんです」

 実は、この言葉はキャリアが終わる合図ではなく、“変化の必要性を教えてくれるサイン”です。

 私たちのサービス「ポジウィルキャリア」でも、受講のきっかけとして最も多いのがこの言葉。ところが整理を進めていくと、最終的に「辞めずに現職に残る」という選択をする人が6割近くにものぼります。

 大事なのは「辞めたい」と思った瞬間に感情的に動くことではなく、その気持ちの奥にある“本音”を丁寧に掘り下げることなのです。

 Aさんは、上司からの叱責に耐えきれず「もう無理だ」と衝動的に退職。

 準備もないまま転職活動を始めた結果、なかなか次が決まらず、経済的にも精神的にも追い込まれてしまいました。

 一方でBさんは、「辞めたい」と思った瞬間にノートを開き、自分の気持ちを整理しました。

・仕事内容が合わないのか?

・人間関係がつらいのか?

・働き方や待遇に不満があるのか?

 書き出していくうちに、「仕事内容」よりも「上司との相性」が一番の要因だと気づき、部署異動を希望。結果的に、辞めることなくキャリアを続ける選択ができました。

 同じ“辞めたい”でも、立ち止まって考えた人は、環境を変えることなく未来を変えることができたのです。

3つの視点で考える

「辞めたい」気持ち

視点1 原因を分解する

「仕事内容」「人間関係」「働き方」「待遇」などに切り分けてみましょう。

 混ざっていた不満を整理することで、「実はここだけ変えればいい」と気づくことが多いです。

 ここまで見てきたように、真面目な人ほど「全部ダメだ」と思い込んでしまいがちです。

 でも、本当に全部ダメなのでしょうか?

「全か無か」の思考に陥っていないでしょうか?

視点2 10年後の自分から逆算する

「このまま続けて10年後も同じ悩みを抱えている自分」と、「辞めて新しい道を歩んでいる自分」。

 どちらがより“自分らしい”と思えるか、未来から逆算して考えてみましょう。

 社会の評価に振り回されていませんか?

「次のステージに行くべき」や「辞めるべきではない」という世間の声に縛られていないでしょうか?

視点3 逃げたいのか、進みたいのかを見極める

「嫌だから辞めたい」のか、「やりたいことに進みたいから辞めたい」のか。

 前者なら、今の環境を調整することで解決できることも多い。

 後者なら、明確な準備が必要です。

 心に余白がないと、この違いすら見えなくなってしまいます。

 だからこそ、まず立ち止まって整理することが大切なのです。

書き出していくと

生き方が見えてくる

 次の設問について、ノートに書き出してみましょう。

・今の職場で「辞めたい」と思う具体的な瞬間は?

・逆に「楽しい」「やりがいを感じる」と思える瞬間は?

・その感情の根っこにある“価値観”は?(自由、挑戦、安心、人間関係など)

・もし辞めたら、どんな自分で在りたい?

・何が変われば「残ってもいい」と思える?

・5年後、どんな働き方をしていたら満足できそう?

 書き出してみると、「辞めるor辞めない」の二択ではなく、「どう生きたいか」から逆算したキャリア設計に変わっていきます。

「辞めたい」という気持ちは、逃げではありません。

 それは、「今のままでは自分らしくいられない」という心のSOS。

 また、よくあるケースとして「今、結果が出ていないから辞めたい」という悩みがあります。

 そんなときこそ、こう自問してみてください。

「もし今、結果が200%出ていたら、それでも辞めたいと思うだろうか?」

 答えがNOなら、今は“もう少し踏ん張るべきタイミング”かもしれません。

 結果を出すまで続けた経験は、将来のあなたを必ず支える「土台」になります。

 私も、社会人2年目の頃、「半年後の3月までに成果が出なかったら辞めよう」と決めました。でも、その半年間踏ん張ったことで、少しずつ成果が出るようになり、自信も生まれてきました。

 あのとき辞めていたら、今の私はいません。

「辞めたい」感情の

温度を測ってみる

「辞めたい」という感情にも、温度があります。

 今のあなたは、どの温度ですか?

 各質問に「はい/いいえ」で答えて、はい=1点として合計点を出します。

1 朝起きた瞬間に「仕事に行きたくない」と感じる

2 最近、眠れない・食欲がないなど体調に影響が出ている

3 同僚や上司に対して強い苛立ち・虚無感を感じる

4 自分の成長が止まっていると感じる

5 がんばっても評価されないと思う

6 仕事内容にやりがいを感じない

7 自分の時間がまったくない

8 職場に安心して話せる人がいない

9 他の会社・働き方を頻繁に調べている

10 「このままだと壊れそう」と思う瞬間がある

新たな悩みが発生も…

転職はゴールではない

 キャリア相談の場で、よくこんな声を耳にします。

「今の会社がとにかく嫌で……」

「今の会社さえ辞めれば、幸せになれる気がします」

 その気持ちはとてもよくわかります。私自身も、過去に「今がつらい」「とにかくこの状況から抜け出したい」と思ったことが何度もありました。

『やりたいことも目標もないので、後悔しないキャリアのつくり方教えてください』 (金井芽衣、ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 でも実際には、転職そのものがゴールではありません。

 転職は、あなたの人生をより良くするための“手段”にすぎないのです。

 ある30代の女性の事例です。

「忙しすぎる環境を変えたい」と転職を決意し、残業の少ない会社に移りました。

 確かに働きにくさは改善されましたが、今度は「やりがいがない」「成長している実感がない」という新しい悩みに直面しました。

 環境を変えても、自分が何を大切にしたいかが明確でないと、また同じように迷ってしまうのです。