今や”外国人の餌食”になった「ニセコ」スキーリゾート…なぜ”ニセコだけ”コロナ禍下でも不動産投資が継続したのか
今や世界的なスキーリゾート地となった北海道ニセコ。
世界中の富裕層スキーヤー・スノーボーダーを惹き付ける魅力は一体何なのか。なぜ観光・レジャー産業が大打撃を受けたコロナ禍下でも、ニセコだけが投資・開発され続けたのか…。そこには「客数より収益、消費より投資」が回す、新しい経済の姿があった。
国内外リゾート・富裕層ビジネス・地方創生にまで精通した著者が、ニセコの今と未来を徹底解説。2020年刊行『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』を一部抜粋・再編集してお届けする。
『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』連載第1回
美しいパウダースノー
ニセコは、今や世界的なスキーリゾートだ。地元の俱知安町がスイスのサンモリッツと姉妹都市提携を結んで2021年で57年、ニセコは「東洋のサンモリッツ」から「世界のニセコ」として、名実ともにその名を世界のスキーヤーや富裕層に知られる存在となっている。
その源泉は、パウダースノーだ。サラサラしたパウダースノーを体験してしまうと、なかなか他のスキー場には戻れない。サンモリッツやクーシュベル(フランス)、ウィスラー(カナダ)といった欧州や北米の世界的に著名な超高級スキーリゾートも雪質ではニセコには敵わないところがほとんどだ。そのパウダースノーをオーストラリアのスキーヤーが世界に紹介したことで、ニセコはアジア全体や欧州や米国からもスキーヤーが訪れるようになった。

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彼らのためにニセコには「外国人による外国人のための楽園」ができている。5つ星ホテルのパークハイアットは、日本には東京、京都、ニセコにしかない。他の5つ星ホテルではリッツ・カールトンが開業し、アマンの建設も進行中だ。アマンホテルに併設される戸建て別荘の販売予定価格は20億円になる。この先も、こうした高級ホテルやコンドミニアムの開発が続く。
ニセコ周辺のインフラ整備も着々と進んでいる。2027年には高速道路が開通してニセコにインターチェンジができる予定であり、2030年には北海道新幹線の新駅がニセコに設置されることも決まっている。札幌や東京からのアクセスが大幅に改善される見込みだ。もし2030年冬季オリンピックの開催が2度目となる札幌で決まれば、ニセコがアルペン競技の会場となる予定もある。
なぜ、ニセコだけが
ニセコに拠点を持つ不動産会社によれば、「リーマン・ショックのときと違い、2020年3月以降のコロナ禍下でも、投げ売りはむろん、売却の動きも、ほとんどみられない。逆に、華僑など海外投資家からは、コンスタントに新規の不動産取得への問い合わせが続いており、他社でも成約がいくつかあるようだ」という。
また、海外だけでなく国内の投資家も、「2020年4月、5月は営業自粛や外出自粛の影響もあり、ほとんど動きはなかったが、緊急事態宣言が解除された6月以降は首都圏の富裕層からの問い合わせが増えており、7月以降は実際に現地でアテンドすることも増えている」という。
なぜ、ニセコだけコロナ禍下でも不動産投資が継続しているのだろうか。その理由には、①外資系大手や公共事業の計画、②世界的な金融緩和、③海外富裕層とホテルコンドミニアムの存在、の3つが挙げられる。
1つ目の、外資系大手や公共事業の計画は、前述のようにリッツ・カールトンが開業し、アマンなどの建設が進んでいるが、これら最高級ホテル建設は、香港の大手通信企業PCCWグループやマレーシアの大手財閥系企業YTLグループなどによる大規模なリゾート計画の一環として行われている。こうした外資系大手による開発や建設、そして公共事業が、コロナ禍下でも継続していることが、地元や中小の事業者なども安心して中長期的視点で営業や投資活動を行えることにつながっている。

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2つ目は、世界的な金融緩和だ。コロナショックにより、日本だけでなく米国、欧州の政府と中央銀行により、史上最大規模の金融緩和策と財政出動策がとられている。
コロナ禍から「雇用と事業と生活」を守るためには、あらゆる手段を尽くすとの意思表示だ。この結果、今まで以上に不動産や株式にカネが流れることになり、実際、コロナ禍下で実体経済が苦戦するにもかかわらず、日米の株式市場は堅調であり、日経平均株価は29年ぶりに最高値を更新し、ニューヨーク・ダウ平均株価も史上最高値を更新している。
海外富裕層の存在
3つ目は、海外富裕層とホテルコンドミニアムの存在だ。金融緩和の恩恵を最も受けるのは、すでに資産・資金を十分に持ち、その資産・資金を元手に投資や開発を行うことができる国内外の事業者や富裕層となる。ニセコの場合、その投資対象となるのが高級コンドミニアム(ホテルコンドミニアム)であり、過去5年間で10倍以上に跳ね上がった不動産も多い。
つまりニセコは、他の国内リゾートとは違い、「海外観光客」ではなく、「海外富裕層の投資家」を強く惹きつけてきたため、コロナ禍下でインバウンド需要がゼロになっても、活気を失っていないのだ。ニセコに不動産をすでに所有する富裕層の多くは、経済的に耐久力があり、長期・安定保有が目的であるため、売り急ぐということがない。

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こうしてニセコでは、パウダースノーのおかげで、国内外の富裕層顧客がスキーヤー・スノーボーダーとして集まり、楽しむことで、良質なホテルコンドミニアムなどが供給され、ブランド化が進み、資産価値の上昇により更なる開発投資が行われるという、投資が投資を呼ぶ好循環が続いている(図表1)。コロナ禍は、ヒトの流れを止めることができても、カネの流れを止めることはできない。新しく「消費より投資が牽引する経済社会」が到来しているのだ。
『6年で評価額が“14倍”に急上昇…外国人の投資が引き起こした超高級リゾート「ニセコ」の土地高騰の現状』へ続く。