ANAの新規就航「欧州3路線」、予約率8割で好調な滑り出し。“空白地帯”埋められるか

欧州3路線を新規就航したANA。

猛暑とともに夏の旅行シーズンが到来し、航空会社にとって勝負の季節が始まった。

7月29日には、全日本空輸(ANA)の2026年3月期第1四半期決算が発表された。売上高は前年同期比6.2%増で第1四半期では過去最高となる5487億円。営業利益は2023年度に次ぐ過去2番目の規模となる367億円(同21.2%増)と増収増益となった。売り上げをけん引したのは、インバウンド需要の増加を背景に前年同期比で8.8%増の売上高2062億円となった国際旅客だ。

画像:ANA 2026年3月期第1四半期決算説明資料

実はANAは2024年末から2025年2月にかけて、羽田空港発の定期便(週3往復)としてミラノ(イタリア)、ストックホルム(スウェーデン)、イスタンブール(トルコ)行きの欧州3路線が相次いで新規就航させた。決算では、各路線とも搭乗率約8割と好調に推移していることが明かされた。ANAホールディングス中堀公博CFOも「個別の売り上げは開示できない」としているが、「日本からの直行便が就航することで新たな需要が獲得でき、3路線就航の意義は非常に大きいと感じている」と語るなど手応えを示している。

3路線の売り上げは、ANA HD全体の売り上げからするとごく一部に過ぎない。ただ、ANAにとって戦略上の期待度は高い。

「空白地帯」埋めに期待の新路線

第1四半期の決算会見に出席し、報道陣からの質問に対応するANA HDの中堀公博CFO。

羽田発のミラノ便は今回が初めての就航、イスタンブール便はANAとして初の定期便、ストックホルム便も日系航空会社として初の定期便となる。これでANAは日本〜欧州間で最大のネットワークを保有する航空キャリアとなった。

ANA広報によると、3路線とも国際貨物需要の高まりを受けた就航で、このうちイスタンブールとストックホルムの2路線はANA国際線の「空白地帯」を埋める役割も担う。コロナ禍で就航が延期となっていたこともあり、3路線の就航はANAにとって念願の路線拡充となる。

新たに就航した欧州3路線。

決算担当チームの足立光弘リーダーは「ANAにとってパリ、ロンドン、フランクフルトの欧州主要路線と比較すると需要や規模は小さくなるが、セカンダリーな市場に積極的に参入する意思の表れ」と語る。

ストックホルム便は1989年4月、スウェーデン・デンマーク・ノルウェーの北欧3カ国が共同で経営する航空会社「スカンジナビア航空」(本社:ストックホルム)と共同運行していたが、同社は2024年8月末でANAや独ルフトハンザ航空が加盟する航空連合「スターアライアンス」を脱退すると発表。翌月から仏エールフランスなどの「スカイチーム」に加盟した。これにより、日本〜北欧の定期便が一時的に消滅することになった。

スカンジナビア航空は「スカイチーム」に加盟した。

だが、欧州路線はコロナ禍で日本向けの米ファイザー製コロナワクチンの輸送で活躍したこともあり、医薬品の輸送に強いとされる。ANA広報はストックホルム便について「医薬品は貨物として1つあたりのサイズが小さい。非常に繊細でスピード感を持って運ぶ必要があり、船舶よりも航空貨物に向いている商材。北欧からの(サーモンなど)食料品を含め、欧州での貨物需要を開拓する狙いがあり、就航を決めた」と解説する。

コロナワクチンの輸送で欧州路線は活躍した。

その他、イスタンブール便はスターアライアンス加盟社のターキッシュエアラインとの関係性を生かし中東アフリカ地域へのリーチ、ミラノ便は観光需要の促進というそれぞれ大きな狙いがある。