「首元をキンキンに」ネッククーラー爆売れの訳

130万個売れた「ネッククーラー」そのCOOLな戦略とは……?(写真:サンコー提供)
累計130万個を販売。最新モデルは軽量化を最重視
COOLな見た目に、COOLな機能性。猛暑対策グッズとして、サンコー株式会社のロングセラー商品「ネッククーラー」が話題だ。
【着用画像はこちら】「スイッチオン、2秒でキンキン」のネッククーラー。髪の巻き込み防止機能も付いており、女性から根強い支持も
「同社のネッククーラーは2015年から販売を始め、シリーズ累計販売台数は130万個を突破しています。最新モデルの第8世代『ネッククーラーポケット』(税込み6980円)は、女性の方でも使いやすいよう軽量化を重視しました」
広報担当の四宮美波氏によると、同製品は同シリーズのバッテリー搭載モデル(ケーブルレスモデル)の中で最軽量の180グラム。電源を入れてからわずか2秒で冷え、環境温度から−14℃まで冷却プレートを冷やすことができる。折りたたむと手のひらに収まるコンパクトサイズで、持ち運びが便利であることはもちろん、ファッションに浮かない「目立ちにくさ」が女性客の心をつかんでいると言う。

広報担当の四宮氏(写真:サンコー提供)

ホワイトかグレージュ、2種類の色から選べる(写真:サンコー提供)
近年SNSで話題になっている「満員電車でハンディファンに髪が巻き込まれた」といったトラブルに対しても、同社の製品は強みを発揮できそうだ。
「女性の方の声を反映し、髪の巻き込み防止機能が付いています。満員電車で利用する際も、ハンディファンなどの扇風機型の冷却グッズと異なり、相手の髪を巻き込んでしまうことは考えづらいです」

Xで話題になっているハンディファンの被害(著者スクショ)
同社のネッククーラーは「ペルチェ」という半導体素子を使用している。この素材は通電すると片面が冷たくなる性質があり、小型冷蔵庫にも使われている。この仕組みを超小型化して搭載。冷却プレートが首の両側に当たり(首には太い動脈が通っているため)、効率的にクールダウンすることができる。
ここで驚くべきは、同社のネッククーラーシリーズの「リニューアル」の頻度だ。なんと過去11年間で計8回、新しい商品を市場に送り出した。これには深いワケがある。
新商品は年間100個以上!? 少数精鋭企業のCOOLな戦略
「ファーストペンギン、先をいく者の宿命と言いますか……。ネッククーラーが好例ですが、私たちが作った商品は他社から類似品が販売されるなど、市場で一般化されていきます。だからこそ、既存の商品のブラッシュアップと新商品の開発。この2つの方向性、戦略が重要になってきます」
四宮氏によると、今季一番の売れ筋は(冒頭で紹介した)最新モデルのネッククーラー。しかし、旧タイプのネッククーラーも売れ行きは堅調だという。それはなぜか。
「最新モデルは女性利用者を意識しながら、軽量化を重視して開発しました。ただし過去のモデルの中には、最新のものよりも重い代わりに、冷たさが数度低いモノもあり……。重さを気にしない方などは、過去のネッククーラーを選ばれる方もいます」
つまり同社の商品開発は、全体の機能性を底上げすることもあれば、トレードオフの関係で「強みに特化」することもある。少数精鋭企業の同社は(従業員数約60名・年商27億円)、限られたリソースをどこに配分するべきかの判断、市場の需要をかぎわける嗅覚が鋭いのだろう。

サンコー通販サイト(著者スクショ)
筆者はウーバー配達員ライターとして日々活動しているが、猛暑の屋外で活動するために軽量化が欠かせない。その一方で、何万円もする高価な製品を買うのは気が引ける。このような需要に応えてくれるのが同社の商品開発力であり、商品開発量なのだ。
なんと同社では、年間100個以上の新商品を市場に送り出している。つまり単純計算で週に約2個、新商品を販売している。
「弊社では毎週1回、全従業員が社内のWeb掲示板に、自由にアイディアを出し合ってます。アイディアは1行でもいいし、何個出してもいい。既存の商品のブラッシュアップでもいいし、新商品でも大丈夫。お客様の声を拾い上げたり、日々の生活の中での気付きや、思い付きを大切にしてます。ここだけの話、たくさんアイディアが浮かぶときもあれば、『来週提出するアイディアはどうしよう……』と悩むこともありますね(笑)」
在庫の山、機会損失…。季節モノ商品を扱う難しさ
「面白くて」「役に立つ」家電商品を廉価かつハイペースで提供する、サンコー株式会社。創業社長である山光博康氏の名字である「ヤマミツ」を「サンコー」に読み替え、さらに英語の「Thank you」に掛けて「THANKO」と表記するなど、1にも2にも経営姿勢がユーモアな同社だが……。
全従業員で「クリエイティブの種」をまき、みんなで意見を出し合う「水やり」をして育てていく。この姿勢があるからこそ、初代ネッククーラーが開発され、現在に至るのだと四宮氏は教えてくれた。
「弊社のネッククーラーは、社長が考えごとをする際、頭が熱くなる感じがする→冷ます商品がほしいというアイディアから始まりました。2015年は2000個作り、すべて完売。ここで手応えをつかみ、第2世代では冷却と加温、2つの機能を持った商品を5000個作り、こちらも完売。ただしお客様の声から加温の需要がそこまで高くないと判明し、以降は冷却機能に特化していきました」
第3世代も順調に売り上げを伸ばし、第4世代も年間24万個を売り切った同社だが、第5世代の販売時に「冷汗が止まらないピンチ」に見舞われたと言う。
「第5世代は発売年に50万個近く売れたのですが、実はそれ以上に在庫を用意しておりまして……。お客様に翌年、翌々年も購入していただき、今年になってようやく売り切ることができました(汗)」
在庫の問題を解決するため、初期在庫を減らして不足分を増産で対応できないのか。四宮氏に聞いたところ、「増産には数カ月を要するので、季節モノの商品では難しい部分があります」と回答があった。ネッククーラーは6~7月が販売のピークで、夏以外の季節はほとんど動かないそうだ。ただし近年は暑い期間が長期化していることもあり、8~9月頃までは一定の需要が見込まれると言う。
「機会損失になることもあります。例えば今年販売した『ファンブレラPOLE』という商品は、ファン機能が付いた晴雨兼用の日傘なんですけど、ご好評により今季販売分は完売となってしまいました。6000本以上も用意していたのですが……」

シャフトから風が吹き出るファンブレラPOLE(著者スクショ)
のれせん、コールドマウンテン…。猛暑を乗り切るユニークなアイテム
他にも、冷却機能とファン機能を併せ持った「冷蔵服4」も在庫薄のようだ。今季は3万2000着以上用意していたが、作業着など現場作業向けの商品を取り扱っている商社から、かなり早い段階でまとまった注文があったらしい。
今年の6月から熱中症対策が義務化されるなど、社会全体で熱中症予防・対策が急務となっている。2024年5~9月には過去最多、全国で約10万人が熱中症で救急搬送された。
日本だけでなく世界でも、例えばスペインでは2025年5月16日~7月13日までに、熱中症による死者が1180人にも及んだ。2024年の同時期の死者が114人だったことを考えると、実に10倍近い犠牲者が出ている。
暑さ対策は、万国共通で大きな課題となっているのだ。
「7月の3週目からは(※要最終確認)、新商品『ハンディクールファン』(税込み5980円)が発売されました。毛細血管の集まる持ち手に冷却プレートが付いており、6段階の風量設定が可能です。風量には自信があります。特許の出願も現在検討中です」
その他、お風呂上がりに全身爽快になれる乗れる扇風機「のれせん2」。電気の力でキンキンに冷やすことのできるドリンククーラー「コールドマウンテン」など、同社ではユニークな猛暑対策グッズが充実している。

新商品のハンディクールファン(写真:サンコー提供)

全国のスーパー銭湯にぜひ置いてほしい(写真:サンコー提供)
「街中で弊社の商品を使ってくれている人を見ると、ありがたいな。嬉しいなという気持ちになります。ガジェット好きの『サンコーファン』の方もいて、例えばネッククーラーなどはリニューアルするたび、購入していただいております。ありがとうございます!」
最後に、四宮氏はこのように語ってくれた。
「どんどん夏が暑くなっており、場合によっては命に関わるケースもあります。暑さ対策グッズが何もない状態では、もう過ごせません。私たちサンコーは引き続き、『面白く』『お役に立つ』商品を皆様にお届けできるよう、努力を続けていきます!」
サンコーの「熱い挑戦」にこれからも期待したい。