三井化学【4183】高値から下落で配当利回り4.85%に 純利益70%増見込む、今後の追い風の要因とは

三井化学【4183】高値から下落で配当利回り4.85%に 純利益70%増見込む、今後の追い風の要因とは
上昇と下落が交互に出現 配当利回りは高水準
三井化学の株価チャートは大きな波長を描いています。コロナショックからの反発で2021年6月に4075円の高値を付けたあと、2022年3月に2644円まで下落しました。その後3000円前後の取引が続きますが、2023年ごろから上昇トレンドを迎え、2024年5月に4836円の高値を付けました。
その後は再び下落傾向となり、現在は3000円前後の取引です。5年騰落率はプラス55.0%と、パフォーマンスは日経平均株価(同プラス83.5%)を下回っています。
【三井化学の株価チャート(過去5年間)】
・株価:3093円(2025年5月19日終値)

出所:Tradingview
株価は冴えない一方で、配当利回りは高水準です。今期(2026年3月期)は1株あたり150円の配当金を予想しており、予想配当利回りは4.85%に達します。今期は増益を計画していることもあり、三井化学に注目している人は多いでしょう。
【三井化学の予想配当利回り(2026年3月期)】
・予想配当金:150円
・予想配当利回り:4.85%
出所:三井化学ホームページ
配当水準の高い三井化学は、NISAの需要もありそうです。配当金は本来、約2割の税金がかかりますが、NISAなら非課税で受け取ることができます。
NISAで個別株式に投資できるのは成長投資枠です。成長投資枠は年240万円までの投資枠が設けられており、三井化学なら5月19日終値で700株まで購入できます。1株あたり配当金が150円なら、総額は10万5000円です。本来は約2万1000円の税金が生じますが、NISAなら非課税で受け取れます。
今回は三井化学を取り上げましょう。同社の事業内容と業績を解説します。
機能材に強み、世界シェア首位の製品多数 石化製品は再構築中
三井化学は化学製品の総合メーカーです。1912年に当時の三井鉱山(現・日本コークス工業)が開始した石炭化学事業を源流に持ちます。戦後は石炭に代わり石油由来の化学製品で成長してきました。グループ企業には歯科材料・機器の松風などを有します。
三井化学の強みは機能材です。特徴のある機能を持たせた製品群で、特に自動車向けやエレクトロニクス向けで高いシェアを持ちます。これらを含む「ライフ&ヘルスケア・ソリューション」と「モビリティソリューション」、そして「ICTソリューション」は成長領域に位置付けられています。
【三井化学の主な世界シェア高位の製品】
・プラスチックメガネレンズ材料:世界シェア1位
・自動車バンパー・インパネ用材料:同2位
・半導体製造工程用テープ:同1位
・スマホ用カメラレンズ材料:同1位
・フォトマスク用防塵カバー:同1位
出所:三井化学 統合報告書
一方、石油化学製品などの「ベーシック&グリーン・マテリアルズ」は構造改革中です。エチレンやポリオレフィンの生産能力は国内有数ですが、市況の影響もあり、利益ベースの存在感は薄れてきています。同事業は需要に見合った生産能力へ最適化を図り、収益の改善を目指します。
【三井化学のセグメント情報(2025年3月期)】

※コア営業利益…営業利益から非経常的な要因により発生した損益を控除したもの
出所:三井化学 決算短信
メディカル領域へ積極投資、M&A旺盛 連結コア営業益2500億円へ
三井化学の成長領域のうち、特に注力するのがライフ&ヘルスケア・ソリューションです。同事業は、さらに「ライフケア領域(メガネレンズ材)」と「ウェルネス領域(農業化学品)」、「メディカル領域(オーラルケア、整形外科、検査・診断)」に分類できます。
うち、特に積極投資するのがメディカル領域です。現在のライフ&ヘルスケア・ソリューションの中心はライフケア領域とウェルネス領域ですが、投資を通じメディカル領域を新たな収益の柱へ育てます。
メディカル領域の強化にはM&Aも活用します。2022年1月に医療機器の製造・販売を手掛ける日本エム・ディ・エムを持分法適用会社化したほか、2025年4月には遺伝子解析のDNAチップ研究所の完全子会社化を目的としたTOB(公開買い付け)が成立しました。外部の技術を取り込みつつ新製品を投入し、市場への本格参入を計画します。
三井化学は2031年3月期にコア営業利益2500億円を目指しており、その実現に向け1兆6000億円を成長投資と既存事業の維持・強化に投じます(2025年3月期~2031年3月期)。ライフ&ヘルスケア・ソリューションなどの成長領域へ経営資源を集中し、目標の着実な達成を図ります。
【三井化学の主な財務目標】

出所:三井化学 決算短信および経営概況説明会資料
成長領域は好進も連結で減益傾向 今期最終は70%増益予想、半導体向けが好調
業績も押さえておきましょう。三井化学の最高益は2022年3月期です。一過性の損益を除いたコア営業利益は1600億円台、高騰した市況の影響を除いても1200億円台となり、利益水準が大幅に改善しました。
しかし、その後は利益を減らす展開が続きます。主因はベーシック&グリーン・マテリアルズ事業です。需要の減少などから減益傾向が強まり、2025年3月期まで2期連続の赤字に陥りました。一方で成長領域は増益が続いており、連結のコア営業利益は2025年3月期に3期ぶりの増益で着地します。

出所:三井化学 決算短信より著者作成
最後に今期(2026年3月期)の会社計画を確認しましょう。連結のコア営業利益は増益を計画します。引き続き成長領域の堅調を予想するほか、ベーシック&グリーン・マテリアルズも黒字転換を見込みます。
成長領域は、特にICTソリューションが伸びる想定です。半導体市場の需要回復などから販売数量が増加し、利益の押し上げを予想します。一方、モビリティソリューションは新プラント稼働に伴う固定費の増加や円高が重く、減益の見込みです。
なお、一過性の損益を除かない一般的な各利益は大幅な増益を予想します。これは、2025年3月期に計上した減損損失のはく落が主な要因です。
【三井化学の業績予想(2025年3月期)】
・売上収益:1兆7700億円(-2.2%)
・コア営業利益:1100億円(+9.0%)
・営業利益:980億円(+25.1%)
・純利益:550億円(+70.6%)
※()は前期比
※2025年3月期時点における同社の予想
※コア営業利益…営業利益から非経常的な要因により発生した損益を控除したもの
出所:三井化学 決算短信
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。