「泥をさらけ出せ」損保ジャパンの不祥事体質を変える専門部署、激動の1年

損害保険ジャパンが「もの言えぬ」社内の空気を変えようと奮闘しています。

損害保険ジャパンが「カルチャー変革推進部」を立ち上げて、1年が経った。

旧ビッグモーターによる自動車保険金不正請求への対応や、保険料の調整行為、そして顧客情報の漏えいなど、複数の不祥事に揺れた同社。

問題の根底には、「自己保身」「上意下達」「縦割り」「他責思考」の企業文化があったとされる。「声を上げられない空気」をどう壊すか――模索と挑戦の日々を追った。

経営陣が“現場”へ、全国7000人と対話

石川耕治社長と従業員らの対話の様子。

損保ジャパンがカルチャー変革推進部を新設したのは、2024年春。部署には、人事部のDEI担当や経営企画部のサステナビリティ担当、そして広報部の社内向け広報担当者などが集められた。

加えて、全国の営業部門や支店などの“現場”からも応募を募り、希望者とともにプロジェクトを進めてきた。

まず実施したのが、経営陣と従業員との対話を増やすことだ。

「改革の先頭に立つべきは、やはり経営陣」

そう話すのは、カルチャー変革推進部企画グループ・グループリーダーの佐藤伸剛さんだ。

全国約700の営業部や支店を経営陣自ら訪ね、10〜15人の従業員らと1時間から1時間30分ほど膝をつき合わせてじっくり話をしてきた。対話した従業員は約7000人にのぼる。

社員からの「泥つきの情報」を経営の力に

あなたの会社では、“泥のついた情報”は歓迎されるだろうか。

また大きな課題の1つが、現場で発生したネガティブな情報が経営側まで伝わらないことだった。

これを改善するため、従業員が会社に改善して欲しいことを投稿する「どろたまBOX」を新設。どろたまとは、泥のついた玉ねぎのことで、情報は泥つきのまま上げて欲しいというメッセージが込められている。

従業員の要望は役員に直接届く仕組みで、この1年間で約3000件の投稿が寄せられており、実現したものも複数ある。

たとえば「春と秋に大規模な人事異動があるが、内辞が直前のため、引き継ぎや引っ越しの準備が大変だ」という投稿をきっかけに、内辞を出す時期を前倒しして、1カ月間かけて準備ができるようにした。

他にも、本社の施策を全国の営業部門や支店に伝える際の「通達」が分かりにくいという声を受けて、一律のルールを設けるよう検討したり、本社と現場との距離を埋めるため、地域限定社員が3カ月間、本社で本社社員と同じ業務を経験するプログラムを新設したりした。

「従業員には、声が上げられるということや、上げた声が実現されるという経験をして欲しいですし、それが少しずつ広がっていると実感しています」(佐藤さん)