【在職老齢年金制度】新ルール「62万円」へ引き上げで働くシニアにどう影響が?65~69歳の約6割が「66歳以降まで働き続けたい」と回答

法改正でここが変わる!おさえておきたい3つのポイントを詳しく解説!

在職老齢年金とは, 2026年からの改正法案, 引き上げ後の収入上限額はいくらになる?, 私たちの生活への影響は?おさえておきたい3つのポイント, 就業調整を行う必要がなくなる, 企業の人材確保につながる, 財源確保が必要になる

【在職老齢年金制度】新ルール「62万円」へ引き上げで働くシニアにどう影響が?65~69歳の約6割が「66歳以降まで働き続けたい」と回答

「65歳を過ぎても、まだまだ元気に働きたい」健康寿命の伸びとともに、このように考える人も増加しています。

しかし、「一生懸命働いたら、年金が減らされてしまった…」なんて話を聞いて、不安に感じている人もいるのではないでしょうか。

給与額と年金額の合計によっては、受け取れる年金額が調整される「在職老齢年金制度」という仕組みがあります。この制度があることにより、働く時間をセーブしている人も少なくありません。

しかし、2025年6月、この「働き損」ともいえる状況を改善するための、新しい法案が国会で可決されました。

この記事では、在職老齢年金の仕組みと、今後の在職老齢年金制度がどのように変わるのか、働くシニア世代の方への影響について解説します。働きながら年金をもらう予定の方は、ぜひ参考にしてください。

※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。

在職老齢年金とは

まずはじめに、在職老齢年金の制度について解説します。

制度の概要

在職老齢年金制度とは、60歳以上の方が、社会保険(厚生年金)に加入する働き方をしながら老齢厚生年金を受け取る場合に、収入と年金額に応じて、年金の一部または全額が支給停止される仕組みのことです。

制度のポイントとして、以下の点が挙げられます。

・支給調整は老齢厚生年金のみ

この制度によって調整が行われるのは老齢厚生年金のみであり、老齢基礎年金は調整の対象外です。

収入額の多寡により、老齢基礎年金が減額されることはありません。

・厚生年金保険の非加入者は対象外

「社会保険に加入するような」働き方をしている人が対象であるため、自営業やフリーランスの方は本制度の対象外です。収入額によって年金の受給額が調整されることはありません。

調整の仕組み

在職老齢年金制度によって年金額が調整されるかどうかは、以下の2つの合計額により決定します。

・基本月額:老齢厚生年金の年額を12で割った額

・総報酬月額相当額:{標準報酬月額(およそ毎月の給与額)+ 過去1年間の賞与額}を12で割った額

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在職老齢年金制度

上記の合計額が、支給停止の基準となる金額(2025年度は51万円)を超えた場合に、年金額が調整されます。

調整金額の計算

現行の法律による、具体的な調整金額の計算方法は以下の通りです。

・(基本月額 + 総報酬月額相当額) の合計額が51万円以下の場合

→調整なし:年金は全額支給されます。

・( 基本月額 + 総報酬月額相当額)の合計額が51万円を超える場合

→年金支給額の調整:超えた額の半額(1/2)が、毎月の年金額から支給停止されます。

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在職老齢年金の計算方法のフローチャート

2026年からの改正法案

ここまでは、現行の在職老齢年金制度について説明をしてきました。次に、2025年6月の国会にて成立した改正法案による在職老齢年金制度の変更点について説明していきます。

改正法案の概要

今回の改正法案では、在職老齢年金制度によって調整が始まる基準額の見直しが行われました。

現行の制度では、前述の通り、「総報酬月額相当額」と「年金月額」の合計が50万円(2024年度の場合。2025年度は51万円)を超えた場合に、年金の一部または全部が支給停止となります。この「50万円」(2024年度の場合。2025年度は51万円)の基準額が、改正法により「62万円」に引き上げられる見通しとなっています。

法改正の背景

この法改正が行われた背景として、主に以下の2つの要因が挙げられます。

・労働力人口の減少

少子高齢化により、現役世代の働く人口が減少している中、人手不足倒産も多くなっています。これにより、人材確保や技能継承等の視点から、高齢世代の社会参加が以前にも増して必要とされるようになりました。

・高齢世代の就労意欲の増加

平均寿命や健康寿命が延びる中、老後も積極的に働きたいと考える高齢者が増加しています。内閣府が5000人を対象に行った「生活設計と年金に関する世論調査」では、半数以上が65歳以降も働き続けたい、またはすでに働いているという結果が出ています。

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何歳まで仕事をしたいか

このような背景から、高齢者の活躍を後押しし、働く意欲のある方々がより働きやすい環境を整備するという観点によって、今回の法改正が提案されました。

引き上げ後の収入上限額はいくらになる?

2026年の制度改正後も、在職老齢年金の基本的な仕組みは変わりません。年金の支給停止が始まる基準となる金額が「62万円」に引き上げられます。

【具体的な計算方法】

支給停止の判断基準は、先ほど説明をした「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計額です。この合計が62万円を超えると、年金の一部が支給停止されます。

例えば、月10万円の老齢厚生年金の受給資格がある場合、支給停止されずに働ける収入の上限は月52万円(62万円−10万円)です。

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見直しについて

私たちの生活への影響は?おさえておきたい3つのポイント

実際に基準額の引き上げが実施されることにより、私たちの生活にどのような影響を及ぼすでしょうか。ポイントを解説していきます。

就業調整を行う必要がなくなる

まず1つめが、在職老齢年金制度の停止基準額が12万円上がることで、多くの高齢世代が就業調整を行う必要がなくなる点です。

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65歳以上の在職老齢年金制度の状況

現在、年金受給中の労働者のうち、約16%が在職老齢年金制度により年金額の一部または全部が支給停止になっていることが明らかになっています。停止されていない人の中には、年金が減額されないよう、意図的に労働時間や収入を制限している人も多くいると考えられています。

基準額の引き上げにより、より多くの収入を得ても年金が減額されない範囲が広がるため、就労意欲に応じた自由な働き方をすることができるようになります。

企業の人材確保につながる

2つめに、高齢世代の就業調整が抑えられる環境が整うことで、企業の人材確保につながる可能性があります。

1つめの要素で説明したように、これまで年金の支給調整の懸念から労働時間や収入を抑える傾向があった社員が、停止基準額の引き上げにより積極的に就労ができるようになります。

意欲的に働き続けるベテラン社員は、若手社員への技術指導や知識伝承の役割も担うことができます。長年の経験で培った業務ノウハウや対人関係のスキル、業界特有の知識などの知見を持つ人材が、退職せず積極的に活躍し続けることで、企業の生産性向上や競争力維持につながります。

また、企業の労働力不足が深刻化する現代において、経験のある人材が現役と変わらず継続的に就労することで、採用コストや教育コストの削減にも寄与します。

このように、在職老齢年金制度の改正は単なる高齢者の所得保障だけでなく、企業の人材確保においても重要な意味を持つと言えます。

財源確保が必要になる

3つめとして、基準額引き上げにより今まで支給停止されていた年金を支給する必要があるため、年金財政への影響を及ぼす点です。

年金支給額の増加は、政府としての年金支出の増加を意味します。

年金のための財政を枯渇させずに維持していくためには、追加的な財源確保が必要となる可能性があります。

これは、将来的な保険料の引き上げや、増税、給付水準の見直しなど、様々な形が考えられます。

この点について、どのような措置が取られるのかは明らかになっていません。

高齢者が社会保険に加入して働き続けることによる税収や社会保険料収入の増加が、一部を担えるとも考えられますが、国民全体に対しても何らかの負担が生じる可能性があります。

おわりに

2026年から在職老齢年金制度が大きく変わることで、シニア世代の働き方に新たな選択肢が生まれます。

在職老齢年金制度の停止基準額が62万円へと引き上げられることにより、「働いたら年金が減る」という心配をせずに、より自分の能力や希望に合わせた働き方ができるようになります。

この改正の背景には、深刻化する労働力不足と、健康寿命が伸びて活躍したいシニアの増加があります。

改正後は、これまで年金減額を避けるために就業調整していた方々が、思う存分能力を発揮できるようになり、企業にとっても貴重な経験や技術を持つ人材の確保につながるでしょう。

人生100年時代を迎え、この制度改正が長寿社会における高齢者の活躍を後押しし、働く意欲のある方々がより生き生きと社会参加できる環境づくりの一歩となるはずです。

参考資料

・日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」

・厚生労働省「在職老齢年金制度の見直しについて」