「空気を運んでいる」と言われて30年…予約殺到の客室化企画と黒字経営、“白い無人車両”が変えた評価とは

記念企画延長と宿泊需要の集中

 東京ベイ有明ワシントンホテル(東京都江東区)は、「ゆりかもめ30周年記念コラボルーム」の予約が取りにくい状態が続いたことを受け、宿泊期間を5月5日まで延ばした。

【画像】「えぇぇぇぇ!」 これが36年前の「豊洲駅」なんです!(8枚)

 このプランは、ゆりかもめの引退車両で使われていた運転台と運転席を客室内に設置した特別な内容である。ゆりかもめとの連携や地域の観光資源との結び付きを意識し、引退車両の再利用など環境面への配慮も盛り込んでいる。

 さらに、トヨタファイナンシャルサービスが運営するおでかけアプリ「my route」では、「ゆりかもめ一日乗車券」を期間限定で割引販売する取り組みを始め、9月30日まで実施する。ゆりかもめ沿線の各地を巡ってもらうことで、「my route」の利用拡大につなげる狙いがある。

 ゆりかもめは1995(平成7)年11月1日に新橋~有明間で開業し、全自動運転の新交通システムとして運行を開始した。2006年には有明~豊洲間を延ばし、2025年11月1日に開業30年を迎えた。

 こうした沿線施設や関連事業者との連携企画は一部にすぎない。2025年から2026年にかけて、30周年を契機としたさまざまな取り組みが続いている。

 ゆりかもめは現在、交通手段の枠を超え、東京都や観光分野において集客力の高い存在として位置づけられている。

安定した収益構造

ゆりかもめの起点・新橋駅(画像:写真AC)

 同社が公式サイトで公表している2024年4月1日から2025年3月31日までの損益計算書によると、営業収益は107億3338万円、営業費は80億1899万円で、営業利益は27億1440万円の黒字となっている。当期純利益は22億1412万円の黒字である。

 当期純利益には特別利益としての国庫補助金等受贈益が含まれているが、その額は568万円にとどまる。

 また、同社は東京都の財政支出の受け入れ状況も公開しており、同期間の東京都からの補助は231万円、委託は1億3211万円、借入残高は0円となっている。利益率は20.6%であり、補助金への依存も小さい。第三セクター鉄道としては経営状態は良好といえる。

 同社の株主構成は、東京臨海ホールディングスが99.9%、東京都が0.1%である。東京臨海ホールディングスは、同社のほか東京ビッグサイトや東京テレポートセンター、東京臨海熱供給など、臨海部の第三セクターをまとめる持株会社であり、東京都の出資比率は85.3%である。東京都は持株会社を通じて同社を間接的に支えている形だ。

 東京臨海ホールディングスの2024年4月1日から2025年3月31日までの連結売上高は749億8700万円で、売上総利益は173億6200万円の黒字となっている。

 そのうち交通事業であるゆりかもめの売上総利益は35億5400万円であり、ビル事業(東京テレポートセンター、東京ビッグサイト)や展示会事業(東京ビッグサイト)に次ぐ収益の柱となっている。

開業初期の需要不足

沿線最大の集客施設・東京ビックサイト(画像:菅原康晴)

 今でこそ第三セクター鉄道として経営が安定した位置にあるゆりかもめだが、当初から順調だったわけではない。

 1996(平成8)年に沿線のお台場で開かれる予定だった世界都市博覧会が中止となり、来場者輸送という大きな利用増の見込みを失った状態での開業となった。さらに、バブル崩壊の影響も重なり、沿線開発は大きく遅れた。このため開業当初は「空気を運んでいる」といった見方もあった。

 その後、沿線開発が進むにつれて利用者は少しずつ増えていった。公式サイトによると、開業翌年の1996年度には1日平均6万4468人だった。東京臨海高速鉄道の全線開業による影響や、コロナ禍での大幅な減少はあったものの、2024年度には12万9878人となり、およそ2倍に増えている。

 30年で2倍という伸びは、年ごとに見ると平均で2%弱の増加となる。短い期間で急増したわけではないが、開業当初の「空気を運んでいる状態」は、時間をかけて利用の多い路線へと変わっていったといえる。

 なお、2018年8月11日には東京花火大祭とコミックマーケットの開催が重なり、1日あたりの利用者数は過去最多の28万9369人を記録した。

 沿線では2026年に入ってからも動きがあり、3月27日には集客施設となる東京ドリームパークが開業し、3月28日には大規模な噴水施設である東京アクアシンフォニーが開いた。住宅地を含め、沿線にはまだ開発の余地が残っている。今後も利用者が増える余地は大きいとみられる。

延伸計画の停滞

先頭車両からの景観(画像:菅原康晴)

 既存の沿線には明るい動きがある一方で、豊洲から先への延びる計画は実質的に進んでいない。

 この計画は、2000(平成12)年の運輸政策審議会答申第18号で、豊洲~勝どき間約3.9kmについて2015年までに工事に入るのが望ましいとされたものである。現在、豊洲駅で路線は途切れているが、その先は勝どき方面へ大きく曲がる形となっており、当初から延伸を見込んだ構造だったとされる。ただし、この計画は今に至るまで具体的な動きが見られない。

 その背景には、中央区が2014年から調査を進め、東京都も2021年に検討組織を設けた都心部・臨海地域の地下鉄構想がある。この構想は東京駅八重洲口から東京ビッグサイトまでの約6.1kmを結ぶもので、途中に銀座、築地、勝どき、晴海、豊洲市場などの駅を置く想定である。

 ゆりかもめの既存路線や延伸案は大きく曲がる区間が多いのに対し、この構想はほぼ直線で結ぶ案となっている。さらに、ゆりかもめは他の鉄道と直通運転ができない独自方式だが、この構想は一般的な鉄道として計画されており、東京駅では常磐新線の延伸構想との接続、東京ビッグサイト付近では羽田空港アクセス線との連結も視野に入っている。

 一部の報道では、この構想は2030年ごろの着工、2040年ごろの開業が想定されているとされる。実現するとしても先の話になるが、ゆりかもめの延伸よりもこちらの構想が先に進む可能性が高いとみられる。