トヨタ新型「RAV4」注目すべき3つのキーワード

新型RAV4で押さえるべき3つのポイント, 現段階で判明しているパワートレーンの進化について, トヨタ初のArene採用モデル, Areneでクルマは何が変わるのか?, Areneによるユーザーのメリットは?, 事故ゼロ社会につながる技術

2025年5月21日に世界初公開となり、2025年度内発売予定とアナウンスされたトヨタ新型「RAV4」。現段階で公開されている写真については、すべてプロトタイプとなる(写真:トヨタ自動車)

トヨタ自動車(以下、トヨタ)を代表するSUV「RAV4」の第6世代が公開された。5代目までのRAV4は世界180の国と地域で販売され、累計で1500万台が送り出された大人気モデルだ。

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1994年5月に初代が登場したころの日本市場は、ステーションワゴンが大いに支持され、ミニバンがそのあとを追う形。またクロスカントリー4WDモデルが徐々に高級/乗用志向になりはじめたころで、SUVは爆発的人気の前夜だった。それから31年が経ち、SUVは世界中の自動車メーカーにとってなくてはならない存在にまで成長した。ポルシェにいたっては販売の半数以上がSUVモデルだ。

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新型RAV4で押さえるべき3つのポイント

新型RAV4で注目すべきは3点ある。1つ目が「車両そのものの進化」。2つ目が「バリエーションの増加」。3つ目が「SDVとしての昇華」だ。

まずは1つ目、車両の進化。真っ先に目を引くのがシャープな外観デザイン。2021年12月14日、トヨタは「バッテリーEV戦略に関する説明会」で、豊田章男社長(現・会長)は「私たちの未来のショールームへようこそ!」と声高らかに16台の車両を紹介した。当時は“未来のBEV”として公開された車両群だが、そのデザインエッセンスは、その後の「クラウン」「ランドクルーザー」「プリウス」、そしてRAV4に受け継がれ、パワートレーンの枠組みを超えた新世代トヨタのデザインとして市販化された。

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左からRAV4 GRスポーツ、RAV4 コア、RAV4 アドベンチャーで、新型では3つのスタイルを設定する。新型RAV4の開発コンセプトは「Life is an Adventure」で、アクティブな生活を目指したクルマとなっている(写真:トヨタ自動車)

RAV4の車種展開はCORE(コア)/ADVENTURE(アドベンチャー)/GR SPORT(ジーアールスポーツ)の3タイプ。パワートレーンは通常のHEV(ハイブリッド)のほかにPHEV(プラグインハイブリッド)を用意する。今回、HEV/PHEVともに詳細なスペックの公表は行われなかったが、おそらく現行型RAV4に搭載されている直列4気筒2.5L×THS-ⅡのHEV、そして同エンジンとの組み合わせとなるPHEVと予想する。

現段階で判明しているパワートレーンの進化について

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新型RAV4に搭載されるPHEVエンジンユニット(写真:トヨタ自動車)

ただし、PHEVの構成要素については概要が示された。まず出力を12%向上、エンジンを含むパワートレーンの高さを15%低減、そして重さも18%低減したという。さらに二次バッテリー容量を5代目RAV4 PHEV(執筆時点での現行型)から30%向上(18.1×1.3≒23.5kWh)させた。

また、トヨタが「第6世代シリーズパラレルハイブリッドシステム」と呼ぶ新システムを初採用していることも明らかにした。新システムでは、高効率で損失の少ないSiC(シリコンカーバイド)半導体を前輪側に採用し、あわせて駆動力の伝達過程で発生する損失を低減、そして前述の二次バッテリー容量向上などにより、AER(All Electric Range/充電1回あたりの走行距離)は95kmから150kmへと1.5倍以上に増えた(数値は開発目標値)。なお、充電はAC(普通)充電に加えて、V2H対応含めたDC(急速)充電も可能。トヨタのPHEVでは「クラウン(スポーツ)」「アルファード/ヴェルファイア」に続くDC対応だ。

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RAV4 GRスポーツ(プロトタイプ)のスタイリング。フロントデザインは、GR共通の“G”をモチーフにした六角形のメッシュ形状「Functional MATRIXグリル」を採用(写真:トヨタ自動車)

次に2つ目、バリエーションの増加。RAV4として初となるGR SPORTグレードを設定した。GRは正式名称を「TOYOTA GAZOO Racing」とするブランドで、トヨタのモータースポーツ領域を一手に引き受けている。そのGRの世界観を市販モデルで実現したモデルがGR SPORTで、より多くのユーザーに向けたグレードだ。一方、SPORTの名称が付かない「GRヤリス」、「GRカローラ」は市販モデルをベースのホワイトボディ段階から手を加え、専用のエンジンやトランスミッションを組み込んだ走行性能に特化したモデルである。

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RAV4 GRスポーツ(プロトタイプ)のインテリア(写真:トヨタ自動車)

RAV4 GR SPORTではGRが求める一体感のあるハンドリング性能を出すために走行性能にまつわるパーツを専用品とした。まず、ダンパーの減衰力を高めつつスプリングのバネ定数を上げ、あわせて電動パワーステアリングを、よりしっかりした操舵フィールとなるようにアシスト量を見直した。さらに20インチの大径タイヤ(軽量ホイール)を履かせ、これにともないトレッド(車体を前から見た際の左右タイヤの間隔)は20mm拡大した。車体側ではワイドアーチモールを装着しタイヤのはみ出しを抑えている。

また、車体前部にはフロントパフォーマンスダンパーを、車体後部にはリヤサスペンションブレースをそれぞれ装着しスッキリとした乗り味を造り込んだ。車内ではGRロゴを配したステアリングやシート(赤ステッチ入り)を採用する。

トヨタ初のArene採用モデル

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新型RAV4ワールドプレミアの様子。登壇者は、左からMid-size Vehicle Company ZV チーフエンジニア 太長根 嘉紀氏、ウーブン・バイ・トヨタ取締役 Chief Technology Officer John Absmeier(ジョン・アブスマイヤー)氏、取締役・執行役員 Chief Branding Officer デザイン領域統括部長 Simon Humphries(サイモン・ハンフリーズ)氏、ウーブン・バイ・トヨタ代表取締役 Chief Executive Officer 隈部 肇氏(写真:トヨタ自動車)

最後の3つ目、SDV(Software-Defined Vehicle:ソフトウェアを変更することで価値や機能がアップデートされることを前提に設計・開発された自動車)としての昇華。これまでトヨタ(ウーブン・バイ・トヨタ)は、次世代型の車両開発基盤として「Arene」(アリーン)の実用化を2025年にすると公言してきたが、RAV4は、そのAreneを活用(実装)した記念すべき初の市販モデルである。

Areneは、電子プラットフォーム上で動くソフトウェアの開発速度を早め、タイムリーな機能実装や機能向上を目指す開発基盤だ。トヨタはAreneを用いて、ソフトウェアのアップデートでクルマの性能が向上するSDV化の促進を目指す。

かねてトヨタでは、「もっといいクルマづくり」として「TNGA」(Toyota New Global Architecture)を、先代プリウスの時代から段階的に導入しはじめ、現在のほとんどのトヨタ車両はTNGA思想により設計されている。TNGAは、クルマの設計思想から構成要素の開発までを一気通貫させた“ものづくり”の総称で、これにより市販化が早められ、さらに多彩な車種への技術応用も実現する。

たとえば現行型「ヤリス」(ハッチバック)では、現行型「シエンタ」(スライドドアタイプのミニバン)を見越した設計がビス1本にいたるまで行われており、結果的に車両の早期市販化や、車両価格の低減に寄与している。こうした考え方はトヨタ以外でも採用され、たとえば「モデルベース開発」という表現で同様の効果を狙った一気通貫型のものづくりが行われている。

Areneでクルマは何が変わるのか?

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初代から新型となる6代目までの歴代RAV4(写真:トヨタ自動車)

Areneは、その一気通貫型の設計思想をソフトウェアの開発基盤に持ち込んだ。ではAreneを実装するとなにがどう変わるのか、具体的に運転支援技術群である「Toyota Safety Sense」の「衝突被害軽減ブレーキ」を例に簡単に紹介する。

従来型のソフトウェア開発では、①車両の外界情報を認識するセンサー(光学式カメラやミリ波レーダーなど)、②その情報を受けてドライバーにブレーキ操作を促すディスプレイ表示、③警告ブザーを出すための音響プログラム、④実際のブレーキ制御など、①~④それぞれに専用プログラムと構成部品をつなぐミドルウェア(相互に情報のやりとりをするプログラム)がすべての段階で必要だった。つまりソフトウェアの数が多くなり、時間もかかった。

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RAV4 アドベンチャーのスタイリング(写真:トヨタ自動車)

対するAreneではどうか? これまで複数あった専用プログラムと構成部品、そしてそれらをつなぐミドルウェアが、AreneではToyota Safety Senseとしてひとつの専用プログラムと構成部品で済み、さらにミドルウェアの役割もAreneが担う。よって開発リソースの選択と集中が可能になる。

新型RAV4では、このToyota Safety Senseと、コクピット(ナビ情報が表示されるセンターディスプレイ)の設計にAreneを用いているが、将来的には車両の全アプリケーションをArene上で制御する。

Areneによるユーザーのメリットは?

たしかにAreneを用いれば開発時間が短縮され、わかりやすくコストも削減できる。しかしユーザーであるRAV4オーナーのメリットはどこにあるのか?

「Areneは、開発キット/データ収集・分析基盤/ソフトウェア検証・評価ツール、この3つの構成要素で成り立っており、これらを活用することでソフトウェアの開発期間が短縮され、これまでよりも早く、世界中のお客様にもっといいクルマをお届けできます。ここがお客様への提供価値のひとつです」と語るのは、トヨタでAreneの開発を担当する技術者だ。

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RAV4 アドベンチャーのリアビュー(写真:トヨタ自動車)

たとえばAreneを搭載したRAV4から走行時に得られる光学式カメラや各種センサーからの情報を、トヨタ側のデータセンターで処理し、ソフトウェアのアップデートに活かす。つまり、Arene上でToyota Safety Senseがひとつのアプリ群として稼働するため、アップデートが容易に行えるようになるという。

しかし、Areneを搭載していない現在のToyota Safety Sense装着車であっても、光学式カメラの情報は個人を特定しないことを条件にトヨタのデータセンターに送られ、機能アップデートに役立てられ、すでに有償サービスとして提供されている。

Areneの決定的な優位点は、機能アップデートにいたるまでの開発スピードが段違いで早くなることだ。さらに右側通行の国、舗装路面がほとんどない地域など交通ルールやインフラが異なる地域であっても、要望に応じた対応もスピーディに行える。ここも、従来型の開発手法に対するアドバンテージだ。

事故ゼロ社会につながる技術

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RAV4 アドベンチャーのサイドビュー。アドベンチャーのパワートレーンはHEVで、ボディサイズは全長4620mm✕全幅1880mm✕全高1680mm、ホイールベースは2690mm(写真:トヨタ自動車)

冒頭に記したように、RAV4は世界180の国と地域で販売され、これまでに1500万台以上が送り出された。公式発表はないが、当然、新型RAV4も多くの国と地域で販売され、たくさんのユーザーから支持されるだろう。そうなったときにAreneによって運転支援技術群の早期高度化が進み、ひとつの効果として交通事故ゼロ社会が見えてくる。

「運転支援技術の装着車両が増えたことで、たとえば前走車への追突事故は大きく減少しました。しかし、滑りやすい路面では十分に対応できない場合があります。この先、車体全体がArene上で稼働するようになると、たとえば、事前に滑りやすい路面であることがシステム側で認識できるようになり、より高い確率での追突回避が目指せるようになります」(前出の技術者)

システムへの過信は禁物ながら、滑りやすい路面であっても危険な状態に近づかない注意深いドライバーはたくさんいる。そうしたドライバーの持ち味がAreneを通じたソフトウェアのアップデートで愛車に導入できるとすれば、たしかに事故ゼロ社会が見えてくる。またこれは、超高齢社会にとってふさわしい運転支援技術の創出にもつながっていくのではないか。新型RAV4は2025年度内に発売される予定だ。