「ソーラー大国」目指すサウジ、再エネ重視の理由

サウジアラビア第2の都市ジッダ近郊の太陽光発電施設

世界の産油国の代表格が、太陽光発電に注力している。

サウジアラビアは世界最大級の太陽光発電所をいくつか建設中で、日没後も電力を供給するための大型蓄電池を併設する予定だ。この急速な動きにより、同国はほぼゼロのスタートから太陽光発電業界で有数の急成長市場になろうとしている。

サウジは日照の強さが同国経済を変革し、国庫を潤すことに期待をかける。新たな観光リゾートや工場、AIデータセンターのために同国は電力を必要としている。また再生可能エネルギーは、同国を裕福にした化石燃料からより多くの価値を引き出す可能性がある。サウジは発電用に石油を燃焼させているが、代替エネルギーを使えば輸出向けに原油を確保できる。

米政権は再生可能エネルギーを巡り厳しい対応を取っているが、サウジの砂漠にガラスパネルが広がる光景は、中国製の太陽光パネルと電池の価格急落が、世界の発電状況にどう影響しているかを如実に示す例となっている。

「太陽光はいま設置できる最も安価で最も速く、最もシンプルで最も安全なエネルギー源だ」。サウジの電力改革を後押しするACWAパワーのマルコ・アルチェッリ最高経営責任者(CEO)はこう述べた。

サウジは2030年までに国内電力の半分をクリーンエネルギーで賄う目標を掲げる。サウジの政府系ファンドが筆頭株主のACWAは、目標達成に必要な新たな電力の大半である約100ギガワット(GW)の発電容量を実現する任務を負う。昨年開設した太陽光発電所の発電容量が約4GWにとどまるサウジにとってそれは大きな数字だ。

クリーンエネルギーの拡大は、サウジの事実上の支配者であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子が2016年に発表した経済多角化に向けた国家ビジョンの一環だった。サウジは砂漠の未来都市「ネオム」などの巨大プロジェクトに着手したものの、長い間ほとんど進展が見られなかった。ソフトバンクが2018年に発表した2000億ドル(当時のレートで約22兆7000億円)の太陽光発電プロジェクトは数カ月で棚上げされた。

だが、状況は変わりつつある。サウジアラビアのACWAを含む3社は7月、主に太陽光で一部は風力による15GWの再生可能エネルギー事業に83億ドル(約1兆2200億円)を投資すると発表した。調査会社ライスタッド・エナジーによると、この案件をやや上回る規模の別のプロジェクトもすでに建設中で、天然ガス発電所も建設される予定だ。

サウジのムハンマド皇太子と握手するソフトバンクグループの孫正義会長兼社長

ライスタッドのアナリスト、ニシャント・クマール氏は最近まで、サウジが目標とする再生可能エネルギー比率50%には近づけないと考えていた。だが新規プロジェクトが次々登場する中、現在は低炭素エネルギーが2030年には同国の電源構成の3分の1以上を占める可能性があるとみている。これは昨年の2%から大幅増となる。その通りならば、サウジはその間に増えた太陽光発電容量で世界上位5カ国に入ると、ライスタッドは予想する。

Solar is projected to play a growing role in how Saudi Arabia generates electricity

フランス電力(EDF)の中東電力ソリューション部門を率いるリュック・ケクラン氏は、十分な数の電気技師やプロジェクトマネジャー、その他の作業員を見つけることが最近の悩みの種だと述べた。

「この分野の成長があまりに早く、規模が大きいため、チームの人員確保とペースに追いつくことは容易ではない」とケクラン氏は述べた。EDFは太陽光発電を中心にサウジの複数の電力事業に出資している。

サウジのクリーンエネルギーを巡る野心はペルシャ湾岸にとどまらない。ACWAはアフリカ・アジアの各地で電力事業のポートフォリオを増やしている。再生可能エネルギーを使って水素を生産・輸出する世界最大の施設の計画も進めている。7月には送電技術企業と欧州エネルギー企業で構成するコンソーシアムを通じ、欧州に送電する方法を模索していると明らかにした。

この計画は「次の10年間に向けたものだ」とACWAのアルチェッリ氏は述べた。

サウジの戦略には課題もある。中東の砂漠は太陽光パネルにとって完璧な環境ではない。高温や砂ぼこりによる発電効率の低下が考えられる(砂ぼこりの除去には自動清掃装置が役立っている)。一方で、これらの欠点を補って余りあるほどの頼りになる日照がある。

砂ぼこりを除去する機能を備えた太陽光パネル

送電網の管理が複雑になる面もある。再生可能エネルギーの割合が高まると、需要に合わせてオンオフを切り替えるのが難しい。この問題には巨大蓄電池システムで対応する計画だ。また世界のケーブル生産量は、欧州までの送電線を引くのに十分な水準ではないとアルチェッリ氏は述べた。

こうした電力改革の目的は、化石燃料を遠ざけることではなく、その価値を引き出すことにある。

サウジは国内電力の約3分の1を石油火力で賄っている。シティのアナリスト、オリバー・コナー氏によると、これは現在の相場で年間約200億ドル相当の石油輸出を諦めていることになる。

「恐ろしく非効率だ」とコナー氏は言う。

太陽光発電は低価格の代替手段となる。ACWAなど各社は最近、1キロワット時当たり1.3セントを切る価格で販売した(1キロワット時は電子レンジを1時間使うのに十分な電力)。これは欧州で最も安いスペインの価格の約3分の1だ。

これほどの安価は、灼熱(しゃくねつ)の太陽に加え、政府の資金援助と人件費の安さを反映していると、コナー氏は指摘する。

原油相場の値下がりは、サウジが「原油燃焼」をやめるべき根拠を強めている。

サウジは、費用が数兆ドルになる可能性がある巨大プロジェクトの資金を捻出するのに苦労している。国際通貨基金(IMF)の試算では、計画の収支を合わせるには原油価格が1バレル90ドルを超えることが必要だが、現在は1バレル70ドルを割り込んでいる。

再生可能エネルギーの魅力が増す理由は、主に中国から輸入する太陽光パネルと電池の価格が下がり続けていることにもある。

サウジの電力改革を後押しするACWAパワーのマルコ・アルチェッリCEO

それはコストのかかる開発計画にとって明るい材料となる。その一つが紅海の島々や沿岸部の2万6000平方キロメートル余りの土地に50の高級ホテルを建設する計画だ。この観光事業の広報担当者によると、すでに開業した五つのホテルはACWAが設置した太陽光発電・蓄電池システムを電力源にしている。

中国は長らくサウジ産原油を必要としてきたが、今やエネルギー貿易は双方向となっている。ただ、サウジは投資を呼び込み雇用を創出する取り組みの一環として、一部の国産機器の使用を義務づけ始めている。

サウジの首都リヤドの北に位置するウヤイナに設置された太陽光パネル